このお話しは笹の葉いちごの体験話しです。


「車椅子の警備員」

私はアパレル関係の仕事をしていました。田舎の
ある百貨店で婦人服を販売する仕事です。

その日は、遅番で店長がレジを閉め私はお店の片付けをしていました。
店長が売り上げ金をいつもの金庫へと持って行き、私は新米だったためお店のモップ掛けを任されていました。
お客様がいない百貨店は、ただの大きな箱です。
電気もポツポツとしかついてなく
もちろん音楽など消えているので、「しーん」と静まり返っています。
(あんなに昼間騒がしかったのに、すごい静かだなぁ)
とそんな事を考えながらモップを一生懸命掛けていると、店長が戻ってきました。
「さっ、帰りましょ」
と店長。
私はまだモップが終わってない事を告げると
店長は子どもが待ってるから、と私に言い残しさっさと帰って行きました。
10分くらいたったでしょうか
モップが終わり、私も帰る準備をしてお店を後にしました。
従業員の出入り口は、警備室を必ず通らないといけない決まりで入った時間、出る時間を帳簿に記入しなければいけません。


いつも通りの薄暗い道。食品コーナーを右へ左へと曲がって行きます。
飲料コーナーに差し掛かった時でした。
誰かが前から来ます。
私は従業員だと思い、普通に前へ進んで行きました。
「⁈」
「警備員?…」
少し立ち止まり前からくる人を眺めました。
…警備員でした。
帽子と服はちゃんと警備員のを着用していました。
が…
下を向いたままゆっくりゆっくりと車椅子を押してます。
(あれ?あんな警備員いたかなぁ?)
私は、お疲れ様ですと挨拶しなければと頭ではわかっていたのですが
とっさに
(まずい‼︎‼︎)
と脳が判断したのでしょうか、運よく左へ曲がる通路が目の前にあったので
逃げるようにしてその場を後にしました。
小走りで警備室を出て、家路へと帰りました。

夜、よく考えました。
(警備員は確か5人)
毎日ローテーションで警備をしてるみたいで
警備員の顔は頭には入っていました。
(新しく入ったのかな?)


次の日、私はいつも通り仕事を終え
警備室の前に退勤時間を書いていました。
警備員の顔を見ると、少し話しやすい警備員だったので私は聞きました。
「あの〜
新しく警備員さん入ってこられたんですかぁ?」
「いいえ。誰も入ってませんよ。」
と警備員。
「そうですか。」
と私。
「どうかしました?」
と警備員。
「いえ、昨日車椅子に乗ってる警備員さんをみたんですよ…」
「車椅子?そんな警備員はいませんよ。
だいたい警備員が車椅子に乗って仕事できないでしょ〜」
あっなるほど、なるほど
と私。
「本当に見たんですよ…
車椅子に乗ってる警備員…」
私が言うと、その警備員
「…僕、何回も見てますよ…」
と警備員…