『青春をクビになって』額賀 澪(著)

 

 

 

 

 

【内容情報】(Amazonより
瀬川朝彦、35歳。無給のポスト・ドクターである。学生時代に魅了された古事記の研究に青春を賭してきたが、教授職など夢のまた夢。契約期間の限られた講師として大学間を渡り歩く不安定な毎日だ。古事記への愛は変わらないが、今や講師の座すら危うく、研究を続けるべきかの煩悶が続いている。
そんな折、ゼミ時代の先輩が大学の貴重な資料を持ったまま行方不明になってしまうという事件が。45歳の高齢ポスドク”となっていた先輩は、講師の職も失い、なかばホームレス状態だったという。先輩は資料を「盗んだ」のか? 自らの意志で「失踪」したのか? そして、朝彦の下した将来への決断は?

 

 

 

虹感想

 
ポスドク…正式名称はポストドクター。日本語で博士研究員。
主人公の朝彦35歳は、学部生四年、大学院を修士課程の二年、博士課程の三年と古事記の研究を続ける。しかし、博士研究員の現実は厳しかった。
 
 
以下、ネタバレありです。
 
 
 
 
(本文より)
大学院に進み博士の学位を取得した後、大学や公的研究機関で研究に従事する者、大学教授になるような人材の卵はほんの一握り。
多くが非正規雇用。非常勤講師の雇用は一年更新。5年で雇い止めの五年ルール。
その職さえ失うと、大学には研究生としての籍はあるものの大学から給料をもらって研究を行う研究員ではなく、その見習い別名無給ポスドクとなる。月額研究費として一万円ほど払って図書館や資料室を使う権利を得られる。
 
 
講師でもなく研究員でもなくお金を払って研究生をしている小柳45歳を「間章」で描きながら、ポスドクから足を洗った栗山、教授職を定年後非常勤講師として働く大石先生、恩師の貫地谷先生との繫がりの中で、主人公の朝彦は将来への道を探っていきます。
 
 
短い頁数ですが、ポスドクの厳しい現実が書かれていて考えさせられます。
主人公は、息子のひと世代上の年齢ですが、息子の同級生にも同じ状況の方がいて、母親目線にもなりました。
 
ここまでの厳しい世界だったとは…
途中は、こんな現実何かがおかしい!と悶々として読み進めましたが、要所要所に額賀さんらしい温かみもあって読後感は悪くありませんでした。

知れて良かった、読んで良かった一冊です。

 
 
 
 

最後までお読みいただき有難うございました(*^^)v