2024年5月17日発行

「花の墨通信」14巻5号・号外  

       (回答)花 墨 汎 潤

ー 相談室「パンセ・ソバージュ」

     第88回    

荒れる世界をどう捉えるか」 

            その(3-1)

Q10 興味深いです。ぜひ聞いてみたい。

A10 第一に<米国の敵は米国>という。次期大統領を選ばなければならないのに、米国民の大多数はバイデンもトランプも両方選びたくない>ようです。バイデンは高齢過ぎて激務に耐えられないだろうし、<もしトラ>なら<アメリカ・ファーストの快感原則優位策で暴走しかねない>からです。バイデンもトランプももはや<世界の警察国家たるアメリカ>を背負いきれていません。コミュニズム(共産主義)を批判するけれどもそれに代わる<自由世界の盟主(めいしゅ)>たるビジョンを両者ともに提示しえていないんですね。

 第二のリスクは<瀬戸際にたつ中東>です。抵抗組織ハマスをなんとか抑えても、イスラエルとレバノンに根を張るもっと強大なヒズボラ(イランと同じシーア派)との本格的な戦争に発展する危険性があるのです。

Q10 <もしトラ>になったら、ウクライナはどうなるのですか?

A10 それが第三のリスクですね。共和党とトランプ政権が武器支援を止めたら、結局<ウクライナ分割>になってしまうでしょう。東部にはロシア人が6割は住んでいて、独立自治州のかたちがより強化されます。

Q11 その他のリスクは何ですか

A11 第四はAIのガバナンス不足>です。悪事に利用する方が人間は知恵がまわるんですね。生成AIを使ってロシアはウクライナのゼレンスキ―大統領の悪口攻撃をやっています。ゼレンスキ―の人気低下に一役買っているんですね。かくして第五に<ならずもの国家の枢軸(すうじく)>形成です。ロシア・イラン・北朝鮮の軍事同盟化が<小型核局地戦から世界第三次大戦へ>という大危機をはらんでいます。

 第六は<回復しない中国>です。資本主義(自由経済)と共産主義(計画経済)とは相反しあう矛盾をはらんでいます。習近兵中国のきびしい締め付けが民の<アニマル・スピリット>を奪っていて、なかなか回復基調に入れないわけですね。そこへもってきて第七に<世界的なインフレ(物価値上げ)>が暮らしを直撃しています。さらに第八に環境要因がこのインフレをうながしています。世界各地に起こる<エルニーニョ現象の再来>ですね。これは南米ペルー沖で海水温が上がる現象ですが、熱波・干ばつ・暴風雨・洪水などの異常気象を各地に招いています。

Q12 なるほど、で後の2つのリスクは何ですか?

A12 第九は<重要鉱物の争奪戦>です。ハイテクに欠かせないリチウム(オーストラリア)、コバルト(コンゴ)、ニッケル(インドネシア)、レアアース(希土類、中国)などは世界の採掘量の半分を占めていて、大きな技術リスクになっています。               (3-2へ続く)