2024年7月16日発行

「花の墨通信」14巻7号・号外  

       (回答)花 墨 汎 潤

ー 相談室「パンセ・ソバージュ」

      第90回   

野党はどう政策を掲げるべきか」 

             その(2-2)

 

A7 <今までの宗教文明の問い直し>をしないと、在来の宗教は<自分の頭で考える生成AIに代理>されて消えてなくなるのが必定です。<シンギュラリティ(文明の特異点)>によって人間が機械に使われる時代になって、はたして宗教は成り立つのか? その明確な未来像をわれわれは持たねばなりません。これは人類文明最終段階のもっとも難しいテーマですね。

 探求は後にして結論だけを言いましょう。ひとことで言えば、宗教はなくなりません。いっさいの宗教は科学に呑み込まれ、唯一<仏教のみが生き残る>のは科学と矛盾しないからです。なぜならば仏教の教えは<無神論>であり、<すべての存在は関係によって成りたち、超越した実体はこの世にはない>と考えるからです。科学の本質もまた<無神論>であり、かくして仏教と現代科学は共通しているわけですね。

 けれどもその肝心の仏教はキリスト教ほどの魅力がありません。<幻想の豊かさ>がないので、<芸術の花々が咲き誇る>までには至っていません。キリスト教ほどの幻想的な魅力を仏教はいかにして獲得(かくとく)できるかがカギになるでしょう。キリスト教が<芸術の花々を咲き誇らせる至福(しふく)の樹>としたら、仏教はまるで<すべての花びらも葉も落として大地の無言を語る枯れた沈黙の樹>のようですね。<存在の実相>の見せ方が正反対なわけですよ。まるでものの<豊かさと貧しさ>が相対しています。そこをもっと考えてみなければなりません。     

Q8 わかりました。宗教の問題は難しいので後まわしにして、さしあたっての大問題は<少子高齢化>じゃありませんか。この問題をどうお考えですか? 

A8 この問題は<岩盤保守層の無関心>にあります。台湾有事ほどに深刻な危機とは捉えていないんですね。けれどもここ20数年非正規社員が増えて給料は上がらず<相対的に生活は苦しく>なっています。そのため子育てに自信が持てず、晩婚化も進んでいます。ゆえに政府が思い切った子育て支援策を講じれば、例えば<子ども国債>を発行して5兆円の財源確保をすれば打開できるのです。

 ところが先の民主党政府は<1人月3万円の児童手当で画期的>だと勘違いし、しかもその財源を<官庁の事業仕分けでねん出>しようなどという<姑息(こそく)な策>に出て、けっきょく1兆円の財源すら出ませんでした。この問題だけはもっと大胆に打って出なければなりません。例えば<子ども国債>を発行して<一人目5万円、二人目6万円、三人目は7万円の児童手当を毎月支援>するようにすれば問題は解決します。なんと! 北欧諸国ではすでにとっくに実施ずみの政策なんですね。

 それにはマスコミの応援が欠かせません。国民の間に根強い<古い家族観>があります。子育てはあくまでも両親の責任であり、<国が子どもを養うべき責任はない>というのです。けれどもここまで人口構造が<逆ピラミッド>のかたちに進むと国力は衰え、<経済の底が抜けて>しまいます。マスコミや有識者がもっと訴えて<世論を喚起(かんき)>すべき時に今まさにあるのです。(明17日ヘ続く)