2024年3月21日発行

   「花の墨通信」14巻3号 

             (回答)花 墨 汎 潤

   -相談室「パンセ・ソバージュ」

      第86回    

 核融合文明をどう切り開くか」

                その(7―2)

 

A27 王のそばに仕(つか)える閣下(ハッパ)が事実上の実力者として君臨(くんりん)していました。なんと! 奴隷(ぬひ)身分から解放され、さらにこの閣下になったキム・ジュンの話です。

 ジュンは寺で鍛えられてお経を学び歴史書や兵法書も読むほどに有識者に育ちます。さらに撃球競武大会(キョック)で優勝して頭角をあらわし、武将に引き立てられ閣下のもとにつきます。そのころ当時世界最強の蒙古軍が迫り、<降伏(こうふく)するか、全滅を覚悟で戦うか>の選択を強(し)いられていたのです。ところが武将キム・ジュンは自分の奴隷体験から<降伏すれば蒙古の属国となり、奴隷扱いされる>と語り、なんと! 戦う道を進言します。

 その戦略は二つでした。一は<江華(カンファ)島への遷都(せんと)>です。潮の流れが速く騎馬戦しか知らない蒙古軍が攻めあぐねて退却するのを待つというものでした。二は本土は蹂躙されざるを得ないけれども、各城は閉じこもってひたすら食糧をたくわえ、スキをみて<遊撃戦>に打って出るという作戦でした。本土はかくして踏み荒らされますが、江華島に30万人が疎開(そかい)した本拠江都(カンド)はなんとか持ちこたえ、蒙古軍も撤退のやむなきに至ります。

 この史実は<武神>キム・ジュンの話ですが、<圧倒的にせまる蒙古軍>と<降伏するほかない高麗軍>という当時の情勢は、まさに<押し寄せる電波文明>と<なす手無しの活字文明>という現在の情報社会のありかたにそっくりです。ここで武将キム・ジョンが選んだ降伏すれば蒙古側に奴隷扱いされるに決まっている。戦うしかない>という<遷都と遊撃戦>の道は、今や<なす手無しの活字文明>が生き残る唯一のヒントにならないか? というわけですね。いかがですか?

Q28 なるほど、趣旨(しゅし)はわかりました。これはもう<勝敗がはっきり決着している>問題ですね。勝ち目はないでしょう。出版界は降伏して電波デジタル文明の奴隷となる以外に生きる道はないに決まっています。なのにまだ戦う気なのですか?

A28 ええ、<降伏して電波デジタル文明の奴隷となる>道は<人間性喪失>の暗闇へまっしぐらに見えてなりません。これは<人類史の大いなる転換点>ですよ。その兆候(ちょうこう)は20代の若者にとった<あなたはスマホ依存症だと思いますか>というテレビ・アンケートの結果に端的に出ていますよ。7割の青年が<イエス>と答えているんですね。エリート指導層はこの実態を深刻だと思わず、<黙過(もっか)=見て見ぬふり>を決め込んでいます。いったい放置しておいていいのでしょうか、いかかがですか?

Q29 わかりました。ぜひ次回にとりあげてください。       (今月の連載終わり)

手紙の宛て先  〒360-埼玉県熊谷市曙町4―123  仏説寺内  花墨 汎潤

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