「なぁ…。俺たち、本気で復活しないか?」
突然のユノの言葉に、5人は固まってしまった。
そして、ジェジュン、ユチョン、ジュンスは、同時にチャンミンを見た。
チャンミンは言葉を失い、茫然としていて、さっきのユノの言葉がユノ個人の意見だと分かった。
「ちょ、ユノ。本気…?」
「本気だ」
慌てたジェジュンが、落ち着かせるように言ったが、ユノは落ち着いていた。
うまい言葉が見つからずに何も言えない4人に、ユノが続ける。
「気まぐれで言ったんじゃない。あの企画が思ったよりいい感触だったからでもない。俺はずっと思っていた」
「でも…」
ジェジュンがその後言いたかった言葉は、全員が思い浮かべた事。
則ち、ユノとチャンミンが今も所属している事務所の事。
いくら体制が変わったといえ、3人がそこと訴訟問題にまで発展した過去は、変えられない。
3人は、険しい顔をして口をつぐんでしまったチャンミンをちらりと見て、それぞれ下を向いてしまった。
「ユノ、ちょっと話しましょう」
やっと口を開いたチャンミンは、ユノを隣の部屋に移動させようとした。
「何でだ?ここで話せ。俺らは家族だ。何でも言え」
チャンミンはため息をつきながら、小さく舌打ちした。
「…簡単ではないと思います。分裂の時に訴訟にまで発展した事、ジェジュン兄達が韓国で音楽番組にまだ出られない事実、投資家やファンの混乱、それに…ユチョンの事もあります。僕らは少女時代やKARAと同じではない」
「そうだな。お前の言う事はきっと正しい。そして、みんなが同じように思ってる。だが、それがそれほど重要な事か?こいつらが音楽番組に出られない?出さないのがおかしいんだ。それを当り前とする業界の風潮が間違っているんだ。再会する前も思っただろ?絶対に出来ない、無理だ、みんながそう思っていた。だけど実現した。やれば出来るんだ。俺たちに必要なのは、ためらう事じゃない。人の顔色をうかがう事じゃない。一歩踏み出す勇気だ」
「そんな事分かってます!だけどリスクを背負って一歩踏み出しても変わらなかったら?すべてを失うかも知れませんよ?決して正義が勝つ世界じゃない、そんなに綺麗な世界じゃない事は、僕たち嫌という程知ってるじゃないか!」
「だからと言って何もしなければ、何も変わらない」
「なぜ今なんです?今まで何もしなかったくせに!」
「今、芸能界だけじゃなく、世界のエンタメ業界が大きく変わろうとしているからだ。事務所の存在意義も、メディアの在り方も変わる。人々が見たいものは多様化し、決して妥協はしない。それに合わせた新しいプラットフォームがどんどん出て、柔軟な対応は必須だ。それを一番訴えていたのはお前だろ?ジェジュンもそう言ってたよな?」
「それとこれは話が別です!いくら多様化しても既存のメディアや事務所の存在は無視できない!」
「ちょ、ちょっと待って!」
ヒートアップしたユノとチャンミンを、ジェジュンとジュンスが慌てて止めた。
「ユノ兄、俺たちだって復活したいと思ってるよ。ずっと思ってきたもん。待っているファンがいる事だって知ってる。ただ、俺たちは外に出た人間だ。でもヒョン達は違うだろ?もし、復活するしないで、ヒョン達が辛い思いをするのが嫌なんだよ」
「ジュンスや、今更何言ってんだ?お前は復活する気もないのに、ノコノコ日本のスタジオまで来たのか?あんな過密なスケジュールを縫って来たのかよ!」
「それは…だからっ…」
「俺たちへの気遣いは無用だ。俺もチャンミンも、そんな事気遣って欲しいなんて思ってない。チャンミンが言ったのは現実には難しいって事だけだ。だが、俺たちにはそれをひっくり返せる力がある筈だ。そうだろ?チャンミン」
「はぁーっ!ったく!アンタはいっつもそうだ!わざわざ面倒な道を歩きだがる。付き合うコッチの身にもなって欲しいですね!」
「俺とお前は運命共同体だろ?これからは5人共運命共同体だ。40が見える年になって、またでこぼこ道を歩くんだ。ワクワクしないか?」
「しないですね!僕はもう一児の父です!安定第一!」
「…ぶっ…くっくっく!あっはー!」
笑い出したジェジュンに、チャンミンがムッとした顔で「何ですか?」と問う。
「だって…!俺の中のチャンミンは、今でも可愛いマンネで…。それなのにユノにポンポン言って…安定第一?チャンミンが?あっはー!」
「ジェジュンには、今でも可愛いマンネですよ^^」
「何がマンネだ。お前は昔から毒舌吐きまくってだろ!」
「確かに、毒舌だったっすね~。マンネの印象ないかなぁ」
「そーだよ!一番の被害者は俺だよぅ!」
5人でゲラゲラ笑ったら、なんだかバカバカしくなってきた。
「あーあ、なんかバカみたいに思えてきた。だってさー、俺たちが復活して何が悪いわけ?裁判が終わったのはもう10年以上前の事だし!今は2023年だよ!」
「そうですね。僕たちだってもうこの世界に20年いるベテランです。あの頃の僕たちじゃない」
「だろ?何とかなるさ」
「…大丈夫かな」
「ユチョン!お前が一番頑張れ!なんであの時、Beginを歌ったと思ってる。お前の歌い出しだからあの曲にしたんだ」
「ユノヒョン…」
さっきは笑っていたジェジュンが、目を伏せてぽつりと言った。
「俺さ、ホントはずーっと願ってた。ユノにだけは言ってたけど、ホントは、みんなでステージに立つのが、俺の夢なんだ……」
ユノがジェジュンを抱きしめる。
「ジェジュン、遅くなったけど、お前の夢、俺が叶えてやる。絶対、叶えてやるから…」
「ゆのや…」
「ちょっと!なに自分だけカッコつけてんですかっ!アンタだけが叶えるんじゃない!みんなで叶えるんですー!」
「そうっすよ!ユノヒョン、いいとこどりだぁ!」
「ズルい!ヒョンズルーい!」
ひとしきり笑って、ふとユチョンが呟いた。
「…でもまた…いろいろ言われるんだろうな…」
「でしょうね。でもこう思っとけばいいですよ。ガタガタうるせぇ、ファンだったら黙ってついて来い。僕らが復活することでお前に迷惑かけたか?黙ってろってね」
「言ったら炎上確定だな!うきゃん!」
「ゆのー♡」「ジェジュン♡」とまだ抱き合っていちゃつく二人に、チャンミンの雷が落ちる。
「ちょっと!そこいい加減にしろ!まったくもー」
「あの二人は変わんないよ」
「しょーがねーっすね。もう慣れたけどね」
「しっかしチャンミンも言うようになったね。ユノ兄相手に思い切りがいいなぁ」
「当たり前でしょう。言いたいことは言うべきです。あとで揉めるぐらいなら、先にケンカするべきです」
ようやく体を離したユノが、ジェジュンの髪を弄りながら言った。
「ま、実際の所ネックなのはコッチの(事務所)問題だと思う。それは俺とチャンミンに任せてくれ」
「それと、どこまでやるかって事だよね。ずっとやるのか、どこで復活するか、新曲は出すのか」
「やりたい事と出来る事は違うからね。5人のスケジュールを合わせるのは…至難の業だね…」
「ちょっと、これ見てくれ」
ユノが携帯を机に置き、スクロールしていく。
「今回の復活劇で、事務所に届いたファンの意見だ。大まかに分けて3つ。①復活してくれて嬉しい、楽しみにしているっていう肯定的な意見、②復活はもういい、思い出はそのままにっていう否定派、③復活するなら絶対韓国でやれ。実はこの意見が一番多かった。日本で復活をしたのが気に入らないようだ」
「韓国あるあるだね。確かに僕たちは韓国のグループだからね。復活するなら韓国でやるべきだと思う」
「今、業界は大きく変わってきてる。CDは売れないし、音楽はサブスクで聞く時代。単独コンサートよりフェス方式で、色んなアーティストをいっぺんに見たい、とにかく時間が惜しい若者に合わせて、曲も短いのが流行りだ」
「ただ、多様性が重んじられる所は、僕たちに追い風かもしれません。昔を知らない子達には、僕らが新鮮に映る可能性もあります」
「今の子たちは、自分達で曲作って自分達でプロデュースもディレクションまでやっちゃうんすもんね。そんな中で俺たちがどこまで出来るか…」
「勝つ必要なんてあるか?俺たちは、待ってくれてるファンだけ見てればいい」
「確かにそうだよ。勝ち負けじゃない。まずは韓国で5人揃ってステージに立つ。次は新曲を出す。そしてコンサートが出来れば最高だけど…」
「最終目的はツアーだな。待っていた世界中のファンに会いに行きたい」
「夢は大きく、だね。まずは自分たちのスタッフと会議しないと。俺たちはまだしも…ユノ兄達は…きっと大変だよ」
「ユノ、チャンミン。これだけは約束して。ムチャはしないで。望まない結果だとしても極端な決断はしないで。俺たちはいくらでも待てるし、俺たちが望んでいるのは、ユノ達の犠牲じゃないから。言っている意味、分かるよね?」
「ジェジュンァ。悪いがコレは俺とチャンミンの問題だ。いくらお前でも口は挟めない」
心配そうな顔をしたジェジュンの肩を、チャンミンがグッと抱きしめた。
「ジェジュン、心配しないで。僕たちに任せて。僕たちを信じてください」
ムッとしたユノが、ジェジュンの腕を引き、チャンミンから奪い取る。
「ジェジュン、そんな顔するな。心配いらないから。ん?大丈夫だから」
またイチャつきだした二人に、3人は呆れた顔をし、ジュンスとユチョンがチャンミンを慰めた。
こうして、ご飯会は終わった。
お前の夢、俺が叶えてやる
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ココから過去の妄想に突入します、全て妄想。エンタメです。
暗い話もあるので、苦手な人は読まないでくださいね^^
あ~しかし暑いですな。
ワタシは完全に「揺らぎ世代」で体調がすこぶる悪いです。
母が施設に入ったりと、バタバタしております。
皆様も辛いけど元気をださなきゃいけない時、ありますでしょう?
そんな時、なんかいいヤクはないでしょうか(涙
「教えてほしーの」byビギステーション