月に一度病院で行われるスタッフの方々と実施しているカンファレンスでは私たちが何度も話をしていたことだった。

「今(これから)困っていることは今後の生活で、兄が一人でも時間を過ごすことができるようにテレビを見て過ごしたり、近所のコンビニで買い物ができるくらいの生活ができたらいいと…。」

そして、最近・・・。

週末に外泊をチャレンジしているが、その時、一本の映画を観た。

最初はまた“色々思い出すからな”などと言っていたが、“思い出すのが頭にいいんじゃない?”と勧め、家にあったDVD「ショーシャンクの空に」を3人で観た。

途中、疲れるせいか目をつぶってみたりベッドに横になったりもしていたが、とにかく全部観た。時々そのシーンで描かれていることを思い出してコメントしながら。

コンビニへの買い物もやってみた。
家の玄関からマンションのエレベータに乗り込み、約200Mくらいのところにあるコンビニまで“一人で”歩けるか、私たちはそれとなく後ろから付いて様子を見た。

エレベータの階数のボタンも少し迷ったが押せた。道の段差にも少しつまづくこともあったが歩けた。お店の入り口を通り過ぎそうにもなったがなんとかコンビニまでの道のりをたどり着くことができた。

買い物も商品を見定めるのに少し時間はかかったが、一通りの商品は確認できているようだったし精算もカードを使いタッチパネルの位置も分かった。
3回目くらいで、なんとなくこれは行けるんじゃないかと思えてきた。


そして今日・・・


夕方病院でベッド脇に見慣れないペットボトルの飲料水と紙袋に入ったお菓子を見つけた。

「お義兄さん、このお菓子は?」

「ああ、あんまり暇だったんで一階の売店で買ってきた」

「・・・」

お金はリハビリ用に小銭で1,000円分くらいの財布を用意してあった。

何気ない一言だったが、本当は涙がでるほど嬉しかった。飛び上がりたいほど嬉しかった。

一年間待ちに待ったことがやっとできたのだ。ちょうど1年だ。

「これからはいつでも好きなもの買いに行けますね。もう私買ってきませんよ〜」と冗談を言った。


何か変わってきたような気がする。

本当に長い間のリハビリスタッフの方々の根気強いサポートも勿論だが、同室の患者さんとのコミュニーケーションが何となく兄のやる気を奮い立たせているのではないかとも思う。

「一人でできることを多くせんといかんな」と口にするようにもなってきた。

車いすや寝たきりの方々…、色々な症状を持ちながらも話をしていると力をもらう勇気づけられることが確かにある。兄もそうなのかなと思う。


次なる目標を考えよう。少し高い目標にしたい。