2024年2月15日発行

「花の墨通信」14巻2号・号外 

       (回答)花 墨 汎 潤

ー 相談室「パンセ・ソバージュ」

      第85回   

「シン・パワ・ポリとはなにか」

            その(1-2)

 

A2 今までの日本の<近代化>は圧倒的に<押し寄せる欧化の波>にあわせてひたすら<学びの文明開化>でした。敗戦という大いなる挫折(ざせつ)を経験したけれども、その基本線は変わりませんでした。すなわち<西洋合理主義の洗礼>ですね。戦後日本伝統の美徳を軽率にも捨ててしまった反動のすがたを自民党<派閥裏金の病理>という見出しで、エッセイスト(数学者)の藤原正彦はこう述べています。

「『政治とカネ』は、国民が正直と誠実をないがしろにするようになったことの鏡像にすぎないのだ。・・(中略)・・程度の差こそあれ、ほとんどすべての企業で、いやほとんどのすべての組織で行われ、看過され、隠蔽(いんぺい)されているのではないか。」

 ここ半世紀そのもっとも大きな西洋合理主義の洗礼>は<新自由主義>だとしてこう言います。

「冷戦後の1990年代半ばから入ってきたグローバリズム(新自由主義)は日本人の道徳にさらなる追い打ちをかけた。金融ビッグバン、新会計基準、規制緩和、小さな政府、官叩(たた)き、地方分権、

民営化、大店法、構造改革、リストラ、ペイオフ。郵政改革、緊縮財政、消費増税、株主中心主義、と矢継ぎ早に登場した。すべてアメリカが日本に強要したものであった。大災害とバブル崩壊につけこみ、

新自由主義を拡大するショック・ドクトリンであった。

 新自由主義とは規制をなくし「皆が公平に戦おう」というものである。一見合理的な話だから政治家、官僚、経済界、アメリカ帰りのエコノミスト達、そして独特の見解を持たず彼等に盲従するばかりのメディアが強力にこれを支持した。国民も「これからはグローバリズムの時代、バスに乗り遅れるな」の標語につられて、これに飛びついた。その結果、成果主義が生まれ、弱肉競争社会となり、一億総中流

社会と言われた社会が少数の勝者と大勢の敗者に分断され、歴史的に世界で最も金銭崇拝から遠かった我が国が、金銭至上主義となった。正直や誠実は隅に追いやられ、人々のやさしさ、穏やかさ、思いやり、卑怯を憎む心、他者へ深い共感など、日本を日本たらしめてきた誇るべき情緒、そして行動規範となる形は忘れられた。」(朝日新聞2024年1月1日号)

 要するに氏の言いたいことは次の一行ですね。「家庭と学校で、古くからあった日本人の情緒と形を育むことが、日本の迷走を食い止める唯一の根本策である。小学校で英語やパソコンにうつつを抜かしているヒマはない。」

 この意見は端的に<左(リベラル)から右(保守)へ>大きく揺れるわれわれ日本人の<精神状況>を根本的に突いています。当たっているところも多々ありながら、さりとて自民党岩盤保守層やカルト教団の統一教会がめざす<家父長制的なイメージ>に直結するのであれば、<それはちょっと違うなあ>という感じがします。いかがですか

Q3 同感ですね。<古色蒼然(そうぜん)>では時代錯誤(さくご)です。 (明16日へ続く)