2023年12月15日発行

 「花の墨通信13巻12号・号外  

        (回答)花墨 汎潤

ー 相談室「パンセ・ソバージュ」

                 第83回           

「ジェンダーフリーとはなにか」 

             その(1-2)

 

A4 批判の多くは「生来の女性の安全や安心、人権はどうなる?」というものだ。この判決に異議を唱えた人の中には、「当事者」も含まれる。性別適合手術を経て女性に性別を変更した当事者であり、「性同一性障害特例法を守る会」代表の美山みどりさんは、次の通りコメントしている。

「手術は客観的に性別変更の証明が可能なほぼ唯一の手段。それが社会の判断の根底に置かれるべきだ」

 さらに美山さんは手術要件が廃止されれば、「当事者が警戒の目で見られ、差別が一層深まることも考えられる」という懸念も寄せている。」(夕刊フジ、2023年10月27日号、有本香、連載「以読制毒」よりばっ粋)

 

 評者の言い分は見出しの<露払い役LGBT法案が(先の国会で強行成立したために)今回の判決に悪影響>となった、というものです。はっきり反対の立場を表明し、その不満もあって作家の百田宗治を代表にして自分も副代表となり<保守新党>を立ち上げたばかりの数少ない女流評論家です。わが日本には貴重な才媛(さいえん)なんですね。この人の言い分をどう見ますか

Q5 ジェンダー・フリー(性差の自由)>の問題は難しい。いったい、どちら側の意見が正しいのでしょうか?

A5 この問題も実は<自然界からの超越>という<人間らしい文化のありよう>を提起しています。動物の世界では<オスかメスかという性差>の問題は必ずしもはっきりしません。けっこう便宜的で途中で自然摂理(せつり)で<性転換>する例は珍しくないんですね。同性愛もけっこう見られるのです。ところが人間だけは厳密に役割分担し、女性を家事育児や介護などの家内仕事に専業化させ、それに適した文化を形成してきました。特性を活かした女流らしい文学世界が平安時代に花咲いたのは、従って異例中の異例といえるくらい稀有(けう)の出来事でした。

 最近の分子生物学やゲノム遺伝学の進歩が引き金になって、人類の場合も<性差の多様性>がわかりつつあります。一説に男女差のグランデ―ション(階差)が90段階超あるという説もあらわられています。ことほど左様に<複雑怪奇>になりつつあるんですね。さらにそこ環境ホルモンの問題もからんできます。

Q6 その<環境ホルモン>の問題とはどういうことですか?

A6 これはそんなに古くから出ている問題ではありません。われわれが高度経済成長でいろいろの化学物質を日々摂取(せっしゅ)するようになり、いっきょに噴(ふ)き出した話題です。医学的には<外因性内分泌かく乱物質>といます。

 なぜかというとホルモンはすい臓や副腎(ふくじん)などでつくられ、からだの各部分に重要な情報を伝えます。生活に欠かせない有用な働きをするわけですね。        (明16日へ続く)