やってきたジュンスは、ソファに眠るジェジュンを見て、部屋に充満する香りに気づき驚いた。

 

「え?もしかして…これってジェジュンのフェロモン?」

「そうだ。ヤバイんだ」

「まさか…ユノ…!」

「安心しろ。項も噛んでないし、そもそも最後までヤってない。こいつにはまだ早いだろ。危険だ」

 

ホッとしたジュンスは、ユノの様子がいつもと違う事に気づいた。

どうやら、ユノは心からジェジュンを心配しているらしい。

 

ジュンスはオメガであるため、オメガのフェロモンにあてられる事はないが、このフェロモンは強烈だと分かった。

もし、番を持たないアルファがこの香りを嗅いだら…きっと理性を失うだろう。

たとえ理性的なチャンミンであっても、例外はないかもしれない。

 

「持って来てくれたか」

「あ、うん。これ。簡易的なモノだけど」

「構わん。もう最高級のチョーカーを注文した」

 

ユノはジュンスから受け取った黒チョーカーをジェジュンの首にはめた。

ジェジュンの項には、ユノが付けた赤い跡がついていた。

噛み跡ではない赤い跡に、ユノのジェジュンへの執着を感じる。

だが、ジュンスはその後のユノの言葉に衝撃を受けた。

 

 

「ジュンス、俺は、こいつと番になりたい。多分俺たちは、運命の番という奴だ」

 

 

「え?ホント…?ジェジュンもそう言ってた?」

「多分。まだガキで他を知らないから、比較できないだろうが…」

 

「ううん。運命の番は他との比較じゃない、誰にだって分かる。ユノ兄だってそうでしょう?間違いがないと自分が一番理解できるはず」

「あぁ。噂には聞いていたが、これ程とは思わなかった。まるで生まれ変わった気分だ…」

 

髪を掻き上げたユノは、ユノが言うように生まれ変わったような色気を纏っていた。

そして、言葉に出来ないような複雑な表情をしていた。

 

運命の番に出会えた喜び、それが自分に与えられたという大きな幸運。

だが同時に襲ってくる「番を守れるか」という不安。

スーパーαから見た、オメガのジェジュンは、儚く脆いガラス細工のような存在だろう。

このような強烈なフェロモンを発するジェジュンを、どうやって守り抜くか。

 

加えてチョン家当主であるユノが、番を迎えるのは簡単な話ではない。

国が番を用意したがったのは、この先のチョン家との関係を密にしたかったから。

ユノに番が出来てしまえば、ユノは番しか抱かなくなるだろう。

そうなれば、自分たちがチョン家に入る隙がなくなる。

急に出てきた「番」を阻止しようと動くかもしれない、そしてジェジュンを守る筈の警備(アルファ)が、強烈なジェジュンのフェロモンで、いつ襲いかかるかもわからない。

 

この切迫した状況は、ジュンスにも理解できた。

 

「ジュンス…頼む。俺を助けてくれ…」

 

今まで一度だって人に頼った事がないユノが、初めて頼むという言葉を口にした。

それだけでも驚きだったが、不安に怯え、かすかに震えているユノの姿にも驚きを隠せなかった。

ジュンスは、震えているユノの手をそっと握った。

 

「大丈夫。僕たちでジェジュンを守ろう。ユチョンもきっと協力してくれる。仕事で日本の大阪にいるけどすぐ帰るように言うよ」

「あぁ…頼む」

 

「一週間(ヒートの期間)は、ここに住ませた方がいいかな。それとも今までの所に?」

「ここがいい。外には出したくない」

「分かった。荷物運んでおくよ。抑制剤も用意するし。ジェジュンの事は僕に任せて」

「ありがとう…」

 

ようやくホッとしたユノは、額の前でギュッと手を握り締めた。

窓辺に立ったユノは、呟くように言った。

 

「ジェジュンは…俺との番を、受け入れてくれるだろうか……」

 

ユノの気持ちも知らないジェジュンは、ソファでスヤスヤ眠っていた。

 

 

 

「ん…」

 

目を覚ますと、ソファの隣にジュンスがいた。

 

「あ、れ?ジュンス兄?どうして?」

「ジェジュン、起きられる?」

 

いつの間にか服を着せられていて、ユノの姿は見えなかった。

 

「ヒートが来たんだね」

「うん。多分、ユノさんの香りを嗅いで…急に…」

 

真っ赤な顔をしてモジモジと俯くジェジュン。

 

「話は聞いたよ。…それで…ユノは優しかった?」

「うん。…僕は怖くて泣いてばかりいたけど、ユノさんが大丈夫だって言って、僕を楽にしてくれた。痛い事はしないって。気持ちいいだけだからって…。ホントに気持ちよかった…(/ω\)」

 

「ユノに触れられて…嫌じゃなかった?」

「嫌じゃなかったよ!恥ずかしかったけど…全然嫌じゃなかった…」

「分かった。まずは抑制剤を飲んで。疼きが収まるから」

「あ…うん」

 

抑制剤を飲んでしばらくしたが、ジェジュンのフェロモンの香りは落ち着かなかった。

 

…おかしいな…普通、抑制剤を飲めば匂いも消えるんだけど…初めてのヒートだから?

 

「ジェジュン、体の疼きは収まった?」

「うん。もう平気。だけど…すごく、怠い…」

「抑制剤の副作用だよ。あとジェジュン、しばらくここで過ごそうね」

「え…?なんで?」

「ジェジュンのフェロモンの香りが強いから。ここが一番安全だから」

「安全?どうして?…首のコレ、なぁに?」

 

ジュンスが説明しようとしたが、ジェジュンは睡魔に勝てず眠ってしまった。

 

番の事はユノから説明するべきだし、ジェジュンのフェロモンの事も気になる。

そう言えば、ジェジュンは不妊の可能性があると言われていた。

もしユノと番になれば…ユノの子供は生まれないかもしれない…。

 

この事を…ユノに言うべきだろうか……?

どうしたらいいの?ユチョン、早く帰って来て!!

 

 

チャンミンは、ユノのお気に入りのイチゴがいっぱい乗ったケーキを買って帰ってきた。

 

はぁ~まったく、ユノのご機嫌取りも楽じゃないです。

これで機嫌を直してくれたらいいんですが…。

 

ガチャリとユノの執務室のドアを開けると。

ブワッと甘いフェロモンの香りがチャンミンを襲う、それも強烈な香りだ。

 

な…なんだ?この香り…。

 

ザワザワと、体中の細胞が騒ぎ出すのが分かる。

これは、オメガのフェロモンだが…こんな香りは初めてだ…!

 

どこだ?どこにいる?

チャンミンの本能が、オメガを探している。

この甘美なフェロモンの主を、必死になって探している。

 

「チャンミン、帰ったのか」

「ユノ…なんですかこの香りは?どこにいますか?」

「落ち着いてくれ、頼むチャンミン」

「私は落ち着いています」

 

そう言いながらも、せわしなく目を動かすチャンミン。

アルファの本能が、チャンミンの理性を壊そうとしている。

匂いを嗅ぎあてたチャンミンが、ユノの制止を振り切り、続き部屋のドアを開けた。

 

「あ…!彼は…!」

 

ソファに眠るジェジュンの姿を見つけると、チャンミンはじりじりと歩み寄った。

すかさずユノは、チャンミンの前に体を入れ、チャンミンの肩を掴んだ。

 

「チャンミン…動くな。俺のだ」

「俺の…?何を根拠に?」

「いいから。動くな。命令だ…!」

 

ユノの低い声が響き、ようやくチャンミンは、力を抜いた。

ユノが強いアルファのフェロモンを放ったのだ。

自分より強いアルファのオーラには、逆らえない。

スーパーαのユノと、高位のアルファであるチャンミン二人の緊迫した空気は、ジュンスを疲弊させた。

 

「チャンミン、説明するからあっちの部屋に行こう」

「……分かりました」

 

 

 

 

動くな…俺のだ

 

 

 

※※※

お察しの通り、ユノとジェジュンは運命の番でした♡

スーパーαであるユノは最強ですが、だからこそ数々の壁が存在します。

ユノによって美しく開花したのは良いが、エグいフェロモンを放つジェジュン。

ユノの心配は尽きません。

 

ジェジュン、15年ぶりの地上波、映画決定、仕事は順調なようですね。

福岡公演も楽しそうでした^^

ヲタ活出来ない忙しさで、誰かのレポを羨ましく感じる事もあるけれど。

ジェジュンもあれだけ頑張って仕事してるんだから、自分も頑張ろうと思えます。