4月6日 日本の昔話☆杓の底抜け子の子の左衛門☆ | ☆かおりキャンドル®☆CANDLE ARTIST☆手作りキャンドルのお花のお部屋☆ フラワーキャンドルアーティスト☆きょうちゃんのブログ☆

☆かおりキャンドル®☆CANDLE ARTIST☆手作りキャンドルのお花のお部屋☆ フラワーキャンドルアーティスト☆きょうちゃんのブログ☆

蝋で花の芯から作り、花びら一枚一枚全て手作業でお花のキャンドルに仕上げていく工房での出来事を綴ったブログです(*^。^*)  

むかしむかし、ある長者の家に、とてもよく働く下男がいました。

 ある日の事、長者は下男を呼んで言いました。
「お前は毎日毎日、実に良く働いてくれる。そこで褒美(ほうび)をやろうと思うのだが、なにか望みの物があれば言ってみなさい」
 突然の話しに下男はあれこれと考えましたが、特にこれと言って欲しい物はありません。
 ただ、一つをのぞいては。
「どうした? 遠慮はいらんぞ。何でも言ってみるがよい」
「・・・あの、何でもとおっしゃいましたが、本当に、何でもよろしいのですか?」
「まあ、何でもと言ったって、物事には限度というものがあるがな。とにかく、言うだけ言ってみなさい」
「・・・はい」
 下男は決心すると、顔をまっ赤にして言いました。
「それなら、娘さんをお嫁にいただきとうございます」
「なんと! 娘をか!?」
 これには、長者も困ってしまいました。
 長者の子どもは一人娘だけなので、下男に娘を嫁にやるという事は、この下男を自分の跡取り息子にするという事です。
 下男の働きぶりを考えれば、下男が家を継ぐと家はますます栄えるでしょう。
(うむ。家柄だけで婿を選んでも、家が栄えるとは限らぬし)
 そう考えると、この下男に娘をやった方が良いのではないかと思いました。
(働きぶりは申し分ないが、知恵の方はどうだろうか?)
 そこで長者は下男の知恵を試そうと、こんな事を言いました。
「それでは、杓(しゃく)の底抜け子の子の左右衛門の家を尋ねて、この手紙を渡しておくれ。うまくやれたら、娘を嫁にやろう」
「本当ですか! ありがとうございます」
 喜んだ下男は手紙を持って町に出ましたが、どう考えても『杓の底抜け子の子の左右衛門』なんて変な名前の人がいるはずありません。
(長者さんは娘さんを嫁にやりたくないから、わざとでたらめな事を言ったんだろうか?
 いや、それならこんな意地悪をせずに、別の望みにしろとおっしゃるだろう。
 これはきっと、何か意味があるにちがいない。
『杓の底抜け子の子の左右衛門』か)
 下男は考えながら歩いていて、向こうから来る座頭(ざとう)に気づかずにぶつかってしまいました。
 座頭と言うのは、目の見えないあんま師の事です。
「おかしなお人だ。目が見えるくせに、座頭にぶつかるなんて」
 この座頭は物知りなので、下男は『杓の底抜け子の子の左右衛門』の事を尋ねてみました。
「ふむ、あの長者さんらしい謎かけだな。
 この謎かけを解けば、あんたは長者さんの跡取り息子。
 そうなれば、やがてはわたしのお得意さんになるだろう。
 それなら、教えないわけにはいきませんな」
 座頭はそう言うと、『杓の底抜け子の子の左右衛門』の説明をしました。
「いいかい。
 杓(ひしゃく)の底が抜けたら、柄(え)と側(がわ)だけになるだろう。
 子の子は、孫の事だ。
 つまり、『えとがわ・まご・左衛門』
 それを続けて読むと、江戸川孫左衛門だ」
「それだ!」
 下男は飛び上がって喜ぶと、江戸川孫左衛門の家へ飛んでいきました。
 この謎解きは見事に正解で、下男は長者の娘婿になって末永く幸せに暮らしたのです。
 そして助けてくれた座頭のお得意さんとなり、とても多くのお礼をしたそうです。

おしまい
ペタしてね