「花の墨通信」14巻4号・号外
(回答)花墨 汎潤
ー 相談室「パンセ・ソバージュ」
その(1-1)
Q1 本ブログを見ている書店員と出版社員から手紙が来ました。どちらも小規模事業所ですので、<出版不況に深刻な不安を感じている>ようです。内容は平凡なので省略しましょう。ただ本が好きであえて業界に飛び込んだ姿勢が二人ともよく出ています。ぜひこの際<目が覚める>ような斬新(ざんしん)なアドバイスを寄せてあげてください。いかがでしょう?
A1 うすうすは予感していたのですが、とうとう切羽詰(せっぱつ)まってきましたね。無い知恵をしぼってお困りのふたりに<なるほど!>というアイデアを考えてあげましょう。これこそ《ネコ・トラ思想》です。可愛い猫がいっきょに獰猛(どうもう)な虎に変身する<目の覚める話>なんですね。
Q2 おもしろそうですね。ぜひ聞かせてください。
A2 ではまず、前回少し紹介した<韓国ドラマ>から打開のヒントをもっと詳しく探ってみましょう。
押し寄せる文明の荒波にいかに対処するか、大変な難題にはむかうドラマなんですね。ヒントは遠く韓国の高麗(こま)国の話です。鎌倉時代に唯一日本列島は蒙古軍に襲(おそ)われたけれども、朝鮮王朝の高麗は大陸と地続きですから蹂躙(じゅうりん)されるほかなかったんですね。
高麗第23代コジョン王(高宗)の時代にトバン(都坊=行政府)は武将チェ・ウが軍をも掌握(しょうあく)して閣下(ハッパ)=事実上の実力者として君臨(くんりん)していました。このドラマはなんと! 奴隷(ぬひ)身分から解放され、さらにこの閣下にまでなったキム・ジュンの話です。
ジュンは寺で鍛えられてお経を学び歴史書や兵法書も読むほどに有識者に育ちます。さらに球撃(キョック)大会で優勝して頭角をあらわし、武将に引き立てられ閣下のもとに仕(つか)えるにいたります。そのころ当時世界最強の蒙古軍が迫り、<降伏(こうふく)するか、全滅を覚悟で戦うか>の選択を強(し)いていたのです。ところが武将キム・ジュンは自分の奴隷体験から<降伏すれば蒙古の属国となり、悲惨な奴隷扱いにされる>と語り、なんと! 戦う道を進言します。
その戦略は二つでした。一は<江華(カンファ)島への遷都(せんと)>です。潮の流れが速く騎馬戦しか知らない蒙古軍が攻めあぐねて退却するのを待つというものでした。二は本土は蹂躙されざるを得ないけれども、各城は閉じこもってひたすら食糧をたくわえ、スキをみて<遊撃戦>に打って出るという作戦でした。本土はかくして踏み荒らされますが、江華島に30万人が疎開(そかい)した本拠江都(カンド)はなんとか持ちこたえ、蒙古軍も撤退のやむなきに至ります。<遊撃戦>は相手が手薄になったところを狙(ねら)うもので、なんと! 連戦連勝の敵将サルタク大元帥(げんすい)を僧兵20数人が山道で襲(おそ)いかかり命を奪うのに成功したのがきっかけでした。その後も高麗側はのらりくらりと立ちまわり、都を本土に戻せという数度の要求に応じません。業を煮やした蒙古軍は王宮を江華島から本土に戻せと要求し、人質(ひとじち)として皇太子(セジャ)を送れと主張します。やむなく送ったのは皇族の一人安寧公(コンニョンゴン)でした。 (1-2へ続く)