世間からのバッシングを受け、ジェジュンは正直ものすごく凹んでいた。

胸を張って生きる、なんてカッコいい事言ったけど…やっぱりコワイ。

知らない相手から、こんなに強い批判やバッシングを受けたり、全く関係ない事で攻撃されたり、過去を全て調べようとされたり…。

芸能人とかが病んでしまうのも分かる…。

見なければいいと言うけど、やっぱり見ちゃうし、誰かに悪く言われる事に傷つかない人なんていないもん…(>_<)

 

だが、同時に怒りも覚えていた。

マスコミという公の機関でありながら、オメガをバカにしたような侮蔑的な言動。

これでは、公にオメガ差別を助長しているようなもんじゃないか。

だからいつまでたっても、オメガへの攻撃が止まらないんだ!

えぇい許せん!オメガ舐めんな!

 

 

会社では、結婚会見をした事で何かと忙しく、電話が鳴りまくっていた。

チャンミンが心配そうに言った。

 

「ジェジュンの傍についていなくていいんですか?きっと落ち込んでいると思いますが…」

「まぁジェジュンも少しは慣れなくちゃな。この先、こんな事は日常茶飯事だから」

「そうですが…やっぱり他のスーパーαのように、お披露目は控えた方が良かったのでは…」

「チャンミン、お前はジェジュンの強さを分かってない。俺はジェジュンを信じてる」

 

ユノ兄は「ジェジュンを信じてる」と言ったが、チャンミンは不安だった。

生まれた時から世間に晒されてきたユノ兄と違い、ジェジュンは普通の大学生だ。

 

アルファの番となり、人生を一発逆転させたオメガに世間の風当たりは強い。

自分の人生には関係ないのに、妬み、嫉みを燃やし、オメガを叩き、何とか引きずりおろしたい。

いつだって自分の下でいて欲しいオメガが、間違っても自分より上に行くのは許せないのだ。

嫉妬にかられる気持ちは理解できる。

だが人を引きずり下ろしたいと考える時点でもうダメなのだ、そういう奴は決して幸せにはなれない。

 

心配になり、こっそりジェジュンの様子を見にユノの家に入った。

すると、中からいい匂いがしてきた。

キッチンで、ジェジュンがビール片手に大量の料理を作っていた。

 

「うぃ~くそっ!オメガを舐めやがってぇぇ!焼いてやるぅ肉を焼いてやるぞォォ」

「…何してんですか?」

「あ!チャンミンさん、ちょうどいい所に来た!お腹すいてる?すいてるよね?チャンミンさんだもんね」

「なんですか、私は腹ペコあおむしじゃありませんよ」

「いっぱい作ったから食べて!」

 

そこにはテーブルいっぱいの料理がぎっしり並べられていた。

 

「いっぱい作ったって…なんですかこの量は」

「ストレス解消に作ったの!いいから食べてっ!」

「はぁ…頂きますけど」

 

チャンミンが食べ始めると、ジェジュンはビールをザブザブ飲みながら、ブツクサ言っていた。

 

「くっそー。ちょっとみんなオメガ舐めすぎだよ!そう思わない?悔しいよ!」

「もぐもぐ。まぁ今に始まった事じゃありませんがね…もぐもぐ」

「そんな事言ってるから、現状が変わんねぇの!あぁ腹立つ!悔しい!あの記者の顔ぜってぇ忘れねぇ!」

「だったら現状を変えたらどうです?ジェジュン自身が」

「…僕自身が?」

「そうです、行動しないでここでビール飲んでるよりずっといいでしょう?」

「…そっか……。そうだよ!うん!そうしよう!僕は、オメガの為に世の中を変えてやるぞぅっ!!」

 

肉を焼くトングを握り締めながら、目をキラキラさせるジェジュン。

あぁ、何だろう。この純粋すぎる生き物は。可愛くってしょーがないじゃないですかぁ。

 

さっそく次の日、ジェジュンはジュンスを誘い、小さな団体「すずらんの会」を作った。

活動内容は、今困っているオメガの救済のための窓口、現状のオメガ保護法の改定、オメガを理解してもらう活動、そして念願は「ヒート抑制剤の保険適用化」だった。

 

「とりあえず、今の目標はこんな感じかな。出来る事からやっていこう」

「ジュンス兄、協力してくれてありがとう。すっごく心強いよ!僕一人じゃ何もできないもん」

「僕もオメガの為に何かしたいって思ってたから。ジェジュンがきっかけをくれて嬉しいよ」

「ほんと?きっと僕達二人いれば何でもできるよね?もっとオメガが生きやすい世の中をつくるために頑張ろうね」

「うん。きっと僕達なら出来るよ!」

 

ジェジュンとジュンスは手を握り合って、心を一つにした。

ジュンスは、ユノ、ユチョン、チャンミンがいつも「俺たち3人がいれば何でもできる」と励まし合っていたのを見ていたので、自分にもそんな仲間が出来て、一緒に世の中を変えようという夢が出来て本当に嬉しかった。

「ユチョンの番」として生きるのではなく、キムジュンスとして自分の夢を持って生きる。

初めてユチョンと肩を並べることが出来るような、まるで新しい自分に生まれ変わったようだった。

 

僕にも…夢が出来た、夢が出来たんだ…!

 

 

ユノは、ジェジュンが初めてやりたい事を見つけたようなので、自分は手を出さず、自由にさせておいた。

ただ相談には乗ってやり、誰に会うのかも細かくチェックした(ヤキモチ)

 

「なんですずらんなんだ?」

「え~だって…ユノが言ったんじゃん。僕の匂いがすずらんの香りだって…♡」

 

ヒート時のジェジュンが更に興奮すると、甘い香りから、すずらんのような涼し気な香りに変わる。

ユノはその香りが大好きだったのだ。

 

「ふふ…すずらんの理由は誰にも言うなよ。俺たちだけの秘密なんだからな~♡」

「わかってるよぉ~♡すずらんの花言葉は純潔なの。オメガにはヒートのイメージがあるからそれを払拭したいんだ。あ、そんなとこ触っちゃだ~め♡」イチャイチャ

「頑張るのはいいが、あんまり無理するなよ。お前は体力が無いんだから」

「うふふ^^こっちの体力はあるつもりだけど…♡」

「ウソつけ。いつも最後は寝ちゃって俺が風呂に入れてる」

「だってぇ~ユノがしゅごすぎるからぁ~♡」キャッキャッ♡

 

今日も熱く抱き合ってラブラブハッピーな二人は、バカップル全開でいつまでもイチャついていた。

えぇ、新婚ですもんね^^許しましょう。

 

 

「ジェジュンは行動が早いですね。すずらんの会、ですか…。正直名前はかなりダサいですが、いいかもしれませんね」

「あぁ。これ以上ないダサい命名だが、このダサさがいいかもしれない。ジェジュンの活動を支援するのは当然だが、まだチョン家の力は伏せていた方がいい。まずは自分達でやらせたい」

「今、世の中は大きく変わりつつあります。世界的にオメガの力が見直されている。先日のジェジュンの発言も、欧州や北米では大きな反響があったらしいです。この国はまだまだ遅れています」

「ジュンスも生き生きしてるな。ユチョンも喜んでいた」

「えぇ、子供が出来ないと落ち込むより、ジュンスが自分らしく生きる方が二人の為には良いでしょう」

 

ユノとチャンミンは、ジェジュン達が起こした小さな行動を、優しく見守っていた。

「オメガの為に行動したい」というジェジュン達の力を信じていた。

 

「オメガ保護法を決めた時も、結局そこにオメガはいなかったんです。本当に必要な支援を、本当に必要な人のために。それが正しい形だと思います」

「あぁ、誰かのために頑張っているジェジュンは、キラキラしてて本当に綺麗だ♡」

「うっぜ」

 

 

 

大統領選挙が白熱する中、ヒチョルは心ここにあらずだった。

スーパーΩの存在、これは世の中を大きく変える研究だ…いや、自分の人生を変えるほどのもの。

ユンホ氏がスーパーΩであるキムジェジュンと婚姻した事で、この間に産まれる子供がスーパーαになる確率が極めて高くなった。

裏金問題を隠し、私腹を肥やす事しか考えない大統領や大臣の為に働くより、バッシングを受けているキムジェジュンを守る方が、よっぽどこの国の為になる。

 

しかし「スーパーΩ」の事は、隠し通さなければならない。

何故ならこれが公になれば、自分の私腹の為に「スーパーΩ」を作ろうとする輩が必ず出て来る。

シンドン博士が言った「命を創造するなんて神の領域だ。倫理に反する」その言葉が身に沁みていた。

チャンミンさんは、決してこの事を口外しないだろう…その部分は誰よりも信頼できる人だ。

 

出来るなら、今すぐにでもチャンミンさんの元に行き、一緒にこの国の為に働きたい。

だが、大統領は私を手放さないだろう。

何故なら私は知りすぎている…この国の裏側も闇も…。

もしかしたら、もうすでに大統領は動いているのかも。私を消すために……。

 

 

チャンミンは、以前から約束していた、ヒチョルとの打ち合わせの為、青瓦台を訪れていた。

しかしヒチョルはいなかった。

 

「お約束をしていたのですが」

「申し訳ありません。室長は急用が出来たと、今は外出しております」

 

チャンミンは違和感を覚えた。

ヒチョルに急用が出来たとして、その連絡をしない人ではないからだ。

 

「それは…何時ごろの話ですか?」

「一時間前ぐらいに…連絡があって…」

「室長本人からでしたか?」

「いえ、違う秘書からでした」

 

チャンミンはすぐにヒチョルに電話をしたが、電源が入っていなかった。

ますますおかしい…勤務中は絶対に電源を切らない人だ。

まさか……!嫌な予感が頭を駆け巡る。

つい2日前、彼を抱いた時、彼の目が不安に揺れているような気がした。

 

「どうしました?具合が悪いのですか?」

「…何でもありません」

 

そう言いながら、彼は私にしがみついて来た。

まるで何かの不安から逃れるように。

もし、ヒチョルに何かあったら…?そう考えただけでゾッとして冷や汗が流れる。

あの愛しい人を、私は守れるのか?いや、絶対に守る!どこだ!どこにいるんだっ!

チャンミンはカバンを車に放り込むと、車をぶっ飛ばしてユノの元に走った。

 

 

 

だってぇ~ゆのがしゅごすぎるからぁ♡♡

 

 

 

※※※

ラブラブ新婚バカップルの二人♡楽しそうです。

いよいよジェジュンが自ら立ち上がり、ジュンスにも夢が出来ました。

そんな中、ヒチョルがピンチに。

シム、走れ!

 

毎日ムシ暑くて何もしたくないですよね~。

ゆっくりみんなの活動を追いたいのに(>_<)

みなさま、体には気を付けて下さいね!