※当ブログに掲載されている小説の登場人物は、実際の人物、団体等と一切関係ございません。
完全に作者の妄想小説であり、そういったものが苦手な方は読むことをお控えください。
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ユノがいなくなり、急に保健室が静かになった。
ジェジュンは寒気がし、本当に熱が上がっているのを感じた。
まずいな…今日はバイトなのに…。
そんなことを考えながら、寒気や頭痛と戦っていると、イ教諭が声をかけてきた。
「少し、職員室に行ってくるが…大丈夫か?」
優しい声だった。
ジェジュンはコクリとうなずき、イ教諭はすぐ戻ると、ジェジュンの頭をくしゃりと撫でた。
校庭で体育の授業があったのか、サッカーをする生徒たちの楽しげな声が聞こえてきた。
ベッドに横になった事で、少し寒気が治まってきて、代わりに眠気が襲ってきた。
微睡に身を任せて、うとうとした時だった。
ガラリと保健室のドアが開き、誰かが入ってきたのが分かった。
…先生、戻ってきたのかな………。
ジェジュンは、ぼんやりとする頭で考えながら、眠気に身を任せていた。
しばらくして、何か重いものが自分の体にのしかかり、同時に口を塞がれた。
「んんっ!!」
重みと苦しさに目を開けようとすると、両腕をつかまれ押し上げられる。
何が何だかわからないジェジュンの体を、誰かが押さえつけようとしている。
「ンー!!ンン―――っ!!!」
声を出そうにも、口を塞がれて息をするのがやっとだ。
やっとのことで動く体を必死に動かし、のしかかる大きなものから逃れようとするも、ものすごい力で押さえつけられ身動きが取れない。
「静かにしろっ…!」
抑えた声が耳に届く。
さらに暴れようとすると、首元を肘で押さえつけられ激しい痛みが走る。
いやだ…!
離せ…!
誰か……!
ユノ……!
声にならない声をあげ、必死にもがき抵抗する。
その度腕や体を強く押さえつけられ、痛みで涙がにじむ。
熱で動かない身体と体力のなさから力が入らない。
上にのしかかった男は、ジェジュンのシャツを捲し上げ、その体を手で撫でまわした。
い…やだ…っ!
必死の抵抗もむなしく、ついにはシャツを乱暴に開かれ、ボタンが飛び散る音がする。
自分の胸を、生暖かいぬめっとしたものがはい回る。
「んンーーーーッ!!」
ジェジュンはあまりの気持ち悪さに、身震いがし、やみくもに体を動かした。
口を押えられ息がしにくく酸素が足りない。
意識が飛びそうになり、それでも必死で抵抗する。
「動くなっ!!」
首を抑えられ、一瞬呼吸が止まり、目の前が真っ暗になる。
自分のベルトに手がかかり、外される感覚が分かる。
もう抵抗する力はない。
だめだ…もう……。
ユノ………!
ジェジュンの脳裏には、太陽のように笑ったユノの顔が浮かんでいた。
「何をしているっ!!」
大きな声とともに、身体がふっと軽くなる。
イ教諭が、ジェジュンの上にのしかかった生徒の首根っこを掴み、ジェジュンから引き剥がした。
朦朧とした意識の中、イ教諭の大きな背中が見えた。
助かった…そう思った時、ジェジュンの意識は途切れた…。
目を覚ますと、イ教諭がジェジュンの手首に包帯を巻いていた。
「…ん…」
「目、覚めたか。大丈夫か?どこか痛いところは…?」
低く優しい声がしみわたる。
「すまない、キムジェジュン。君を一人にすべきではなかった。私の責任だ」
じわじわとさっきの記憶が蘇り、身体がガタガタと震えだす。
「ぁ……俺…」
イ教諭は起き上がったジェジュンの震える身体をなだめるように、大きな手で摩った。
やっとはっきりしてきた意識に、ジェジュンは一生懸命気持ちを奮い立たせる。
そうか…俺…襲われ、たんだ……。
自分の身体を知らない手にまさぐられた事を思い出し、ぶるりと体が大きく震える。
「大丈夫…です…」
声が震えていて、気が付けば体のあちこちが痛かった。
「病院に行くか?」
「…いえ…。本当に…大丈夫です…」
「本当にすまない。私が悪いんだ」
イ教諭はそう言いながら、ジェジュンの肩を何度も撫でた。
「…ヒ、ヒチョリを…呼んで…くれませんか…」
「キムヒチョルか?…分かったそうしよう」
ボタンが飛んだシャツから、渡されたTシャツに着替えようと、シャツに手をかける。
身体中が痛んで、震える手が上手く動かせない。
両手を重ね、震えを止めようとするが、身体は余計に震えだした。
しばらくしてヒチョルが保健室に訪れた。
ベッドに座り、包帯をした手で口元を押さえながら、震え俯いているジェジュンがいた。
それを見て、ヒチョルはすべてを理解した。
ヒチョルはジェジュンの隣りに座ると、肩を抱き、背中をさすった。
着替えられないジェジュンのシャツを脱がせ、Tシャツを着せる。
「怖かったな…」
ヒチョルの言葉に、頷く事も出来ず震えるジェジュン。
ヒチョルは溜息をつくと、肩を抱く手に力を込めた。
がらっと保健室のドアが開き、ユノが顔をだした。
「ジェジューン、大丈夫…か……?」
俯いたジェジュンが、ヒチョルに肩を抱かれて、手には包帯も巻かれている。
重苦しい空気に、何かがあった事を理解する。
「あ…あの…ジェジュン?どうした?」
ユノの声を聞き、ジェジュンが顔を上げる。
涙目の目に、手には包帯、ベッドの下には脱ぎ捨てられたシャツが落ちていた。
「ジェジュン?どうした?何かあったのか?」
ジェジュンにユノが駆け寄ると、ジェジュンの身体が大きく震えだした。
「ユ…ノ…」
それを見たヒチョルが、背中にジェジュンを隠すように後ろ手でジェジュンを抱きしめる。
ユノは訳が分からないまま、駆け寄る足を止め、ただ茫然とそこに立っていた。
「ジェジュン…どうしたんだよ?何があったんだよ!」
言葉にならないジェジュンは、ヒチョルの背中にしがみつく。
ヒチョルは、大きなため息をつくと、ユノに向かって言った。
「おまえ、今日外泊できるか?」
「え?」
「今日、こいつんとこ泊まってくれないか」
「は、はい」
「ヒチョ…!」
訴えかけるような目のジェジュンに、ヒチョルが小声で言った。
「お前、今日バイトだろ?俺が何とかしとくから、今日は休めよ」
ヒチョルは、イ教諭に車を出すよう頼み、ジェジュンの前にしゃがみこんだ。
「ジェジュン、お前、今日はもう帰れ。チョンユノが一緒にいるから、な?」
「ヒチョリ…」
「今のお前には、チョンユノが一緒にいた方がいい」
「ヒチョリ、は…?」
「俺はやることがある。お前は何も考えずに、ゆっくり眠るんだ。いいな…?」
ヒチョルが優しい声で囁きながら、ジェジュンの髪をすく。
さらさらと癖のない髪がヒチョルの指から零れ、やっとジェジュンは小さく頷いた。
にっと笑ったヒチョルは、ユノに近づき言った。
「イ教諭に送ってもらえ。あとで俺もいくから。こいつの事、頼めるか?」
「は、はい。もちろんです。でもいったい何が…」
ヒチョルは、ユノにそっと耳打ちし、さっきあった出来事を簡単に説明した。
ユノは体中の血が逆流した気がした。
「っ!いったい誰がっ!」
「知ってどーする」
「っ!教えてください!!」
「知ったらお前、そいつボコボコにするだろ?んな事したら、空手出来なくなるぞ。その事は、イ教諭と俺に任せろ。お前はジェジュンについといてやれ」
嫌だと喰い下がりたかったが、ベッドで震えるジェジュンを一人にしてはいけないと思った。
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ゆっの背骨折って良し。ワタシが許す。