14巻3号 

       2024年4月1日発行 

-「ロータスワールドへのいざない」

      その(166-1)  

  by 花墨 汎潤   

 

Q547 仏教よりはるかに<妄想の産物>であるキリスト教から近代科学が生まれたのはなぜですか?

A548 では、わかる説明を試みてみましょう。こういうわけですね。出発点は<イエスの十字架>です。イエスが全人類の罪を背負ってただ一人<十字架にかかった>というキリスト教会の<贖罪(しょくざい)説>があります。なんと! 生前のイエスに一度も会わず、それどころか憎きイエスを処刑せんと意気込んでエルサレムに向かったサウロ(ラテン名パウロ)が途中で<復活したイエスに出会った>というのです。これはたぶん十字架にかけられて天国にのぼったという<イエスの幻(まもぼろ)し>を見たのであって、実像を見たのではありません。有能で教養豊かなパウロは心中イエスの教えを否定できなくなり、その葛藤(かっとう)が爆発したのに違いありません。これこそ驚天動地・・天地がひっくりかえる<回心の瞬間>でした。

 世界最高の宗教文明を創始したパウロの実にユニーク(独創的)な目覚めですね。これほどシンプルで目の覚める<逆転の発想>は今まで見たことがありません。<単なる妄想(もうそう)>なのに、その妄想が世界を一瞬にして変えたわけですよね。驚くほかありません。

Q548 なるほど<天の父なる神>が神の子イエスをイケニエにして<原罪>を持つ人類を救ったというわけですね。その<オリジナル・ジン(原罪)>とは何ですか?

A549 人間は他の生き物を害せずに生きられません。この罪が<原罪>ですね。<自然を征服>したのはわれわれ人間の知恵と力なのだという進歩史観>が西洋人の誇(ほこ)りでした。現代は<自然環境破壊の実態>が目立ち、この<進歩史観>が必ずしも正しくはないと誰しも気がつき始めています。西洋の科学は<高度なメカニズム(機械のしかけ)>の発見によって驚くべき発展をした一方、生態系をこわし戦争を巨大化しエゴ(欲望)のとりこになって人心の荒廃(こうはい)を招いているのは確かです。

 ところが2千年も前にパウロは人間の<原罪>を見つめていたんですね。これは驚くべきことです。人間の肝心の弱点を突いて<空から神がわれわれの所業をみているぞ!>と神話を考え、その<神は天下にたった一人しかいないぞ!>と教えたのです。この発想自体はユダヤ人が信じていました。けれども<神と契約しているユダヤ人のみ救われる>と考えたのを、イエスは<誰でも救われる>と壁をとっぱらい、普遍(ふへん)>したのでした。このいつでも誰でもどこでも救われるという<カトリック(普遍的)な考え方>が西欧世界を席捲(せっけん)しました。とうぜんこうして自然法則をつかまえる<科学的なまなざし>が育ったのでした。

 日本にも江戸時代に関孝和とか源内とか稀(まれ)にみる天才がいました。西洋に先んじる研究をしていた兆候(ちょうこう)が見られます。                      (166-2へ続く)