12月31日 フィンランドの昔話☆動物の恩返し☆ | ☆かおりキャンドル®☆CANDLE ARTIST☆手作りキャンドルのお花のお部屋☆ フラワーキャンドルアーティスト☆きょうちゃんのブログ☆

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蝋で花の芯から作り、花びら一枚一枚全て手作業でお花のキャンドルに仕上げていく工房での出来事を綴ったブログです(*^。^*)  

むかしむかし、この辺りの土地を持っている地主が、森へ散歩に行きました。
 ところがよそ見をしていて、オオカミをつかまえる落とし穴に落ちてしまったのです。
「あいたたたた。・・・おや? 誰か先客がいるのか?」
 地主が腰をさすりながら暗い穴の奥を見てみると、何と奥にはクマとサルとヘビがいたのです。
「うひゃー! だっ、誰か! 誰か早く助けてくれー!」
 地主はあわてて助けを呼びましたが、森の中だったので助けに来てくれる人はいませんでした。

 それから三日後、ようやく近所のお百姓が落とし穴のそばを通りかかりました。
 穴から人の声がするのに気づいたお百姓は、穴の中に呼びかけました。
「おーい、誰かそこにいるのか?」
 すると穴の中から、疲れ果てた返事が返ってきました。
「わしだ、お前の畑の主人だ。
 うっかりして、落とし穴に落ちてしまったんだ。
 すまないが、早く助けておくれ。
 お礼は、たっぷりするから」
 そこでお百姓は持っていたつなに棒にくくりつけて、それを穴の中に下ろしました。
「だんなさま、その棒につかまってください」
 するとつなに、ずしりと重みがかかりました。
「ぐっ、なんて重いんだ」
 そこでお百姓がこんしんの力を込めて引き上げてみると、何と棒にしがみついていたのはクマだったのです。
 穴から出たクマは、お百姓にぺこりと頭を下げると、そのまま森の奥へと逃げていきました。
 そこでお百姓は、もう一度棒をつけたつなを穴の中に下ろしてみました。
 すると次に上がってきたのは、サルでした。
 サルも穴から出ると、お百姓にぺこりと頭を下げて、そのまま森の奥へと逃げていきました。
 そして三度目に穴から出てきたのは、とても大きなヘビです。
 ヘビも穴から出ると、お百姓にぺこりと頭を下げて、そのまま森の奥へと逃げていきました。
「たしかに、だんなさまの声がしたのに、出てくるのは動物ばかりだ。
 これはきっと、悪魔のいたずらに違いない」
 怖くなったお百姓は、その場から逃げ出そうとしました。
 すると穴の中から、またあわれな声が聞こえてきました。
「お願いだ、行かないでくれ。
 どうかもう一度つなを下ろして、わしを助けてくれ。
 助けてくれたら、お前に畑をやろう。
 だからもう一度だけ、つなを下ろしておくれ」
 お百姓は足を止めると、もう一度だけつなを下ろしてみました。
 すると今度こそは、地主が出てきたのです。
「ありがとう、おかげで助かったよ。
 だけどわしは三日も飲まず食わずで、今にも死にそうだ。
 すまないが、お前が持っているお弁当をわしにおくれ。
 このお礼に、家に帰ったら山のような金貨をやるから」
 そこでお百姓は、持っていたお弁当を全て地主にやりました。
 こうして何とか元気を取り戻した地主は、やがて屋敷に帰っていきました。

 次の朝、お百姓は約束のお礼をもらおうと、地主の屋敷へ行ってみました。
 すると地主と一緒に大男の使用人が出てきて、
「お前とは、何も約束をしていない! 早く帰れ!」
と、言って、大男の使用人に命じてお百姓をムチで叩いて追い返したのです。
 お礼をもらうどころや傷だらけになったお百姓は、がっかりしながら家に帰りました。
 そして重い気持ちで家の戸を開けてみると、何と家の中に、あの時のクマとサルとヘビがいたのです。
 お百姓はびっくりしましたが、クマもサルもヘビもニコニコしていて、おそってくるようすはありません。
 まず最初に、クマが言いました。
「助けてくれたお礼に、ウシを持ってきたよ」
 次に、サルが言いました。
「部屋が暖められるように、庭に、たきぎをたくさん積んでおきましたよ。これだけあれば、この冬は大丈夫です」
 最後に、ヘビが言いました。
「わたしは地面にうまっている宝箱を見つけたので、中に入っていた宝石を持ってきました」
 こうして動物たちはお百姓に恩返しをすると、森に帰っていきました。

 お百姓はサルが集めてくれたたきぎで部屋を暖め、クマが持ってきてくれたウシを料理し、ヘビがくれた宝石で上等のワインを買いました。
「だんなさまにはひどい目にあったが、動物たちのおかげで楽しく冬をこせそうだ」
 お百姓が暖かい部屋で肉とワインを楽しんでいると、どこから話しを聞いたのか、お百姓の家に地主がやってきて、お百姓にこう言ったのです。
「貧乏なお前が、こんなぜいたくを出来るはずがない! お前は、わしのところから金を盗んだにちがいない」
 そして地主が役人に言いつけたので、お百姓は牢屋に入れてしまったのです。

 やがてお百姓は、裁判にかけられる事になりました。
 この裁判の裁判官はとても立派な人で、相手が金持ちでも貧しい人でも公平な裁判をしてくれます。
 そこでお百姓は、今までの事を裁判官に正直に話しました。
 まず、地主をオオカミの穴から助けた事。
 地主は、お百姓にお礼をすると約束したのに、使用人を使ってムチで追い返した事。
 それから、ウシやまきや宝石は、助けてあげたクマとサルとヘビがくれた物で、ワインも宝石で買った事。
 それを聞いた裁判官が、お百姓に言いました。
「なるほど、話しはよくわかった。
 正直者なお前が、うそをつくとは思えない。
 お前がそう言うのなら、きっと本当の事だろう。
 しかし、これは裁判だから、お前を助けるには、お前の言葉が本当だと言ってくれる証人や証拠がいるのだよ」
 するとそこへ、あの時のクマとサルとヘビがやって来たのです。
 動物たちはお百姓の言葉が本当であると告げると、その証拠に、クマはウシを、サルはまきを、ヘビは宝石を持ってきたのです。
 証人と証拠がそろったので、裁判官が地主に言いました。
「ここに、お百姓が無罪だと証明する証人と証拠がそろった。わたしはお百姓を無罪とするが、異論はないな」
 さすがの地主も、これには言い返す言葉がありません。
「・・・はい」

 さて、このめずらしい裁判の話が、この国の王さまの耳に届きました。
 そこで王さまは正直者のお百姓を地主にしてやり、約束を破った悪い地主を貧乏なお百姓にしたのです。

おしまい

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