ジェジュンが、ソウル大に合格した。

 

「えっ!ほんとにソウル大合格したの?よく頑張ってたもんね!すごいよ!ヨカッタね~♡」

「ありがとうジュンス兄!嬉しいよぉ~♡」

 

ジュンスは飛び上がって喜んでくれて、二人は抱き合ってぴょんぴょん跳ねた。

ユノ、ユチョン、チャンミンも喜んでくれたが、この3人はソウル大に合格するという事がそれほど難関ではない人達なので、ジュンスほどの驚きはなかった。

 

合格祝いにみんながプレゼントをくれた。

ジュンスは可愛いバッグ、ユチョンは高性能タブレット、チャンミンは万年筆。

ユノは車を買う!と言い出したが免許がないので辞退し、腕時計に落ち着いた。

ジェジュンは分かっていないが、この腕時計は車ほどの金額がする代物だった。

 

「皆さん、ありがとうございます!これからも勉強頑張ります!」

 

裏金問題で沸き上がった世論も、時間が過ぎればフェードアウトしていく。

今はチョン家がリークした、芸能人の性加害で話題は持ち切り。

熱しやすく冷めやすいのは、韓国人の気質なのだろうか。

 

 

 

「芸人の性加害スキャンダルで、国民の目を逸らせたと。青瓦台もチョン家に借りが出来、ユンホ氏に「子供を作れ」と人を送るのを一時中断しているようです」

 

スミンは秘書からの報告を受けながら、珍しく笑顔を見せた。

 

「今がチャンスね。ユノの縁談を進めるわよ!何が何でも青瓦台より先に、こちらの進める相手と番わせて、子供を作らせるのよ!」

 

そろそろ本気でユノの縁談を勧めなければ、チョン家での私の影響力がなくなってしまう!

ユノの気持ちなんかどうでもいい、ユノが絶対に断れない相手と見合いさせるわ!

 

 

 

チャンミンは、青瓦台に向かっていた。

秘書室に向かい、名前を告げると、室長の部屋に通された。

ソファに案内され座って待っていると、ヒチョルが忙しそうにやってきた。

 

「お待たせしました。この度はチョン家には大変お世話になり…」

「体調はどうですか?今日も顔色が悪いようですが」

「…平気です。雑務が多いだけです」

 

チャンミンがそっとヒチョルの頬に手を伸ばすと、ヒチョルはその手をパン、とはたいた。

 

「今日はシム秘書に伺いたいことが」

「あれから一度も連絡を下さらないので、心配していました。もしかして私が気に障る事をしでかしたのではと、夜も眠れず」

「シム秘書。そのような話ここでは…」

「では答えてください。私の事が気に入りませんか?あの夜の事を後悔していますか?」

 

途端にヒチョルの顔が赤く染まった。

私の大好きな大きな目を伏せて、唇を噛んで赤い顔でもじもじしている。

そう、顔が作れないで困っているかのようで…。

 

「き、気に入らない…などとは、言ってません」

「では、気に入ったという事ですね?次に私がお誘いしても、断らないで下さいますか?」

「あ…あなたこそ…何も言ってこなかった。普通は…そちらの方から…」モジモジ

 

…あぁ。…そうだったのか…。

私からの連絡を待っていたのか…。

なんていじらしい♡なんて健気な♡なんて可愛い♡

やっぱり、私は彼の事が好きなようだ。

 

「では今夜は開いていますか?何時でも構いません。今夜、貴方に会いたいです」

「…あとで、時間を連絡します」

「はい♡…それで?私に聞きたい事とは?」

 

ケロっと仕事の顔に戻ったチャンミンに、ヒチョルはキッと睨んだが、ヒチョルも仕事の顔に戻った。

 

「ユンホ氏の事です。公式発表によると、お父上はチョン家の一人息子、お母上は全羅道の富豪、ムン家の長女だそうですね。ユンホ氏は…」

 

ヒチョルは、一瞬口を閉じたが、意を決したように言った。

 

「ユンホ氏は…本当にお二人の子供ですか?」

 

チャンミンは顔色を変えないまま、ふーっと深い息をついた。

 

「シム秘書、ここには盗聴器はついていません。毎朝私が確認しています。今は秘書たちも下がらせています。誰にも聞かれる事はありませんから、安心して下さい」

 

チャンミンはじろりとヒチョルを見て、そして言った。

 

「もちろん、ユノ兄はお二人の子供です。何を仰っているんですか?…と言いたい所ですが、実はユノ兄の出生については、分からないのです。私も疑問に思う人間の一人です」

 

「チャンミンさんも知らないのですか?ユンホ氏は、自身の生みの親をご存じなのですか?」

 

「…分かりません。ユノ兄の両親の間は昔から冷え切っていましたが、財閥ではよくある話です。デリケートな話題だけに、誰も口には出来ない話で。ですが、なぜそれを知りたいのですか?」

 

「他意はありません。私はこの国が豊かになるために、スーパーαが必要だと考えている人間です。青瓦台はユンホ氏に何でもいいから子供を作れ!と迫っていますが、私はそれを得策だとは考えていません。ユンホ氏の子供でなくても、スーパーαへの道はあるのでは?と考えています」

 

「つまり、スーパーαを誕生させるために、ユノ兄の本当の両親を知りたいと…?」

 

「えぇ。ユンホ氏の父親は本当にスーパーαではないのか、あるいは、ユンホ氏の生みの親がスーパーαなのか、もしくはベータなのかオメガなのか」

 

…ちょっと、待て。

チャンミンは、目をせわしなく動かしながら考え込んだ。

確かにそんな事は考えた事が無かった。

私達は、スーパーαの存在にばかり、気を取られていなかったか…?

もしかして…大変な思い違いをしていたのでは…?

 

「シム秘書?」

 

様子がおかしいチャンミンに、ヒチョルが心配そうに声を掛けた。

 

「キム室長、少し私にお時間をいただけませんか?調べてみたい事があるので…」

 

立ち上がったチャンミン、だがヒチョルが腕を取った。

 

「シム秘書!私にも協力させてください。これは青瓦台としてのお願いではなく、私個人的なお願いです!この事を青瓦台に報告する気はありません!」

 

「…どうして、そこまで…?」

 

「言ったでしょう?私はこの国を少しでも良くしたいんです。貧困にあえぐ人達を助けたい、未だ残るスラム街を無くしたい、本当の先進国になるために、力を尽くしたいんです。既得権益でうまい汁を啜る奴らに、これ以上この国を食い潰されたくないんです!」

 

確かに韓国は数年前、先進国認定をされたが、実情はまだまだ不完全な国だ。

ユノやチャンミンも、チョン家を発展させたいと願っているのは、ヒチョルと同じ志を持っているから。

もう一部の政治家や財閥だけが、富を貪る国であってはならない。         

 

「わかりました」

 

チャンミンは、ヒチョルの手をぎゅっと握った。

 

 

 

大学にも慣れてきた頃、大学構内はサークル活動を勧誘する人でごった返していた。

サークルかぁ…何か新しい事に挑戦するのもいいかもなぁ…。

自分が何をしたいのか、成し遂げたいのか、まだそれも自分で分かってない

ユノのように、誰かのために働くのがいいな…。

そんな事を考えながら歩いていると、学校を出たところで誰かに声を掛けられた。

 

「ジェジュン!」

「え…?あ、もしかして…ジョンフン?」

 

声を掛けてきたのは、祖母と共に暮らしていた街の、酒屋の息子だった。

 

「どうしたの?こんな所で…」

「あれから会えなくて連絡先も分からなかった。でもジェジュンがソウル大に受かったって噂を聞いて。ここで待っていたら会えるかなって」

「ホント、久しぶりだね。6年ぶりかな。会えて嬉しいよ」

「あぁ。みんな心配してたけど、チョン家に引き取られたって聞いて、良かったのかもって…」

「ごめんね。急な事で、僕もパニックで…」

「それはいいんだ。それより今日は、爺ちゃんがジェジュンに会いたいって言ってて…」

 

ジョンフンの祖父は酒屋を営んでおり、祖母が営む食堂チルソクに酒を卸していた。

祖母とジョンフンの祖父はとても仲が良く、幼馴染だったと聞いている。

ジェジュンも、「じーちゃん」と呼んで、孫のように可愛がってもらっていた。

 

「じーちゃんが、どうしてだろう」

「実は爺ちゃん、末期のガンなんだ。ここの所体調も良くなくて。余命も出てる」

「そんな…」

「でも爺ちゃんが、どうしてもジェジュンに伝えたい事があるって…」

「何だろう…」

「ジェジュンの両親の話だって言ってた…。死ぬ前にどうしても話しておきたいって…」

「えっ!ホントに?」

 

ジェジュンの祖母は、結局ジェジュンの両親の詳しい話をしないまま亡くなってしまった。

じーちゃんから聞けなければ、もう二度と聞けないかもしれない。

 

「行くよ、どこの病院?」

 

ジェジュンとジョンフンは、急いでバスに乗り込んだ。

 

 

 

 

行くよ、どこの病院?

 

 

 

※※※

ジェジュンソウル大合格おめでとう!頑張ったね^^

ユノの両親にも秘密がありそうです。

次回は、ジェジュンの両親のお話。

今よりもっとオメガが冷遇されていた時代のお話です。

 

GWいかがお過ごしですか?

ワタシは来る6月10日の「ハッピーセット」の原稿に追われています。

新作を間に合わせるため必死あせるもう5月、ヤバイ!

誰か優しい人~ワタシに応援の言葉を~えーん