街がキラキラとしたイルミネーションに彩られ、どこもかしこもクリスマス一色。
クリスマス気分に浮かれたカップルたちが、いちゃつきながら歩く街を、ユノは黙々と歩いていた。
毎年、毎年、練習漬けで俺にはクリスマスは無縁だと思っていた。
しかしっ!今年は違―うっ!
今日はジェジュン兄とデート♡焼肉デート♡わぁ~~い♡
先日ジェジュン兄から電話があった。
「ゆの~今度さ、俺の先輩が焼肉店出すんだよ。オープンの日、一緒に行ってもらえないかな」
「いいよ。いつ?」
「クリスマスイブだけど…大丈夫?」
「大丈夫っ!大丈夫っ!全然暇だから、俺!」
待ち合わせ場所に行くと、会社帰りのヒョンはスーツ姿だった。
相変わらず可愛くてカッコいい、俺のヒョン♡
「ごめんね~ゆの。寒いのに」
「全然!トレーニングがてら走ってきたし!」
「じゃあ行こうか。あ!時計、似合ってるね」
「あれから毎日つけてる。みんなに羨ましがられたよ^^」
ユノは、ジェジュンから貰った時計を毎日つけて、目に入る度ジェジュン兄を思い出して、ニヤニヤしていたのだ。
焼き肉店に着くと、ジェジュンは店主らしき人に手をあげて挨拶した。
ガタイが良く、短髪にタオルを巻いたちょっと恐そうな男は、腕がタトゥーだらけだった。
「おぉっ!来てくれたのか!悪いな!」
「いえ、当然ですよ。先輩にはお世話になりましたから。この子は僕の教え子です」
「あっ…ども…」
「おう悪いな!兄ちゃん!助かるわ!」
こんな人相悪そうな男が先輩…?助かるわ?
そう思っていると、ジェジュンが耳元でこっそり囁いた。
(あの人、あんな顔してるけどソウル大卒だよ)
(えぇっ!うっそ~。俺、てっきりヤ〇ザかと思った…)
クスクス笑いながら、ジェジュンがユノに黒いエプロンを差し出した。
「え?」
「じゃ、頑張ろうか」
「え?え?」
ゴシゴシゴシゴシ‥‥ユノは店の裏で大量の網を洗っていた。
なんだよぉ~~焼肉デートだと思ったら、先輩の店の手伝いじゃん~( ;∀;)ゴシゴシ
ジェジュンは店内でホールの仕事をしており、時々「生ビール追加でーす」などと声が聞こえる。
どーせなら、一緒にホールの仕事して、バイトカップル気分を味わいたかった…。
「おう、兄ちゃん!これも頼むな!」
ドサッと置かれた大量の網。ユノは泣く泣く網を洗い続けた。ゴシゴシゴシゴシ
「お疲れ様~ユノ。こっちおいで」
「兄ちゃんお疲れ!これ少ないけどバイト代な!」
さっきまで満席だった店も落ち着き、店主のコワイ男が、ニコニコ笑いながらユノに封筒を渡してきた。
見れば、結構な額のお金が入っていた。
「ジェジュンも、お疲れさん。これ貰ってくれ」
「ヤダな、よして下さい。俺はビールだけでいいです。その代り、この子に良いお肉食べさせてあげてもらえませんか?」
「おう!まかせとけ!兄ちゃんいっぱい食え!」
次々に運ばれてくる美味しそうな「韓牛」を見て、ユノはえぇっ!と歓喜の声を上げた。
韓国人にとって「韓牛」とは特別なもの、最高級のご馳走なのだ。
「俺が焼いてあげる。ゆの、いっぱい食べな」
「ほ、ほんとに?韓牛…?やったーー!!」
「うふふ。先輩、この子の事覚えておいて。絶対オリンピックで金メダルとるから」
「ほー。何の競技だ?」
「あ、テコンドーっす」
「ほっほう!将来のオリンピック選手か!先にサイン貰っておこうww」
せっかくの焼肉デートが、ただのバイトかと落ち込んでいたが、最高級の韓牛をしこたま食べられた。
思わぬバイト代も入ったし、ユノにとっては最高のクリスマスになった。
あぁ…ジェジュン兄ってホント最高だよな。
下手に洒落た店に連れて行かれても、緊張してこんなに満足できなかったと思う。
プレゼントしてくれた時計にしても、俺の事を本当に分かってくれてる。
美味そうにビールを飲み、店主とふざけているジェジュン。
俺は…?
俺は、本当のジェジュン兄を分かっているんだろうか……。
年が明け、あっという間にユノの卒業式の日がやってきた。
いつもウザいと思っていた制服、だが明日からはもう着なくなるのだ、そう思うと感慨深いものがあった。
今日は平日なので、いつもと変わらぬ日だが、今日でユノの高校生活は終わる。
はぁ…いろんなことがあったな…。
〇〇大での練習も始め、新たなテコンドー人生は始まっている。
だが、ここで過ごした日々が、今のユノを作っている。
仲間たちとふざけながら体育館に集まり、卒業式が行われた。
ユノは晴れ晴れとした感覚だったが、女子たちはすすり泣き、みんな高校最後の日を胸に刻んでいた。
「ユノ先輩!卒業おめでとうございます!」
テコンドー部のマネージャーだったテミンが、飛び込むように花束を持って駆け寄ってきた。
いつも部活でこまごまと世話を焼いてくれ、一生懸命尽くしてくれた後輩だ。
「あぁ、ありがとなテミン。お前には世話になったよ」
「ぼ、僕…ずっと、ずっと…ユノ先輩に憧れてましたっ!」
おいおいと泣きながら抱き着いてくるテミンは、正直可愛いと思う。
卒業式というおセンチな気持ちも相まって、ユノは珍しくテミンをギュッと抱きしめた。
ふっふっふ!今日はユノの卒業式って事で~!!サプラ~~イズ!イエーイ!
ジェジュンは、こっそり仕事を抜け出して(サボって)ユノの卒業式に駆け付けていた。
実は昨日ユノの卒業式の日を聞きつけ、急激にユノの制服姿を見たくなったのだ。
(もちろんエロい気持ちのみ)
ゾロゾロと卒業生たちが出てくる中、ひときわ目立つスタイル抜群の男子生徒がいた。
ユノだ。
ワォ!カッコいい!高校生に見えないスタイルの良さ!脚の長さ!顔の小ささ!
窮屈に制服に押し込めたその胸筋!広い肩幅!大きな背中!見に来てよかった!
制服姿という大人一歩手前の若々しさと、もうエチも知っている大人の空気が相まって、絶妙なエロスが漂っている!今だけの限定エロス!美味しそう!あぁ!今すぐ押し倒したいっ! ←ヘンタイ
じゅるりとヨダレを拭いてユノを熱く見ていると、ユノに飛び込むように抱き着いた男子生徒がいた。
後輩だろうか、泣きながらユノに抱きつき、ユノもまんざらでもなさそうに、優しく頭を撫でている。
ムカ…(。-`ω-) ムカムカムカムカ
はぁぁ?ナニ頭撫でて貰ってんの?ヨシヨシして貰ってんの?クソ!羨ましい!めちゃ羨ましい!
ユノは年下だし礼儀正しいから、俺の頭を撫でるなんてした事無い。
否応なしに突き付けられる「10歳も年上」という事実に、ジェジュンはイラつきを隠せない。
小さくて女の子みたいに可愛い後輩君。あ~モヤモヤするっ!
その時、ユノより先に後輩君が俺に気づいた。
遠くからユノを見つめる俺の熱い視線、どこか入り込めない空気に臆している俺。
その一瞬で、俺の感情を読み取ったのか、後輩君はフフッと笑いながら、わざとユノに頭を擦り付けた。
あれは俺もよくやる技「ネコみたいに懐いて可愛さアピール」だっ!
むむむ…まるで自分の高校生時代を見ているようだ、絶対にわざとやっているし、見せつけている。
舐めんな!このちんちくりんドロボー猫がぁっ! ←大人気ない
ん?なんだろう…?女子たちが、やけに黄色い声で騒ぎだしている。
「え~…すっごいイケメン!」「誰?誰?誰かの彼氏?」「キラキラしてる~♡」
「ウソ~アイドルみたいにキレイ~~♡!」キャーキャー
ユノが振り返ると、黄色い声の真ん中で、スーツ姿のジェジュンが立っていた。
「えっ?ジェジュン兄?!」
もしかして、俺の卒業式に来てくれたの?忙しいのに?わざわざ?嬉しいっ!!
ユノは、抱きついていたテミンをポイっと放り投げ、ジェジュンの元に走り寄った。
「ユノ、卒業おめでとう^^」キラキラスマイル
「あ、ありがとう!わざわざ来てくれたんだ!嬉しい!」
ジェジュンはそっとユノの耳元で囁いた。
「お前の制服姿…どうしても見たかったんだ…」
ジェジュンの吐息が耳にかかり、そっと顎下を撫でられた。
ユノの顔から首までが、一瞬で真っ赤になり、すぐにジェジュンが言った意味を理解した。
制服姿が見たかった=制服姿でヤろう♡
真っ赤になったユノを、クスクスと悪戯っぽい顔で見つめるジェジュン。
あぁ小悪魔ってのが本当にいるなら、それは今ここにいるジェジュン兄の事だ!
キレイで可愛くて、ちょっと意地悪な…俺の小悪魔ちゃん♡
ユノの傍に立つジェジュンもスラリとした長身であり、ユノとの絶妙な身長差が美しい(本人自覚アリ)
ユノの肩越しに、ジェジュンはテミンに見せつけるように、ユノを連れ去った。
(ちんちくりん子猫ちゃん、貰ってくよ~ん)←悪魔
ユノは貰ってくよ♡
※※※
テミン(後輩君)完敗!小悪魔ジェジュンには誰も敵いませんww
シムとイイ感じでありつつ、子猫にヤキモチも妬く。
小悪魔ジェジュン、悪い大人です。