3人がやってきたのは、今回のCMのスポンサーYJカンパニーだった。

 

「え?ここって…スポンサーだよね?はっそうか…そうだよね…まずは、ここにお詫びに行かなくちゃ…」

身を固くするジェジュンとシンドン。

 

その前を、ヒチョルが悠然と歩いていた。

 

「ジェジュン君…ヒチョル君って…いったい…」

「ヒチョルは謎が多いんです。でもヒチョルのいう事聞いてたら間違いないんで…。とりあえず謝罪しないと…」

「そっそうだね…とにかく謝罪しないと…。そのあと会社には連絡するよ…」

 

ヒチョルが受付で話をしている間、ジェジュンとシンドンはヒソヒソと謝罪の練習をしていた。

 

連れられてきたのは、ビルの上層階にある重厚な部屋だった。

 

ちらりと廊下を見ると、各役員の部屋がすらりと並んでいた。

 

あぁ!!やっぱり偉い人に謝りに行くんだぁぁぁ~ガッテム!どーしよー損害賠償とか求められたら…!俺、金ないのにィィ~~あぁぁ~~!

 

ジェジュンが頭を抱えていると、本部長室に通された。

 

ソファに腰かけると、どっと疲れが出てきて、ジェジュンはだらりとソファに身を沈めた。

 

「大丈夫か?ジェジュン…」

ヒチョルが優しく肩を撫でると、ジェジュンはキッとヒチョルを睨んだ。

 

「そんな事より…いったいどんな偉い人に謝んなきゃいけないの?あぁ~やばい…損害賠償…」

「損害賠償??はっは!大丈夫だから!お前は黙って座ってろ」

 

「そんなわけにいかないじゃん!もう~ヒチョリのバカ~」

「はぁ~?お前にバカって言われちゃあおしまいだな、俺も」

「何をのんきなことを~」

 

二人ですったもんだやっていると、ガチャリと扉が開いてスーツを着た二人が部屋に入ってきた。

勢いよく立ち上がったジェジュンがふらついて、ヒチョルがその背中を支える。

 

「お呼び立てしてすみません」

 

そう頭を下げたのは、YJカンパニーの本部長スンホン。

どうぞお掛けにと、ソファへ座るよう促し、自分たちも腰かけた。

 

40代で上質なスーツに身を包み、涼しげで優しげな顔立ちと、知的で品の良い話し方。

いかにも仕事が出来そうな人だ。

 

もう一人は、30代前半ぐらいの、長身の男。

スーツは着ているがノーネクタイで茶髪、はっきりとした大きな目に濃い眉毛で快活そうな人だ。

CMの担当で名をホジュンと言った。

 

「この度は…」

そうシンドンが用意していた謝罪の言葉を話し出すと、ホジュンが手でそれを止めた。

 

「あぁ~いいんです、話はヒチョルさんに聞きましたから」

見ればホジュンはニコニコと笑っていた。

 

「すみませんねぇ…かえってご迷惑をおかけしてしまって…」

 

「え?」

 

ジェジュンとシンドンがキョトンとしていると、スンホンが落ち着いた声で話しはじめた。

 

「実は頼んでいたCMディレクターがいたんですが、会社の上層部が勝手にあの監督にオファーしてしまって…。なんとか断ろうとしていたんですが、その前にバレてしまいましてね…いや、お恥ずかしい」

 

「ダブルブッキングだったってことですか?」

シンドンが聞くと、スンホンは大きく頷いた。

 

「我々としましては、新しい感性をCMにと思っていたもんですから…。あの監督じゃねぇ…」

ホジュンが両手を外国人のように大げさに上げた。

 

思わずクスリと笑ったジェジュンに、ホジュンはニッコリと笑った。

 

「まぁ―あの監督にもメンツがありますからね。新人のジェジュンさんにおっかぶせようとしたんでしょう。いや、本当にご迷惑をおかけしました」

 

「いえ…気になさらないでください」

ジェジュンがニッコリ笑うと、ホジュンもニコニコと笑った。

 

「ジェジュンさんの身体の事は承知しています。新しいディレクターもその事は十分理解した上で作っています」

ジェジュンはホッとして体をソファに預けた。

 

「それでは、詳しい事は担当のホジュンから聞いてください。私は所要がありますので、これで失礼します。この度は本当にご迷惑おかけしました。事務所の方には改めてお詫びに伺います」

そう言ってスンホンは、部屋を出て行った。

 

ドアが閉まると同時に、ふーっと息を吐いてホジュンが首を回した。

 

「あぁ~もう、寛いでください。偉い人、行っちゃったんで…」

いたずらっぽく笑うホジュンに、ジェジュンとヒチョルは笑ったが、シンドンはまだ目を白黒させていた。

 

「もう参りましたよ~…せっかくこっちが根回ししたディレクター勝手に断っちゃって、それで連れてきた監督?だかなんだかの…あの絵コンテ見ました?まったくよくもあんなどこかのCMのパクリみたいな絵コンテ、堂々と持ってこられるなーってみんなでびっくりしちゃったんですよ~」

 

あまりにホジュンがぶっちゃけで話すものだから、ジェジュンはおかしくて口に手を当ててケラケラ笑った。

 

「こっこら、ジェジュン君!」

シンドンに止められて慌てて口を閉じるジェジュンを見て、ホジュンとヒチョルがまた笑った。

 

「ね?ジェジュン君もそう思ったでしょう?」

「そうですね~…ってヤバっ」

またシンドンを見て口を閉じるジェジュンを見て、ホジュンが豪快に笑った。

 

「いいですね~ジェジュンさんは正直な方だ!あっはっは!!」

 

「多分そんな事だろうと思って、こちら側の担当者に連絡したんです。打ち合わせにも担当者の方が来られてなかったのでおかしいなと思って…」

 

「えぇ、ヒチョルさんから連絡受けてびっくりでしたよ。打ち合わせがあるなんて聞いてませんでしたから」

 

ようやくヒチョルが口を開き、それにホジュンはニコニコと答えた。

 

「あの…何でそんな事になったんですか?」

ジェジュンが恐る恐る聞くと、ホジュンは軽い調子で答えた。

 

「あぁ~よくある会社の中での派閥争いみたいなものです。さっきの本部長、すごく仕事ができるんで、敵も多いんです。古株の連中がいやがらせしてくるんですよ。まったくお恥ずかしい。申し訳なかったです」

 

 

後日打ち合わせをすることになり、今日のところは解散となった。

お土産にもらった大量のサプリメントを嬉しそうに眺めているジェジュンをよそに、ヒチョルがシンドンを呼んだ。

 

「ヒチョルさん、すみません。本来なら僕がやらなければならない事を…」

 

「それはいいんです。でも本当にあなたがしなければならなかったのは、あの時、走るシーンは出来ないと監督に告げることでした。どれだけ偉い監督でも、こちらがどれだけ素人でも、タレントを守るのがあなた方マネージメントの仕事でしょう?あのままジェジュンを走らせるつもりでしたか?」

 

「返す言葉もありません。私は舞い上がっていて、きちんとジェジュン君を守れなかった。恥ずかしいです。でもこれからはこんなことはないと約束します」

「分かっていただけたらいいんです」

 

後ろからジェジュンののんきな声が聞こえた。

 

「ヒチョリ~すっごいサプリあるよ~40種類もビタミンが取れるんだってぇ~欲しい?」

「ばーか、それは俺がもらったんだから俺のなのー」

 

「ええーー!ずっりィ~チャンミンがこういうの好きだから~俺、持って帰るもーん。ユチョンにも飲ませなきゃ」

 

「甘いっ!」

 

ひょいと残りのサプリを取り上げられ、大きな口をあけているジェジュンを見てシンドンが笑った。

 

ジェジュン君…ごめんなさい。

これからは、俺がきちんと守るから…。

 

「シンドンさーん。ヒチョルの横暴を許していいんですか~怒ってやってくださーい」

「ははっ!さ、せっかくだから何か食べてから帰りましょう」

「え?シンドンさんの奢り?やったー!」

 

3人は笑いながら街を歩いた。

 

 

 

 

※※※

損害賠償、請求されなくてよかったね^^

ヒチョルがユノがいない間、ちゃんとジェジュンを守ってくれてます。ベンツのおかげか?

ってかユノ、早く出張から帰ってこい。

次回、ジェジュンのホスト時代のお話が垣間見えます。

 

(正直、こんな時に妄想小説書いてていいのかなぁと思ったりします。

でも、毎日楽しみにしてるよ、という声も頂き、頑張ることに。

8時だよ、全員集合スタイルを崩さないよう、これからも頑張ります^^

これからもヨロシクお願いします^^)