タイトルの通りである。
先日、4本とも見事に存在している内の1本の親知らずを抜歯した。
何故抜歯に至ったか、時は遡る事2年ほど前、無駄に並びのいい私の歯に歯石が鎮座しているのでそれを除去してもらいに歯医者に向かった。
歯医者に行ったのなんて何年振りだろうか、定期的なメンテナンスをしてもらいたいのもありレントゲンやら問診やらを済ませつつ歯科医の先生に「貴女歯磨き下手くそですね」と、実際はオブラートにきっちり包んだこんな感じのお小言を頂きながら歯石を除去してもらっている最中だった。
先生「左の親知らずがねぇ、見えてますねぇ」
私様「左下ですよね。なんか最近ちょっと顔出してきたんですよね~。でもレントゲン見た感じ変な生え方してないからだいじょうb──」
先生「抜きましょう」
私様「あっ、あぁっ……」
先生「うん、抜きましょう」
私様「……あの、変な生え方、してませんよね」
先生「そうですねぇ、真っすぐ上向いてますし」
私様「あのっ、変な生え方してなければ別に抜かなくても大丈夫って聞いたんですけど」
先生「抜きましょう。僕はね、親知らずは健康な歯としてカウントしていませんので」
私様「……あっ、あっ」
親知らずの抜歯は痛いと散々聞く、正直いつかこうなる日が来ると思っていた。先生はもうさも当たり前のように豪快に言いなさるが私の心の中は抜歯への恐怖で支配されてしまった。
ぶっちゃけ自慢だが私は歯並びは割ときれいな方だし虫歯なんてこの方1回もできた事がない。歯磨きが下手くそな事以外は歯の健康に関しては自信があったのだ。しかし健康なのが災いしてか親知らずまで産声を上げてしまっていた。こんな所まで健康にならなくていいんだよボケカスがよと己の口の中を呪った。
しかしよくよく先生から話を聞いてみるとその時はまだ全然顔を出していないので抜くにはリスクが高いとの事、ならもうちょっと顔を出すまで待って抜く方が安全だろうという事で急を要する事にはならず、胸を撫で下ろした。
私様「……って事はぶっちゃけこのまま放置しておいても」
先生「抜きましょう」
私様「……はい」
先生、笑顔で死の宣告使わんといてくださいな。それはFFと初代チョコボレーシングだけでいいんですよ。
とりあえずその日はなんとかなった。が、結局その親知らずが後々少しずつ悪さをするようになったのでいよいよ去年の10月に再度先生に診てもらう事になった。
私様「なんか歯肉が痛んだりするんですよね……」
先生「うーん、大分顔出してきたしもう抜いちゃいましょうか。やっぱりねこのままのペースだと同じように歯肉が炎症起こして同じことになりますよ」
私様「……抜きます」
先生「よし、それじゃあね。口腔外科に紹介状書きますのでね」
私様「……はい」
普通歯医者で抜いてもらうんじゃない?と思った方も多いだろうが、それは特殊な生え方等してない限りの話らしい。具体的に言えば横向きに生えていたり歯茎に完全に埋まっている状態だったり、まぁ兎に角すぽーんと引っこ抜いてはい終わり!じゃない案件以外は口腔外科だそう。
私の場合は生え方に問題はないが、なんせ根本が神経に近いらしくて少し難しいとの事。ふーんそんなものかと思いつつ、紹介状を約半年近くおねんねさせた3月末に私は口腔外科へと向かった。
先生「なるほどねぇ」
私様「……」
先生「ちょっとドリルで削る必要がありますね」
私様「なんやと」
あぁ、よくアニメの虫歯恐怖表現で出てくるあのドリル。あれを経験する日が来るなんて思わなかったさ。
けれど口腔外科を受診した段階でもう逃げる事は出来ないので抜歯の日の予約を入れ、新居への引っ越しや諸々のインフラの手続きやクソ汚いアパートの片づけに追われつつも先週抜いてきましたよ。
えぇ、抜いてきました。
まず麻酔がクソ痛かった。それだけなら我慢できるが垂れてきた麻酔の液がまぁクソ苦い、リカちゃん人形の靴やスイッチのソフトも苦いらしいがきっとそれ以上だろう。香りが甘いから味も甘いだろうと調子こいてバニラビーンズを直接口にした時のような衝撃だった。
しかも悲しい事に持続型の苦味だった。うがいをしても苦味が治まらない、麻酔は痛みを無くしても苦味は無くしてくれなかった。悲しい現実だ。しかも麻酔には興奮作用があるらしくて勝手に身体が震えるし上手くしゃべれなくなる。
麻酔で親知らず周辺の感覚がなくなった頃に私の目の上にタオルが被せられた。こうして視界は塞がれ視覚からの情報がシャットダウンされる。一体何をされるんだろうと恐怖に震えていたら突如親知らずを強く押された。
そこからは、何があったのかよく覚えていない。
はっきりとわかるのはドリルの駆動音、歯を通して直接響いてくるドリルの衝撃、いつ終わるのかなとぼんやり考えている最中に微妙に女優、内田有紀のようなオーラをまとっている歯科助手の「歯が抜けましたよ」の声で現実に戻ったのは覚えている。お前いつ抜けたんや。
そしてガーゼが私の口に突っ込まれた「噛んでくださいね~」の指示通り私はガーゼを噛んで待つことになる。あれだけ恐怖におののいていたのに意外とあっさり抜けた事に少し拍子抜けしたのは秘密。
そして縫合処置が始まった。生まれてこの方縫合を伴うような怪我をした事や手術等したことがなかったのでこれも初めての経験である。何針縫ったかはわからんが終わった後にまたガーゼを噛まされ、さぁどんな親知らずが抜けたんだとテーブルの上に置いてあるのを目にした時に事件が起こる。
麻酔が、おそらく、切れた。
ジンジンずきずきと響く患部。その痛みに身を捩らせ、手をぐっぱさせ、もう少しで終わりだからと自分を鼓舞させながらガーゼを噛み続けた。多分時間にして5分は経ったであろうか。内田有紀(仮)がガーゼを抜き私の口内を見た。
内田有紀(仮)「うーん、まだ出血あるようです」
先生「もう少し縫いましょうか」
私様「」
……麻酔が切れてる状態での縫合は正直クソ痛いのでギブして再度麻酔を打ってもらった。流石に死ぬ。どうやら抜歯時の出血量が結構多かったらしい。
というわけで初めての親知らず抜歯が終わった。飲み忘れ厳禁の抗生物質と皆大好きロキソニンを処方して貰い、歯医者に縫合抜糸の予約を入れて帰路につく。
抜歯後の痛みは結構しんどかったがロキソニンが効きまくったのでそこはなんとかなった。安心したので、夕方に司法書士さんから届く荷物の受け取りをすっかり忘れてすっぽかすという大罪をやらかしてしまったが今年のコナンの映画を観に行った。
翌日の事だ。鏡を見ると顔がアホみたいに腫れていた。
マジでこんなんなってた。あまりに面白いので自撮りして友人に送ったら「電車の中で笑わすな」と怒られた。
腫れるとは聞いていたがここまで腫れるんかへ~と思っていたのだが
なんか会社で話を聞くと
「そこまで腫れてるの初めて見た」
「突いていい?」
「俺横向きの抜歯したけどそんなにはならんかったよ」
「腫れすぎじゃない?」
「突きたい」
「顔変形しとるやん」
「ちょっとだけでいいから突かせて」
私様「突かないでマジで死ぬから」
突きたいと言ってるのは同一人物、人の心がない。
風船じゃないんだからやめなさいよ。
初めての抜歯だから勝手が知らんけれどもなんというか割と大変な抜歯だったような気がしてきた。
これがもし横向きに生えていたりしたらもっと大変だったのだろうかと今になって思う。
いや大変な事には変わりないか。
何故なら抜歯した日から4日経った今現在までこれの所為で固形物を食えないでいるんだ。
固形物が食べたい、もうおかゆを噛まずに飲み込むのもつらいのだ。右だけで噛めばいい話だが嚙むという行為で縫合箇所にダメージが入る、正直言うと喋る事すら結構億劫だ。縫合箇所の付近がちょっと裂けててチクチク痛むし痒いのも結構なストレスである。
今週金曜日に抜糸だからそれまでの辛抱だ。固形物が食べられるようになったら……おいしいものが食べたい。
「なんで連休前に抜歯したんですか」
私様「……確かに」
とどのつまりアホである。
