数日して、ユチョンが無事退院した。
ユチョンが家に戻ってくると、とたんに家が明るくなったような気がした。
ジェジュンもご機嫌で、たくさんごちそうを用意してユチョンを迎えた。
兄弟水入らずで過ごす食卓は久しぶりで、ユチョンが帰ってきたことで、3人で暮らす事、それがいかに幸せな事だったのかを思い直した。
恥ずかしそうに笑うユチョンと、花が綻ぶように微笑むジェジュン。
そんな二人がチャンミンを見てまた微笑む。
ずっとこのまま3人で暮らしたい。
僕の望みはそれだけなんだと、チャンミンは思った。
それから数日後、ジェジュンがチャンミンに言った。
「この間の…お前の友達の従兄って人と、連絡取れるか?」
「え?ユノヒョンですか?何でですか?」
「うん…。この前世話になったし、ユチョンの退院祝いに、呼べないかなって。モチロン、お前の友達のジュンス、だっけ?彼も呼んでさ」
「え?ジュンスも呼んでいいんですか?」
チャンミンの顔がパアッと明るくなる。
「うん。大した事は出来ないけど、俺、料理作るしさ…」
少し赤くなった顔を隠すように、頭をかきながら言うジェジュンは、チャンミンから見ても可愛かった。
「きっと喜んで来てくれると思います!さっそく連絡します!!」
その週末、ジュンスとユノがジェジュン達の家にやってきた。
「いらっしゃい!ユノ兄!ジュンス!」
チャンミンが出迎えると、二人は少し恥ずかしそうに家に入ってきた。
「君がジュンス?いつもチャンミンと仲良くしてくれてありがとう」
花のように微笑んだジェジュンを見て、ジュンスの顔がみるみる赤くなった。
「いっいえ…こちらこそ…」
「ふふっ今日はいっぱい料理用意したから、たくさん食べてね」
「はっはいっ…!」
「今日は呼んでくれてありがとう。これ後で、みんなで食べよう」
ユノが、最近話題の店のケーキを手土産に持ってきた。
「こちらこそ、この間はお世話になりました。あの時は俺…、生意気な態度とっちゃって…ごめんなさい」
ちょこんと下げたジェジュンの頭を、ユノがポンと優しく撫でた。
その時、ジェジュンの胸がドキッと音を立てた。
「はははっいいよ、そんな事。それよりいい匂いだな~。俺、結構楽しみにしてきたんだぜ?」
そう言いながら部屋に入るユノの長身の後姿、広い背中を見て、ジェジュンは胸の高鳴りを覚えていた。
なんでだろ…ドキドキする…。
ジュンスは明るくて素直な子のようで、すぐにユチョンとも打ち解け、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
あの特徴的な笑い声が聞こえると、なんだか可笑しくなり、つられてみんな笑った。
ジュンスはそこにいるだけで、周りを明るくする太陽のような子だと、ジェジュンは思った。
ジェジュンがキッチンで飲み物の用意をしていると、ユノがやってきた。
「何か、手伝おうか?」
「いいですよ。座っててください」
「もう、身体、大丈夫そうだな」
「えぇ。若いんで」
そういたずらっぽく笑ったジェジュンに、ユノの胸がキュンと鳴った。
可愛い……。
あれ?…なんだ…この感覚…。
「改めまして。ユチョン、退院おめでとう!!」
「…ありがとう。ジェジュン兄、チャンミン……。いっぱい迷惑かけちゃってごめん。そんで、ありがとう!」
「迷惑なんて思っていません。ユチョン兄が帰ってきてくれて本当に嬉しいです。本当に寂しかった!」
「ユチョンお帰り。元気になってくれて嬉しいよ。それだけでいいんだからな!」
「ありがとう二人とも」
3人が肩を寄せ合う姿を見て、ユノもジュンスも少し泣きそうになった。
それから全員でカンパイをして、拍手して、ユチョンの退院を喜び合った。
「さぁ~いっぱい用意したからね?お代わりもあるから、たくさん食べてね!!」
机いっぱいに並べられた料理はどれも本当に美味しくて。
特別な難しい料理はないが、そこにあるのはどれも、誰かを温かく迎える優しい料理だった。
ユノは久しぶりに食べた家庭の温かい料理に、胸がいっぱいになった。
5人でワイワイ騒ぎながら、笑いながら、にぎやかに食卓を囲む。
「こんな美味い料理、久しぶりだ…」
しみじみ言うユノの言葉に、ジェジュンが不思議そうな顔をする。
「大げさですよ。どれも普通の家庭料理だしー」
「ううん!ジェジュン兄の料理、僕のお母さんのより美味しいです!!」
ジュンスが大きな声で言った。
「ジュンスのお母さんの料理は知りませんけど、ジェジュン兄の料理は僕の自慢です」
「何言ってんだよ~チャミ~」
「いや、ほんっとお世辞抜きで、ジェジュン兄の料理は美味いっすよ。俺、病院食喰った時、死ぬかと思った。まず過ぎて…」
「病院食はそういうもんなの!ユチョンも大げさなんだから」
「いやホントに!俺、ずーっと当たり前だと思ってたけど、ジェジュン兄の料理は半端ねっすよ!」
「も、もういいっ」
皆に誉められて顔を赤くして、それを両腕で隠すしぐさが、なんとも可愛らしく、ユノはクスクス笑った。
「こんなにたくさん…大変だったろ?」
「料理は、子供の時からずっとやってたから。たくさん作るのも楽しいから好きだし…」
顔を赤らめたまま、恥ずかしそうに言うジェジュン。
あぁ…抱きしめたい。
何だ…?湧き上がるこの気持ち、この衝動。
ユノは、さっきから自分の中に湧き上がる、説明がつかない感情に驚いていた。
育ち盛りがいる男5人は、沢山あった料理もあっという間に食べつくした。
その間せっせとみんなの世話を焼き、食事が終われば、食器を片づけるジェジュン。
チャンミンはいつもの事と、さっさとそれを手伝った。
「チャンミン、ここはいいから、ジュンスとゲームでもしてこいよ」
「いいの?」
「うん。ユチョンも久しぶりにゲームしたいって言ってたよ」
わぁっと嬉しそうな顔をして、チャンミンが二人の元に急いで行った。
その姿は年相応で、ジェジュンはその後ろ姿を嬉しそうに見つめていた。
「じゃあ、俺が手伝うよ」
「いいの?ユノさんは、洗い物とかできなさそう…・」
「俺だって一人暮らし長いんだぜ?俺が洗うから、ジェジュンは片づけて」
二人で協力して食器を洗う。
まるで新婚みたいだと、ユノの顔がゆるむ。
「そう言えばユノさんって、ヒョヌ先生の知り合いなんですか?」
「あぁ、ヒョヌは高校時代の後輩なんだ」
「じゃあユノさんも頭が良かったんですね。今は建築家…でしたっけ?」
「あぁ」
「どんな建物とか作ったんですか?」
「駅前の第一ビルとか、最近ならハナ病院とかかな」
「え?ハナ病院?俺、その現場で働きましたよ?」
「え?仕事、してんのか?」
「いえ、週末だけ東方建設でバイトさせてもらってるんです」
「東方建設?俺、あそこの社長、よく知ってるよ」
「え?あの髭の?ホントですか?」
「あぁ、あの人口は悪いけど仕事はきっちりしてて、情に厚いんだよな」
「えぇ、ユチョンが入院した時、バイト急に休むことになってしまったのに、いいから弟の所にいてやれって言ってくれて。お見舞いにメロンくれて、チャンミンが食べちゃったけど…」
「ハハっ!さっきも見てたけど、チャンミンの食欲はすげーな」
「もう、胃がブラックホールです」
「あっはっは!」
あっという間に食器の片付けも終わり、このままもっと二人で話したいのにと、ジェジュンは思った。
最後の皿をユノがジェジュンに渡した時、ふっと指がジェジュンに触れた。
ドキッとした事を悟られない様、ユノが平然と微笑むと、癖なのか、ジェジュンが恥ずかしそうに上目づかいでぺろりと唇をなめた。
な…なんだこの可愛い生き物は…?
無意識でやってんのか……?この破壊力…!
楽しい時間はあっという間に過ぎて。
退院したばかりのユチョンの事もあるし、今日は帰る事にした。
また近いうち来る事を約束して。
「今日はありがとう。本当に美味かったよ」
「また来てください。ジュンスもね!」
「はいっ!ありがとうございます!じゃ、チャンミン、学校でな!」
「おう!またな!」
嬉しそうに自分に手を振るジュンスとユノ兄を見つめながら、今日は本当に楽しかったとチャンミンは思った。
※※※
初めて5人で一緒にご飯を食べました。
これがきっかけで、これから家族ぐるみの付き合いが始まります。
ジェジュンもユノも、お互いを意識し始めます。
まったくもどかしい二人です^^
また仕事で遠方に来ています。
お話はアップしておきますが、コメ返が遅くなると思います。
あーワタシの休みはいつ来るのだろう(>_<)