「花の墨通信」14巻7号・号外
(回答)花 墨 汎 潤
ー 相談室「パンセ・ソバージュ」
「野党はどう政策を掲げるべきか」
その(3-2)
A11 もっと眼を<相対化して功罪相半ばにみる>べきなのに、なかなかそれができません。これは隔絶(かくぜつ)した日本列島に生きるわれわれ日本人の宿命といえるものでしょう。
Q12 言われてみると今でもその情況は確かにあります。その宿命から脱出できていませんよね。違いますか?
A12 いや、その通りでしょう。週刊誌で文化人類学者の中沢新一がその一端を指摘しています。円安でインバウンド(外国人の訪問者)が激増していますが、その特徴をこう指摘しています。的中していますね。
「以前の旅行者たちは、現地の「宇宙」に飛び込んで、そこの一員になろうとしていたが、現代のインバウンド旅行者は、その宇宙の参加者になろうとは考えていない。たしかに体だけは、こちらの宇宙に運んできているが、現地人と実のある会話をするわけでもなく、恋をするわけでもなく、ただ変わった味覚や風景の美しさを、宇宙の外からやってきて堪能し、お土産を買い込んだら、さっともといた宇宙に戻ってしまうのである。
こういうインバウンド旅行は、平行宇宙間の空間移動を思わせる。この旅行によっては「異文化交流」
などは、おこらないようになっている、」
「このようなインバウンド旅行は、現代の資本主義の本質と、見事に合致している。資本主義は、これまで固定されてきた世界の秩序を、流動化してしまおうとしている。物の価値がお金に換えられて、商品として自由に交換できるようになると、物も人も固定されていた場所から離されて、漂流を始める。」
「しかし、インバウンドによる旅行者たちは、あくまでも消費者として、空間移動を楽しみたいだけなので、自分たちの日常をつくっている生活の秩序を、壊したくはなく、彼らは快適な宿、すてきな食事、
美しい景色などを求めているだけで、昔の旅人のような深い体験やそれによる人格の変容などは、少しも求めていない。」
「インバウンドの旅行者は、たんなる消費者として、異国の空間や味覚を楽しみたいだけだから、スマートフォンと同伴者だけを旅行の友として、消費以外のなんの関りも持たないようにして、まるで平行宇宙を移動していくように、ぜいたくな航海をしていくのである。」
「この結果、旅行の「平行宇宙化」が進むことになっている。いまや各地の伝統文化は、薄い層のようなものにまで、やせ細っているが、その薄い層が各個の平行宇宙の核となって、旅行者を世界中からひきつけて、空間移動に誘っている。徹底的な均質化と、たくさんの異なる平行宇宙の重なりが、共存しているという世界の構造である。」
「そこでは、均質化と多様化が共存することになる。しかし、そこではめったに交流はおこらない。」
(週刊現代2024年5月18・21日号、今日のミトロジー112より抜すい) (明18日へ続く)