「ユノ、忘れ物ない?充電器持った?」

「おっと、やべぇ」

「もーしっかりしてよね。週末帰るんだよね?ご飯作って待ってるから」

「マジ?楽しみだ♪」

 

二人は付き合うようになり、すぐに同棲を始めた。

海外遠征や合宿が多いユノと時間を作るには、同棲が手っ取り早かったから。

次のオリンピックも目指すユノは、トップアスリートだから、厳しい食事管理が必要だ。

だが、基本「自分の事は自分で」が二人のルール。

寄り添い・助け合うが、依存しない・甘え過ぎない。

 

ジェジュンもますます仕事が楽しくなり、バリバリ働いて、母親に高級アパートを買えるほどになった。

ユノも金メダルを獲った事で多数のCMやスポンサーが付き、収入が安定した。

今暮らしている高級アパートもユノ所有のものだ。

生活費はジェジュンが賄い、遊びに行くときなどはすべてユノが払う。

 

遠征に行くユノを空港まで送り、たった3日が寂しくてうっかりトイレで致しそうになった。

 

「ダメ…ゆの。誰か来ちゃう…」

「はぁ…ジェジュン、帰ったら寝かさない」

「うん。待ってる」

 

クールなルールを作っても、熱い想い(性欲)は止まらない。でも、大人だから我慢、我慢。

 

 

ジェジュンと暮らすようになったが、お互い「自分の仕事には妥協しない」と約束した。

二人で過ごすことで、仕事の成績が落ちると、二人で暮らす意味がないから。

俺も、ジェジュンの前では誰よりも強く、カッコよくありたいから。

 

ただ、ジェジュンが精神科に通っていた過去を知り、頑張りすぎないよう時々セーブさせている。

今は落ち着いているようだが、どちらにせよ働き過ぎは体に良くないから。

 

海外遠征などが入ると、一か月ぐらい会えなくなる。

もちろんジェジュンを信じているが、酒を飲む場にはなるだけ行かせたくない。

俺が韓国にいる時は、必ず迎えに行くようにしている。

 

この前も、会社の歓迎会があった時の事。

俺はいつものように、飲み会中に電話を入れるよう約束させていた。

約束通り電話がかかってきたが、どうも酔っている気がしたので迎えに行った。

 

店に着くと、グラスを持ったままウトウトしているジェジュンがいて、部下らしき男が、ジェジュンのネクタイを緩めようとしていた。←(。-`ω-)

この男、絶対ジェジュンに気があるし、あわよくば…と思ってるな!(。-`ω-)

まったく、危なっかしいったら!許さんぞ!

 

「すみません。ジェジュン兄を迎えに来ました」

「えっ!もしかして…チョンユンホ選手?テコンドーの…」

 

女子社員達が騒然とする中、ジェジュンの手からグラスを離す。

 

「え~…なんでユンホさんが、キム部長を迎えに?」

「あぁ、親戚なんで(ウソ)。同居してるんです」

「そうだったんですね~」

「ホラ、大丈夫か?帰るぞ」

「う…ん」

 

軽々とジェジュンとカバンを抱え、部下たちに挨拶する。

 

「支払いはしておきますので。ジェジュン兄は連れて帰ります」

 

店の外まで見送りに来た、ネクタイ緩め男が、若さからかユノに挑んできた。

 

「親戚なんてウソですよね。同棲してるんですか?ユンホさん有名人なのに。バレたら大変ですよねぇ?」

 

ユノは余裕の笑みを浮かべ言った。

 

「言いたきゃ言えばいい。だが…君じゃジェジュンの横には並べない」

 

「なっ…!」

 

「金メダルぐらいは獲ってから言え」

 

何も言えなくなったネクタイ緩め男を置いて、ユノはスタスタと歩き出した。

タクシーを拾おうと歩いていると、寝ているはずのジェジュンが、くすくす笑っていた。

 

「カッコいいなぁ~俺の彼氏は。金メダルぐらいってユノしか言えない~」

「当たり前だろ?ま、以前の俺なら、背骨折ってたけどな」

 

ヒャヒャヒャと笑うジェジュンは、きっとわざと迎えに来させたんだと思う。

今もジェジュンの小悪魔に振り回される俺だけど、それも楽しんでいる。

こんなに綺麗で可愛い小悪魔、俺にしか乗りこなせないから。

 

 

 

空港でユノを見送り、ジェジュンが車を走らせていると、ヒチョルから電話が鳴った。

 

「お~ヒチョル兄、どうしたの?」

「お前、週末イタリア行かねぇか?当然全部タダだぜ」

 

聞けば、ユチョンさんが、移籍したジュンスの試合を見に行きたいからイタリアに行く、当然ヒチョルも連れて行くが、自分はサッカーには興味がないから、ジェジュンとワインでも飲もうと思ったらしい。

 

「相変わらず、ユチョンさんはキムジュンス推しなんだねぇ」

「参るぜ。なぁ美味しいワイン飲みに行こう?プライベートジェットだぜ?」

「週末はユノにご飯作ってあげたいから行かなーい」

「プライベートジェットでイタリア旅行と、男にご飯作るって釣り合わないと思うが?」

「俺にとってはユノとの時間が、イタリア旅行より大きいの~」

 

ヒチョルは、ちぇーとぼやきながら電話を切った。

後ろでは、ユチョンが大きくキムジュンスと書かれた幕を作っていた。

 

「業者に頼めばいいじゃん。なんで自分で作るんだ?」

「気持ちのこもり方が違うの!初めてのチームだし、応援してるぞって伝えたいの!」

 

チェ。まったくキムジュンスの事になると。人が変わるんだから。

モヤモヤしたヒチョルを見て、ユチョンがそっと頬にキスして来た。

 

「寂しいのか?ヒチョルの事も応援してやろうか?」

「寂しくなんかないわい!」

「ふふ。俺が一番応援してるのはヒチョルだよ。そして誰よりも愛してる♡誰にも負けない」

「どうだか…フン」←顔真っ赤♡

 

天邪鬼なヒチョルをここまで可愛くしてしまうのは、ユチョンだけだろう。

ブツブツ言いながら、楽しそうにイタリア行の用意をするヒチョルを、ユチョンは微笑んで見ていた。

 

 

 

週末ユノが帰ってきて、用意していたご飯を一緒に食べる。

会えなかった時間にあった事を報告し合い、一緒にお風呂に入る。

いたずらなユノの指が、ジェジュンの敏感な部分を撫で、可愛がる。

 

「もぅ…ゆのっ…ゆっくりベッドでしようよ…あんっ」

「ベッドでもするよ。風呂でもするけどな」

「あっ…!あ、ぁ…そこ…きもちいー…」

「ジェジュン、いっぱい気持ちよくなれ」

 

たっぷりお風呂で楽しんで、ベッドでは二回戦。

 

「ちょ…ゆの、お前みたいに体力オバケじゃないんだぞ。手加減…しろっ」

「やだね。このために頑張ったんだからご褒美がないとな」

「ゆの、俺の事…考えてた?俺に…会いたかった?」

「うん。ジェジュンの事ばっかり考えてた。ジェジュンは…もう俺しか見るな」

 

「うん…もう、ユノしか見えない」

「いい子だ」

 

呆れるほど愛を囁いても、呆れるほど抱き合っても、いっこうに飽きそうにない。

二人は、誰も傷つけない為に、強くなろうとした。

だが、大好きな人がいるだけで、こんなにも強くなれる。

 

指を絡ませて、キスをすればほら。

こんなに幸せだ…。

 

 

静けさに目が覚めた。

夜明け前、窓の外がうっすらと白み、辺りは静まり返っている。

ユノの腕は、ジェジュンをがっちり捕まえて、幸せそうに眠っている。

 

微睡みの中、ユノの匂いを嗅ぎながらもう一度目を閉じる。

ヒチョルがいつか言った言葉が思い出された。

 

 

『ジェジュンや、本当に結ばれる相手とは、何年経っても、何があっても結ばれるもの。それが人の縁ってもんなんだよ……』

 

 

ホントだね…ヒチョル兄。

俺は、本当に結ばれる人と結ばれたよ。

俺、幸せだ…。

 

静寂の中、耳に届くのは、ユノの吐息だけ。

自分を抱きしめるユノの力強さに、何度も許されている気がする。

生きていていい、ここにいていい、笑ってもいい…。

 

 

父を…本当に赦せる気がした…。

 

 

ジェジュンはユノの胸に潜り込み、また安心して眠りについた。

 

夜明け前の静けさが、二人の眠りを優しく見守っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

はぁ~途中どうなる事かと心配になりましたが、何とか完走できました!

本当の愛を見つけるまでの二人のお話でした。

ユノの愛に満たされて、父親の事も赦せると思ったジェジュン。

静かで温かいラストに満足しています。

最後まで読んだよ!とコメント頂けましたら、嬉しくてモチベーション上がります。

お願いしまーす♡

次回番外編。「いつかのクリスマス」です。