「…ぉ…い君…!…っかりしろ…!」

 

遠くで誰かの声がする。

 

「……ん……」

 

体が重い…。

 

鉛みたいに重くて指先すら動かすのが億劫だ。

ようやく重い瞼を引き上げると、そこに知らない人が心配そうに俺を見つめていた。

 

…誰……?

 

「大丈夫か?気分は?」

 

知らない男の人。

 

年は20代後半だろうか。

日に焼けた肌に短く切りそろえられた黒い短髪、きりりとした眉に、引きしまった顔つきが男らしい。

 

凛々しく端正な顔立ちでありながら、心配そうに自分を見つめる目はとても優しい。

白い歯が光って爽やかで、それにしても顔が小さい…。

 

そんなことを思っていると、ぼんやりとした頭が少しずつ覚醒してくる。

 

あぁ…俺、倒れたのか…。

 

重い身体に鞭打って必死に起き上がろうとすると、さっきの知らない男に止められる。

 

「まだ起きないほうがいい。先生呼んだから…ほら、横になって…」

 

ニッコリと笑いかける優しい微笑みに、なんだか泣きそうになる。

 

 

何だよ…こんな時に優しくなんてすんなよ…。

 

 

零れそうになった涙を隠すように、顔を反対側にそむけた。

 

「ジェジュン君?大丈夫か?」

そこにやってきたのは、ユチョンの担当医のヒョヌ先生。

 

「あぁ~…ジェジュン君、また採血したね?無理な採血はダメだってこの前言ったよね?君の体にも負担がかかるんだから…」

「…大丈夫です…」

 

「大丈夫って、実際倒れたでしょう?」

「大丈夫ですから…ユチョンには…言わないでください…」

 

「君が元気じゃなかったら、ユチョン君だって喜ばないだろう?」

 

「喜ばなくても、助かればそれでいいんです!」

 

ジェジュンは重い身体を起こして、ヒョヌを睨むように言った。

ヒョヌは、いつものように笑顔を絶やさず、長身の体をかがめてジェジュンと視線を合わせた。

 

「気持ちはわかるけど…しばらく採血は受け付けないから」

「そんなっ!先生!そんなことしたら…ユチョンがっ…!!」

 

急に大きな声を出したことで、体がふらつき座ったまま、ベッドから落ちそうになる。

 

「あぶないっ!」

 

ジェジュンを抱きかかえたのは、そこに所在無さげに立っていた、あの見知らぬ男だった。

 

「…っ」

 

思わず差し出された腕にしがみ付いた格好になったジェジュンだったが、体が思う様に動かない。

喘ぐように息をするジェジュンの背中を、男がそっと撫でた。

 

「大丈夫か?!ヒョヌ…患者を興奮させるなよ」

「すみません…。ユノヒョンは、ジェジュン君と知り合いなんですか?」

 

「いや…たまたま彼が倒れた時に遭遇して…」

「今日は?具合でも悪いんですか?」

「以前のクライアントの見舞いだ」

 

頭の上で交わされる会話をぼんやり聞きながら、やっと視界が定まってくる。

 

ジェジュンは、ゆっくりと自分を抱きかかえている腕を押しやった。

 

「大丈夫か?」

 

身体をかがめ、こちらを心配そうに伺い見るユノと呼ばれる男の優しい視線が、ジェジュンを否応なく不安にさせた。

 

 

やめて…そんなに優しい目、しないで…。

 

 

ジェジュンをゆっくりベッドに横たわらせると、ヒョヌ先生も優しく微笑みながら、ジェジュンに毛布を掛けた。

 

「まだ起きちゃだめだよ。しばらく休んで」

そう言って、ヒョヌ先生とユノと呼ばれる男の人は出て行った。

 

ジェジュンは重い身体をベッドに沈め、そのまま深い眠りに落ちて行った。

 

 

 

病院の廊下を歩きつつ、ユノは気になっていた事をヒョヌに尋ねた。

 

「あの子…どこか悪いのか?」

「ジェジュン君ですか?ただの貧血ですよ。ただ貧血が慢性化してるからちょっと危険ですね…」

 

「でも採血がどうとか…」

「あぁ、入院してる弟さんが僕の担当なんです。その弟の為にね。ちょっと特殊な血液なので…」

 

「弟が入院してるのか?特殊な血液って?」

「まぁ、そこは守秘義務だから。でも珍しいですね、ヒョンがそんなに誰かに興味持つなんて」

 

「そ、そうか?」

「ヒョンって、誰にでも優しいけど、あまり人には興味ないっていうか、無関心じゃないですか」

 

「随分な言われようだな」

「すみません。でもそうでしょ?誰にでも優しいって、誰の事もどうでもいいっていう…」

 

「お前、謝る気、ないだろ?」

「ははっ。でもあたってるでしょう?」

 

悪びれる様子もなく、屈託のない笑顔で言われてユノは怒る気も失せていた。

 

高校時代からの後輩だが、ヒョヌは優しい顔をして結構な毒を吐く。

医者という、命をやり取りする職場にいるからだろうか。

 

ヒョヌの洞察力は、いつも的を得ていて正確で、結局怒る気も失せ、納得している自分がいる。

迷った時には、こうやってスパッと切ってくれるヒョヌを、ユノは実は頼りにしていた。

 

「仕事、忙しいんですか?」

「まぁ…ぼちぼち」

「煮詰まってるんですね?」

「ぼちぼちって言わなかったか?俺」

 

「はぁ、それで飲みに行きたいと」

「…お前が行きたいんだな」

「もうすぐ終わるんで。待ってて下さい」

 

ヒョヌを待つため、病院のロビーでぼんやり座っていると、さっき倒れた彼がふらふらと歩いてきた。

大丈夫かよ…そう思いながら彼を見ていると、彼に駆け寄る見知った男子学生が目に入った。

 

あれは、…従弟のジュンスの友人で…確かチャンミンっていう子じゃなかったか。

年の割に落ち着いていて、とても頭がいい子だった事を覚えている。

 

「ジェジュンヒョン!」

「チャンミナ…なんでここに…」

 

倒れそうなジェジュンを抱きかかえるようにしてロビーの椅子へいざなう。

 

「何で連絡くれなかったんですか!さっきヒョヌ先生から連絡もらって…」

「チッ…ヒョヌ先生め……」

 

ジェジュンは忌々しそうに顔をしかめ、ぐったりと椅子に寄り掛かった。

 

「大丈夫だよ。ちょっとふらついただけ」

「倒れたって聞きました!だから採血もしばらくは止めてって言ったのに…」

 

「大丈夫だって。今日は…たまたま…」

「いいから、ここに座ってて!たまには僕の言う事聞いてくださいよ!お?会計してきますから!」

「…ハイ…スミマセン。あ、これ財布」

 

怒ったチャンミンが怖いのか、ジェジュンは大人しくいう事を聞いて、座っていた。

 

 

 

 

 

※※※

やっと出会いましたね。

ジェジュンとユノは10歳年が離れています。

大人のユノと高校生のジェジュン。

今回は歳の差があるユンジェです。

 

ジェジュンBrava×3発売、そして1位おめでとう!

今回もプロモーションに力入れてくれてますね。

アニメとのタイアップをして、新しい層のファンを掴む。

あの時期にカバーアルバム出して、いち早くMattoと共演させて。

MVにも話題になりそうな人を入れて、ワイドショーが取り上げる。

MVもお金かかってましたね。

日本での一枚目「Sign」のMV見たとき、金かかってねぇ~と思ったのはワタシだけではないはず。

事務所がかなり力を入れているのが分かって嬉しいです。

コロナの影響が仕事に出ないで欲しいけど。

こればっかりは難しいかな…。

皆さまも、気を付けてお過ごしください<(_ _)>