葬儀の日のこと……。

 

ずいぶん時間が経ってしまったからじゃなく

もともと私の海馬クンはナマケモノであったからだろうか?

断片的にしか覚えていない(・・;)

 

でも、自分の感情的なことの記憶は多く残っている

……こんなものなのかな?

 

 

葬儀・告別式

 

 

 

 

出棺・火葬

 

出棺の時間

 

10人足らずの小さな家族葬だったので

手を貸す場面は多かったように思う

 

棺を霊柩車に乗せる

 

もしかしたら

喪主である私は動くべきではなかったのかもしれない(笑)

でも、躊躇なく手を添えた

 

その後

姉の元旦那に「がんばれ、がんばれ」と背中をさすられ

一人で霊柩車の助手席に乗るように促された

 

 

そんなことは覚えている反面……

 

私は、何を抱えて霊柩車に乗り込んだのだろうか?

全く記憶に残っていない(笑)


 

運転手さんと母と私

沈黙が漂う車内

 

葬祭センターから自宅経由で火葬場までは、およそ3㎞

ゆっくりと静かに最後のドライブ

 

ほんの数秒、自宅脇で停車してくださった

 

「ばあちゃん、お家だよ……」

 

母は耳が聞こえないので、常に大きな声で会話をしていた

それでも伝わらないことが多かったが

このときは、小さな小さな声で囁いていた

 

その一言を切っ掛けに

嗚咽に変わるほどに込み上げるものが抑えきれなくなった

 

ジワジワと「最期」という気持ちに飲み込まれていった

 

 

どうやって霊柩車から降りたのか?

どれくらい歩いたのか?

 

私は、泣きじゃくっていたのかもしれない(笑)

周囲の状況が全く分からなかった

 

もう誰も私に声を掛けないし

私自身が棺に近寄ることさえできなかった

 

 

イヤだ、嫌だ、嫌だ!!!

 

 

 

 

 

 

母に似合うと思って選んだ薄紫の棺

穏やかな母の顔

 

「おかあさん、ありがとね」

そう言って、姉の元旦那は小さな扉を閉めた

 

 

 

 

お見送りです……

 

そんな声が聞こえた気がしたが

しっかり見送ることはできなかった

 

 

最後に振り返ると

もう頑丈そうな扉は閉められていた

 

最期に病院に面会に行った帰り

ずっとピンクのミトンをパタパタと振り続けていた

母の姿は……もう見ることができない

 

 

動き出せない私に

息子がシワくちゃになったハンカチを差し出してくれた