父方の祖父の実家は
山形駅から路線乗換で、数十分、北西に移動したところにある。
途中、寒河江(さがえ)を抜けて
終点、左沢(あてらざわ)まで、ざっくり25キロ強の距離を
独特の唸り声を上げながら、ディーゼル車が走り抜けていく
左沢線(あてらざわせん)。
最高時速は85キロほど。
それを思うと、真岡鉄道を走るC11のSLと
ほぼ速度は同じなんだなぁと、改めてその事実に気がついた。
その家は、年代物の茅葺屋根を有する
築100年はゆうに越した家屋。
基本、平屋建てだが
家屋の端にかけられた簡素な階段を昇っていくと
屋根裏部屋が出現し、昔はそこで蚕を飼っていたという。
周囲は田畑に囲まれ、果樹園が点在し
夏場には、緑を渡る風が心地よかった。
夜になれば満天の星を仰ぎながら
遠くから段々近くへと響いてくる
夜汽車の音を聞き、過ぎる客車の窓の灯りを
家屋の窓からぼんやり眺めるのが大好きだった。
真岡鐡道も、そんな素朴さと温かさ
そしてどこか懐かしいぬくもりを思い起こさせるような
ローカル線ならではの魅力を放つ路線だな、と思う。
夕刻の益子駅舎に到着~。
右側の塔にはからくり時計が仕込まれている様で
時間になると、音楽も流れるそうな。
何とも個性的な造りに
思わず、あちこちにカメラを向けたくなってしまった。
単線駅のホームには、上り列車も下り列車もやってくる。
何ともカラフルで、ちょいと小粋な塗装には
どうしても目が行ってしまうわね。
懐かしき左沢線を彷彿とさせるディーゼル車の
1両編成。
1日の運行数は数えられるほどだけど
日常の足、通勤・通学の足として
利用している人たちも居るんだろうな…。
ディーゼル音を響かせて走り去っていく車輌を見送り
遠い日々の出来事をひとつ、ふたつと思い出してみる。
改札口近くにある
益子焼の大きな甕。
昭和テイストな、丸ポスト。
こちらも普通に現役です♪
駅近くにある観光案内所に、ちょろりと立ち寄ってみた。
うわぁ~! エリア地図まで、陶器で出来ているなんて!!!
結構な大きさもあるので
重量もそれなりだろうな~。
へぇ~、ぶどうも有名なのかしら、ね。
巨峰色の大粒の実・・・
食べたいわぁ。
観光案内所には、ちょっとしたスペースがあり
その奥に、何とも家庭的な売店&食堂が併設されていた。
小腹が空いたなと思い
そこでパック入りの「いなり寿司」を買ったら
「どうぞ中でおあがんなさい。
あ、味噌汁、食べる? もう今日は閉店だからね。
捨てちゃうだけだし」と、丁寧に椀に汁を注ぎ
そこを切り盛りしているやや年配の女性が
お盆で運んできてくれた。
ありがたく受け取り、椀に口を付けてみた。
ふわぁっと感じる味噌汁のぬくもりと
その女性のあたたかなもてなしと心を感じ
何だかちょっと嬉しくなった。
一夜明けて、朝の益子駅。
メチャクチャいい天気!!!
列車到着まで、今少し時間があるので
切符を買った後、駅舎付近を少し歩いてみることにした。
時計塔の時計のからくりが
よく見える♪
大きな歯車が正確に動き続け
休まずにひたすら時を刻んでいく。
線路の上にかかる陸橋の床には
益子焼の陶器の破片が、ジグソーパズルのように
はめ込まれていた。
ある意味、こういう再利用もあるのね…。
ヒトと、精々、自転車しか通れない
小さな踏み切り。
その踏み切りから、駅舎を臨む。
何だか、お気に入りになってしまった1枚
さ、乗車する列車がやって来た。
昨夜同様の1両編成。
午前の光景を眺めつつ
途中でSLとすれ違い
何だか随分と、お得な体験をさせていただいたな~。
またいつか、今度はSLに牽引されながら
線路の両脇にある桜の花を
車窓から愛でてみたいと思ってしまった。
* おまけ *
益子町の道で見つけたマンホールの蓋。
そこには、言わずと知れた益子焼と
益子町の花 やまゆり
益子町の木 あかまつ
益子町の鳥 うぐいす が描かれていた。