※当ブログに掲載されている小説の登場人物は、実際の人物、団体等と一切関係ございません。

 完全に作者の妄想小説であり、そういったものが苦手な方は読むことをお控えください。

 

 

◆◆◆

 

 

ユノがいなくなり、急に保健室が静かになった。

ジェジュンは寒気がし、本当に熱が上がっているのを感じた。

まずいな…今日はバイトなのに…。

そんなことを考えながら、寒気や頭痛と戦っていると、イ教諭が声をかけてきた。

 

「少し、職員室に行ってくるが…大丈夫か?」

優しい声だった。

ジェジュンはコクリとうなずき、イ教諭はすぐ戻ると、ジェジュンの頭をくしゃりと撫でた。

 

校庭で体育の授業があったのか、サッカーをする生徒たちの楽しげな声が聞こえてきた。

ベッドに横になった事で、少し寒気が治まってきて、代わりに眠気が襲ってきた。

微睡に身を任せて、うとうとした時だった。

ガラリと保健室のドアが開き、誰かが入ってきたのが分かった。

 

…先生、戻ってきたのかな………。

ジェジュンは、ぼんやりとする頭で考えながら、眠気に身を任せていた。

 

しばらくして、何か重いものが自分の体にのしかかり、同時に口を塞がれた。

 

「んんっ!!」

 

重みと苦しさに目を開けようとすると、両腕をつかまれ押し上げられる。

何が何だかわからないジェジュンの体を、誰かが押さえつけようとしている。

 

「ンー!!ンン―――っ!!!」

 

声を出そうにも、口を塞がれて息をするのがやっとだ。

やっとのことで動く体を必死に動かし、のしかかる大きなものから逃れようとするも、ものすごい力で押さえつけられ身動きが取れない。

 

「静かにしろっ…!」

 

抑えた声が耳に届く。

さらに暴れようとすると、首元を肘で押さえつけられ激しい痛みが走る。

 

いやだ…!

離せ…!

誰か……!

ユノ……!

 

声にならない声をあげ、必死にもがき抵抗する。

その度腕や体を強く押さえつけられ、痛みで涙がにじむ。

 

熱で動かない身体と体力のなさから力が入らない。

上にのしかかった男は、ジェジュンのシャツを捲し上げ、その体を手で撫でまわした。

 

い…やだ…っ!

 

必死の抵抗もむなしく、ついにはシャツを乱暴に開かれ、ボタンが飛び散る音がする。

自分の胸を、生暖かいぬめっとしたものがはい回る。

 

「んンーーーーッ!!」

 

ジェジュンはあまりの気持ち悪さに、身震いがし、やみくもに体を動かした。

口を押えられ息がしにくく酸素が足りない。

意識が飛びそうになり、それでも必死で抵抗する。

 

「動くなっ!!」

 

首を抑えられ、一瞬呼吸が止まり、目の前が真っ暗になる。

自分のベルトに手がかかり、外される感覚が分かる。

もう抵抗する力はない。

 

だめだ…もう……。

ユノ………!

 

ジェジュンの脳裏には、太陽のように笑ったユノの顔が浮かんでいた。

 

「何をしているっ!!」

 

大きな声とともに、身体がふっと軽くなる。

イ教諭が、ジェジュンの上にのしかかった生徒の首根っこを掴み、ジェジュンから引き剥がした。

朦朧とした意識の中、イ教諭の大きな背中が見えた。

 

助かった…そう思った時、ジェジュンの意識は途切れた…。

 

 

目を覚ますと、イ教諭がジェジュンの手首に包帯を巻いていた。

 

「…ん…」

「目、覚めたか。大丈夫か?どこか痛いところは…?」

 

低く優しい声がしみわたる。

 

「すまない、キムジェジュン。君を一人にすべきではなかった。私の責任だ」

 

じわじわとさっきの記憶が蘇り、身体がガタガタと震えだす。

 

「ぁ……俺…」

 

イ教諭は起き上がったジェジュンの震える身体をなだめるように、大きな手で摩った。

 

やっとはっきりしてきた意識に、ジェジュンは一生懸命気持ちを奮い立たせる。

 

そうか…俺…襲われ、たんだ……。

自分の身体を知らない手にまさぐられた事を思い出し、ぶるりと体が大きく震える。

 

「大丈夫…です…」

 

声が震えていて、気が付けば体のあちこちが痛かった。

 

「病院に行くか?」

「…いえ…。本当に…大丈夫です…」

「本当にすまない。私が悪いんだ」

 

イ教諭はそう言いながら、ジェジュンの肩を何度も撫でた。

 

「…ヒ、ヒチョリを…呼んで…くれませんか…」

「キムヒチョルか?…分かったそうしよう」

 

ボタンが飛んだシャツから、渡されたTシャツに着替えようと、シャツに手をかける。

身体中が痛んで、震える手が上手く動かせない。

両手を重ね、震えを止めようとするが、身体は余計に震えだした。

 

 

しばらくしてヒチョルが保健室に訪れた。

 

ベッドに座り、包帯をした手で口元を押さえながら、震え俯いているジェジュンがいた。

それを見て、ヒチョルはすべてを理解した。

 

ヒチョルはジェジュンの隣りに座ると、肩を抱き、背中をさすった。

着替えられないジェジュンのシャツを脱がせ、Tシャツを着せる。

 

「怖かったな…」

 

ヒチョルの言葉に、頷く事も出来ず震えるジェジュン。

ヒチョルは溜息をつくと、肩を抱く手に力を込めた。

 

 

がらっと保健室のドアが開き、ユノが顔をだした。

 

「ジェジューン、大丈夫…か……?」

 

俯いたジェジュンが、ヒチョルに肩を抱かれて、手には包帯も巻かれている。

重苦しい空気に、何かがあった事を理解する。

 

「あ…あの…ジェジュン?どうした?」

 

ユノの声を聞き、ジェジュンが顔を上げる。

涙目の目に、手には包帯、ベッドの下には脱ぎ捨てられたシャツが落ちていた。

 

「ジェジュン?どうした?何かあったのか?」

 

ジェジュンにユノが駆け寄ると、ジェジュンの身体が大きく震えだした。

 

「ユ…ノ…」

 

それを見たヒチョルが、背中にジェジュンを隠すように後ろ手でジェジュンを抱きしめる。

ユノは訳が分からないまま、駆け寄る足を止め、ただ茫然とそこに立っていた。

 

「ジェジュン…どうしたんだよ?何があったんだよ!」

 

言葉にならないジェジュンは、ヒチョルの背中にしがみつく。

ヒチョルは、大きなため息をつくと、ユノに向かって言った。

 

「おまえ、今日外泊できるか?」

「え?」

「今日、こいつんとこ泊まってくれないか」

「は、はい」

 

「ヒチョ…!」

訴えかけるような目のジェジュンに、ヒチョルが小声で言った。

「お前、今日バイトだろ?俺が何とかしとくから、今日は休めよ」

 

ヒチョルは、イ教諭に車を出すよう頼み、ジェジュンの前にしゃがみこんだ。

 

「ジェジュン、お前、今日はもう帰れ。チョンユノが一緒にいるから、な?」

「ヒチョリ…」

「今のお前には、チョンユノが一緒にいた方がいい」

「ヒチョリ、は…?」

「俺はやることがある。お前は何も考えずに、ゆっくり眠るんだ。いいな…?」

 

ヒチョルが優しい声で囁きながら、ジェジュンの髪をすく。

さらさらと癖のない髪がヒチョルの指から零れ、やっとジェジュンは小さく頷いた。

 

にっと笑ったヒチョルは、ユノに近づき言った。

「イ教諭に送ってもらえ。あとで俺もいくから。こいつの事、頼めるか?」

「は、はい。もちろんです。でもいったい何が…」

 

ヒチョルは、ユノにそっと耳打ちし、さっきあった出来事を簡単に説明した。

ユノは体中の血が逆流した気がした。

 

「っ!いったい誰がっ!」

「知ってどーする」

「っ!教えてください!!」

「知ったらお前、そいつボコボコにするだろ?んな事したら、空手出来なくなるぞ。その事は、イ教諭と俺に任せろ。お前はジェジュンについといてやれ」

 

嫌だと喰い下がりたかったが、ベッドで震えるジェジュンを一人にしてはいけないと思った。

 

※※※

ゆっの背骨折って良し。ワタシが許す。