「花の墨通信」14巻7号 

 2024年7月3日発行    by 汎 潤 花 墨

   -「ロータス・ワールドへのいざない」

          その(177-2)    

 

A588 まさに<この大いなる幻想が西欧文明の正体>なのです。驚くほかありません。西欧文明の大河は一方にギリシア文明の<ヘレニズムの流れ>があり、もう一方でこのユダヤ・キリスト教文明の<ヘブライズムの流れ>という二大潮流になっています。起こりも特徴もまるで異なるのに、なんと! 両方に<普遍(ふへん)をみるまなざし>があります。一方は<自然界の真理(イデア)>であり、他方は<神のまなざし>です。いつでもどこでも通用する<普遍性>の探求姿勢が両方に生きているわけですね。

Q588 早い話がこの両方が合わさって、今にみる高度コンピュータ文明>を生み出した、ということでしょうか?

A589 ええ、大事なことはいまこの両文明は高度コンピュータにひさしを貸して母屋をとられる!>寸前だ、というわけです。巷(ちまた)にいう<シンギュラリィティ(文明変化の特異点)>ということですね。《超高度なメカニズム》時代が現出したら、人間が<高度コンピュータの電源を切ろうとして、逆に切るべきではないと機械に説得される>場面もあり得るんですよ。

Q589 そうなったら、<高度コンピュータと共存の道>をさぐるしかありませんね。いかがですか?

A590 ええ、共存しかありません。そんな時代に<どう仏教が生き延びられるか> ・・それをここで考えようというのです。

Q590 わかりました。ぜひ<魅力的な仏教創造のはなし>を聞かせてください。キリスト教の魅力から学ばないとなかなかいいアイデアは浮かばないでしょう。だいたい仏教と比べたらキリスト教の魅力はどこにあるのでしょうか?

A591 では、思いつく点を列挙してみましょう。一つに、仏教は<死を照らす>感じですが、キリスト教は<生を照らす>感じです。その典型が<クリスマス>ですね。処女マリア様から産まれたイエスの誕生を祝いに、<クリスマス・イブ>に東方3博士が馬小屋を訪れます。やがてイエスは羽のついた天使たちに守られすくすくと育ちます。赤ちゃんの無垢(むく)の魅力が見守る母親のまなざしのもとで輝いています。人生のなかでこれほど<いのちの輝きが聖なる誕生のすがたに結晶>する機会は二度とないでしょう。これ自体がすでに奇蹟(きせき)ですよ。

 実はこの素晴らしい幻想も<事実性>の上に成り立っています。オーストラリアの或る神学部教授が<仮説>として明かしているんですね。父ヨセフは一族の族長の地位にある大工(だいく)でした。相手の女性はいったん二年間同居してはじめてふさわしいかどうかをみられるエッセネ派の風習があったのです。その間もちろん性交渉は禁じられていました。が、ヨセフはマリアと愛しあい妊娠(にんしん)させてしまったのです。

 族長の家のルール違反なのですから公表は絶対できません。ひた隠しに隠して育てるうちに、情勢が変わったんですね。当時原始教会には<メシア(救い主)を待望する気運>が起こっていました。さらにたまたまイエスがその子に違いないといううわさが一部に広がったのです。やむなく教会は<マリアの処女懐胎(かいたい)>というかたちで事態を収拾した、というわけですね。           (今月の連載終わり)