はむばね、商業作家10周年記念企画!
大・リメイクお蔵出し祭り! 前夜祭!
どうも、はむばねです。
はい、というわけでね!
10年もやってると、種々の理由により「書いたはいいものの世に出なかった作品」というものが存在します!
そんな、誰の目にも触れることなくひっそりと眠り続ける作品たちが!
10年選手となった作者自身の手によってリメイクされ、今、ついに世に放たれる!
本日はその予告編として、全お蔵出し作品のなんちゃってダイジェストをお送りするよ!
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まずは1本目!
真の意味ではむばねさん初のオリジナル作品、そして初の長編作品!
後に『死と少女と口づけと』として改稿する前の作品だ!
幻の処女作、『君に幸せを』!
――不景気が続く昨今。
「あの……それって、噂のリストラってやつですか?」
「そうだな」
「……おかしくないですか?」
「……そうかもね」
男の言葉に、上司は自信なさげに頷く。
「だって、魔界ですよ!? なんでリストラとかあるんですか!」
「…………そうなんだけどね」
――(株)魔界 人間界事業部 魂回収課。
――平社員、ディル。
「う~ん……まぁ、決まったことだし」
若干適当気味に呟く。最初こそシリアスにやろうとしていたが、ぶっちゃけ飽きてきたのである。
「あ! 部長、他人事だと思って!」
「記念すベき一人目のリストラなわけだし? もっと喜べ」
実際他人事な部長は、もうそろそろ終わらせたいらしい。
「喜べるわけないでしょうが! 何の記念ですか!」
「別にリストラされたからって死ぬわけじゃなし。問題ないだろ」
「いや、確かにそうですけど……リストラされた悪魔って、何すりゃいいんですか!」
「とりあえず、リストラされた社員は人間界行くことになってるらしいから。まぁ、頑張ってくれたまえ」
やたらと爽やかな笑顔を浮かべ、部長は机に付いているスイッチを押した。瞬間、男の足下に大きな穴が開く。何らかの強制力が働いているらしく、少しも動けないまま穴に落ちていく。
「いつの間にこんな仕掛け作ったんですかぁぁぁぁぁぁぁ……」
――悪魔、クビになりました。
「天使さん……」
「……は?」
小さく少女が呟く。心なしか、その目はキラキラしているように見える。
「天使さんですね!」
「はぁ!?」
突如、少女のキラキラが大爆発。その目は、今やお星様で構成されていると言っても過言ではない。男の手をとり、ピョンピョンと飛び跳ねる。
「天使さん! やっぱりいたんですね! 私、ずっと信じてました!」
「お、おい! 何言ってんだ?」
「ようやく会えましたね! 天使さん! 天使さん! 天使さん!」
「ちょ……ちょっと待て!」
少女の手を振り解き、男はもう一度大きく溜め息をついた。
「いいか? なんか知らんが、お前は大きな勘違いをしている」
「?」
「俺は、悪魔……じゃねぇのか? リストラされた悪魔って何て名乗りゃあいいんだろ……? まぁいいや。とにかく、少なくとも天使ではない」
「…………………………」
「わかったか?」
男の言葉に、キョトンとする少女。だが、その表情は一瞬で笑顔に戻った。
「あ、自己紹介がまだでしたね」
「話聞いてなかったのかよ!」
――地上に落とされたリストラ悪魔、ディルが出会ったのは人間の少女。
「は? なんでそこで俺に振るんだよ」
「いや、匂いとかでわかんないかなぁと思いまして」
「俺は犬か!」
「あ、封筒には僕の匂いが付いてるはずだから、それを追ってもらえば……」
名案とばかりに襟木が手を打つ。円花もまた、「なるほど!」などと言っている。が、当然悪魔の嗅覚は人間並みである。
「できねぇって言ってんだろうが!」
「できないんですか?」
「できねぇよ!」
「天使さんなのに?」
「天使じゃないし! 天使でもできないし!」
「う~ん、それは困りました……」
――『アルティメット天然ボケ』を装備する人助けマニア、歩く『小さな親切命の危険』、白羽円花だった。
「いやいや、ごもっともや。本名言うわけにはいかんけど……一応、カプタインて名乗ってます。長いから、カプでえぇよ。一応、殺し屋さんとかやってます」
「……トウガラシの辛味成分か?」
「そらカプサイシンや。ホンマは、昔の微妙に偉い人の名前らしいけど。組織が勝手に付けた名前やから、詳しくは知らんわ」
ははは、と軽い調子で笑う。こんな場面でなければ、とてもじゃないが殺し屋などには見えないだろう。
「で、兄さんの名前は?」
「ディルだ。一応言っとくが、本名だ」
「あや、外人さんやったん?」
「まぁ、外人と言えば外人かな」
「へぇ~。私、神様って初めて見ましたよ」
「普通の人間はそうだろ」
「そうなんですか?」
「普通、神とか霊とか悪魔とかってのは、人間に姿見せないようにするもんなんだよ」
「……でも、ディルさんもおじいさんも、ちゃんと見えてますよ?」
確かに、ディルも老人もはっきりと姿が見えている。いきなり現れた老人はともかく、ディルなどは今日だけでかなりの人間に目撃されている。
「……俺はリストラされたから」
「ワシの姿は、かわいいお嬢ちゃんには見えるんじゃよ」
ディルが沈んだ口調で、老人が軽い口調で答える。
「オイ、何だそりゃ。神がそんなにホイホイ姿見せていいのかよ」
「リストラされた悪魔に言われたくはないわい」
「…………………………」
「僕、自殺なんてした覚えないけど?」
「あれ? もしかして、また間違えちゃいました?」
「さっき、そこから飛び降りただろうが!」
「あぁ、あれね」
今思い出したように、ポンと手を打つ。ただし、顔はボーっとした無表情のまま。
「別に自殺しようとしてたわけじゃないよ」
「いや、どう見たって自殺だろ」
「違う。実験」
「実験?」
「こんぐらいの高さのビルから飛び降りて、人は死ぬのかどうか」
淡々とした無表情だが、なぜか真が本気でそう思っていたらしいことは伝わった。やはり不思議な少年だ。
「……死んだらどうするつもりだったんだ?」
「その時は、人は死ぬとどうなるのか、を確かめようと思ってた」
「…………………………」
「あ、あの、お名前を」
「ディルだ」
質問に、素早く答える。
「名乗る程の者じゃありません」などという趣味もないし、それが解放への最短ルートだと判断したからだ。できるだけ関わり合いになりたくはなかったのだが、秋乃の質問は次々と続いていく。
「ご趣味は?」
「読書」
「お歳は?」
「忘れた」
「ご職業は?」
「(元)悪魔」
「好きな食べ物は?」
「卵料理とか」
「好きな音楽は?」
「聖歌とかは嫌いだ」
「スリーサイズは?」
「いや、知らんし」
「好みのタイプは?」
「……常識人?」
「あ、どうでしたか? 目覚ましに般若心経セットしてみたんですけど」
「いいわけねぇだろ!」
「う~ん、やっぱり天使さんには合いませんでしたか……」
「人間でも気分悪いわ!」
「でも、この本に書いてあるんですよ? 般若心経で目覚めることで、目覚めスッキリな感じで、気分も爽快っぽくて、二日酔いにも効くような効かないような、って」
ずい、と本を目の前に突き出す。タイトルは、『宗教で健康?』と書かれていた。
「なんだそりゃ……」
「結構ためになることが書いてあるんですよ。マグネシウムと一緒に摂取するとカルシウムの吸収がよくなるとか、カテキンを摂るとガンになりにくい、とか。」
「宗教関係ないし! むしろ凄い科学的!」
「宗教で健康『?』ですから」
「そんな自分を疑問視してるような本捨てちまえ!」
――殺し屋、神様、一般人。
――出会う、様々な人(?)々。
「と、いうわけで。『嬢ちゃん護衛部隊』第一回定期連絡会を始めたいと思います」
議長役を務める、そこはかとなく楽しそうなカプ。
「…………………………」
相変わらず寝ぼけ眼の(実際に寝ぼけているわけではない)真。
「先生、質問があるんですが」
そして、今挙手した秋乃。
以上三名が、この会議室にいる全員である。
「あっきー、何や?」
「何が『と、いうわけ』なのか、さっぱりわかりません」
『あっきー』とは、もちろん秋乃のことだ。ちなみに、真のことは『まこぴー』だ。
「おいおい、あっきー。仮にも神無砂希の生徒やったら、一を聞いて十がわからんなんあかんで」
「まだ一すら聞いてません!」
「ワイも詳しいことはよう知らんねんけど……なんか、嬢ちゃんには日本くらいなら滅ぼす力があるらしいわ」
「……ギャグか?」
「いや、マジで」
「アホか! あいつがそんな大それたことできるわけねぇだろ!」
「まぁ、確かにワイもそう思うけどね」
「……僕が、神様になったのはね」
宏太が、少し口調を改める。
「最後まで、見届けたかったからなんだ。姉ちゃんにもらったこの命で、姉ちゃんの全てを見届けたかった」
「……あいつの魂が砕けてないこと、知ってたのか?」
「ううん。でも、昔から姉ちゃんって丈夫だから」
「はは、そうだな」
――そして、過去の因縁。
「さよなら、です」
涙を流しながら、でも笑顔で言う。場違いにも、素直に綺麗だと思った。
「もし……もし生まれ変わることができたら、今度はもっと長く一緒にいたいですね」
――果たして、今度も。
「ありがとうございます。私、とっても楽しかったです。とっても……幸せでしたよ」
それは、とても美しくて。
カプも、同性である秋乃も、襟木でさえも見とれていた。光がどんどん強くなっていく。白く染まる世界の中で、なぜか円花の笑顔だけがはっきりと見えた。
「幸せでしたよ」
――あるいは、今度こそ。
(お前にゃシリアスは似合わねぇんだよ。だから……ずっと笑っとけ)
――彼女を、救うことはできるのか。
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続いて2本目!
雪魔氏との悪ふざけが加速し、実際一本分書いてしまった一作!
地味にスターシステム(?)を採用しており、実は全既刊(続刊もののみ)には本作への伏線が込められてたりするぞ!
悪ふざけが生み出した奇作、『チャリンコ・デッド』!
――高原茶太郎。
ご近所で。
幼馴染で。
今年は、三年ぶりに同じクラスで。
そして、たぶん。
(私は、あいつが好きだった)
ご近所で。
幼馴染で。
今年は、三年ぶりに同じクラスの。
そんなあいつの葬式で、なぜだか涙は出なかった。
周りに、沢山泣いている人はいたけれど。
その人たちよりも、あいつを大切に思っていなかったわけはないはずなのに。
なぜだか、涙は出なかった。
なぜだか?
理由は、なんとなくだけどわかる気がした。
まだ、信じられなかったから。
あいつがこの世から消えたなんて思えなかったから。
今も隣で、妙に気の抜けた顔で笑っている気がしたから。
だから、涙は出ないのだろう。
――享年、17歳。
そして、実際。
”そいつ”はそこに、いたりする。
――幽霊に、なりました。
「つーか俺、別に死亡フラグとか立ってなかったじゃん! 『俺……この仕事が終わったらあの子に告白するんだ……』とか言ってなかったじゃん! なのになんで死ぬんだよ! それともアレか、仕事終わったら食べようと思って冷凍庫にアイスしまっといたのが悪かったのか!」
「あ! の!」
「……ん?」
語調をかなり強くしたところで、ようやく男性の目が茶太郎の方を向いた。
「おや、君は? って、なんで浮いて……なんか透けてるし……?」
茶太郎の姿を認識して、男性の顔が強張っていく。
「出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 幽霊!?」
「いや、あなたも今はそうですよ」
「あぁそういえばそうだった」
「いやぁ、ありがとう。君のおかげでこれからの幽霊ライフに希望が見えだよ」
「はぁ。幽霊ライフにそんなポジティブさはいるんでしょうか」
「いやいや、人間たとえ死んだとしてもポジティブさは忘れちゃいけないよね。なんていうか、第二の人生的な気分で」
「逆に、そんなネガティブな第二の人生も嫌な気もしますが……それはともかく。あなたは、まだ正確には死んではいないんじゃ?」
「? どゆこと?」
――幽霊になった茶太郎が出会ったのは、自転車で事故って幽体離脱した雪間さん。
「両親は既に他界してましたんで、そういう意味では不幸中の幸いだったってところですかね」
「ほぇー、幽霊二日目にして悟ってんねー」
雪間氏は感心したように数度頷いた後、ふと。
「あぁ、けどさ。そんだったら、なんで幽霊になってんの?」
「……え?」
言っている意味を理解できず……いや、半ば理解したからこそか。
茶太郎は答えに窮した。
雪間氏は、そんな茶太郎の様子には気付かない。
「いやだってさー、よくわかんないけど幽霊ってこの世に未練とかがあるからなるんしょ? 茶ーちんも何かそういうのあるんじゃないの?」
「あー……うん、えと……何、だろう……?」
顎に指を当て、茶太郎は考え込む。
「うん? なんだ、自分でもわかってないの?」
茶太郎の様子に、雪間氏は不思議そうな顔。
「そう……ですね」
――未練がないはずの自分が、幽霊になったのはなぜなのか?
――その答えを探すため。
「茶ーちん、もしかして……」
「すみません、戻り方がわからなくなったみたいです」
「やっぱり!?」
「もしかして怒ってます? じゃあ、ちょっと可愛く謝ってみますんでそれで許してくださいね」
「いや別に怒ってないけど可愛くって何!? それ心からいらないよ!?」
「えーっと」と、何かを思い出すように少し上の方に目を向けてから、茶太郎(体は雪間氏)は。
「すみません、戻り方がわからなくなったみたいです。テヘッ☆」
ウインクと共に少し舌を出し、軽く自分のこめかみを小突いた。
「ちょっと、人の体で何してくれちゃってんの!?」
「どうです? 僕なんかは、倫子がこれをやるとバカバカしくなってすぐ許しちゃったりしたもんですけど」
「いやそれは知らないけど! 自分の体でそんなことやられてもキモいだけだから! むしろ今のちょっとイラッときたよ!」
――幽体離脱な誰かさんを、戻すため奔走してみたり。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ! ブーストォォォォォォォォォォォ!」
説明しよう、ブーストとは!
雪間氏が持つ三十二のチャリンコ技の一つである!
ペダル漕ぐ力を最大限に、最大回転数を叩き出すことにより、最大速力を出すことができるようになるのだ!
つまりはただの全力疾走だ!
「ちょぉぉぉぉぉ! あんま揺らすなや! データが吹っ飛ぶじゃろがい!」
「いや、元々データを消すのが目的なんだからいいんじゃない?」
「ばっきゃろい! このデータは……いや、この子らはな……儂が、一〇年に渡って大切に大切に育て上げたもんや……消すにしても、ちゃんと供養してやらな可哀想じゃろがい!」
「エロ画像データだけどね」
「なんか後ろですっごいやる気削がれる会話が流れてる気がするぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
――組の裏切り者に殺された、若頭のエロ画像消去に奔走してみたり。
「あらあら、せっかく最後に神の一手が見えたと思ったのにねぇ……」
「マジっすか! 先生、是非最後にその一手だけは打って逝きましょう!」
「でもね、死んじゃったショックなのか、どんな手だったのか忘れちゃったのよねぇ……」
「もっかい頭打ったら思い出したりしませんかね!?」
「いや、まず今の身体にもう一発打撃与えたら今後こそ致命傷じゃない?」
「だったら俺の身体に入って俺の身体で頭を打つがいい!」
――女流棋士の、最後の一手を打つため奔走してみたり。
「誰か……頼む……この、ディスクを……」
震える手で、廣島氏ディスクを見えない誰かに向かって差し出す。
「……わかった、僕が必ず」
聞こえたはずはないだろうに。
しかし、茶太郎がそう言うと廣島氏はどこか安心したように笑って意識を手放した。
「んじゃ俺、身体に戻ってディスク受け取るねっと」
「……雪間さん」
「ん?」
少し硬い茶太郎の声に、雪間氏が振り返る。
「これは……もしかすると、本当に危険な事かもしれません」
「はは、今まで危険じゃなかったことなんてあったっけ?」
――瀕死の雑誌記者が、命がけて託したディスクを配達してみたり。
「オゥ、アナタはナニか知っていそうデスネー」
「僕らが、見えるの?」
「イェース、オフコース! そっちのアナタは、まだ死んではないようですネー」
「まぁ、幽体離脱状態ってやつ?」
「そうデスネー。ナウ、デッド寸前デスけどネー」
「マジで!?」
「あと一分以内に戻らないと死にます」
「マジで!?」
「冗談デース」
HAHAHA、とアメリカンな感じで男性は笑う。
「一分二秒は猶予がありマース」
「ほぼ誤差の範囲だ!? ていうかさっきめっちゃ流暢に日本語で喋ってたよね!?」
「冗談デース」
HAHAHA、とアメリカンな感じで男性は笑う。
「……で」
男性が、サングラスをずらして上目遣いに茶太郎たちを見る。
「ナニを見たのか、教えてくれマスネ?」
ふざけた口調とは裏腹に、その目は剣呑な光を帯びていた。
――そんな中、漂ってくる事件の香り。
「もう……嫌だよ……どうして私の周りの人ばっかり、こんなに……」
――巻き込まれる幼なじみを救うため、奔走し。
「あぁ……わかったよ、雪間さん。僕の未練。とても簡単なことだったんだ」
――そして。
「なんだか未来が明るく見えるようになった……って言ったら変ですかね? あぁそうか。人間たとえ死んだとてポジティブさを忘れちゃいけないんですよね」
――やけに明るい、幽霊少年と。
「私は、あいつが好きだった」
――幼なじみの、少女と。
「任せな! いつもニコニコ指定時間通りにキッチリ配達、運送会社ハッピースカイ! 雪間、出勤します!」
――やけに幽体離脱する、青年と。
「いくぜ、耐えてくれよスーパーノーマル号! うおぉぉぉぉぉぉ! バーストォォォォォォォ!」
――チャリンコと。
「茶太郎!」
「さよなら、倫子」
――間抜けなメンツでお届けする、間抜けで……ちょっとだけ切ない、とある死後の物語。
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さぁさぁ張り切って3本目!
某サークルの何かのイベントの時に出した短編だ!
何かのイベントに出てるんだったらお蔵入りしてねぇじゃねーか! まぁ気にすんな!
そういえば地味にはむばねさん初のオリジナル短編(というかショートショート)小説、『非公式活動団体オカルト部』!
「昔から、勇者とオカルト好きには不法侵入が許されると決まっているものよ」
――傍若無人な部長と。
「はぁ。どんなのなんスか? 部長のことですし、今更単に人格やら格好やらがおかしいってわけでもないんでしょ?」
――やる気なさげな副部長。
「まさか、そんだけッスか?」
「それだけと言えばそれだけね。ただ、彼女は本当に魔女の真似事をしていたらしいの。生前に作り出された物が、今でもこの館の中にあるらしいわ」
「ちょっとちょっと、まさかそれをパクってこうって話じゃ……」
「失礼ね。私がそんなことをすると思って?」
思ってます。とは、殴られたくなかったので言わなかった。
――たった二人の部活動(非公式)、非公式活動団体オカルト部
「結城君、そんなところで寝てないでさっさと行くわよ」
「部長~、ツンだけじゃなくデレも見せてくんないとただのSっすよぉ……」
フラフラになりつつも立ち上がりながら、結城はそう言う。部長は特にそれに返事は返さず、プイと進行方向に向き直った。だが結城からは顔が見えなくなったところで、部長は少しだけ相好を崩す。
「ま、本気で言ってくれてるならそれはそれで……」
「はぇ? 部長、なんか言いました?」
小さい部長の呟きは、結城に聞こえど聞き取れない。崩した相好をさっさと無表情に戻し、部長は結城に少しだけ振り返る。
「なんでもないわ。デレの部分よ」
――今日も二人で、活動(主に不法侵入)やってます。
「この世には、やっちゃいけないことが二つある」
一歩一歩、恐怖を植えつけるように結城は踏み出していく。
「一つは、部長を傷つけること」
魔女の前に、結城が立つ。
「そしてもう一つは……」
魔女の目がいよいよ恐怖に見開かれ。
「チャーハンの上にコチュジャンを乗せることだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「そっち後者にしたらマズくない!?」
「まぁ、彼には惚れ薬なんて使う必要ないものね」
「……どういう意味かしら?」
そう答えた部長に、魔女の笑いはさらに深まる。
「まさか、本気でそう言ってるわけじゃないでしょう?」
「…………どういう意味かしら?」
再び、部長はそう回答。魔女は、クスクス笑いながら棚へと向かう。
そこから一つのビンを取り出し、部長に渡しながら。
「まぁ、ツンもほどほどにしてたまにはデレっとしなさいってことよ」
――そんな彼らの活動記録、ちょっとだけ覗いていきませんか?
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そろそろダレてきたかな? 私はダレてきたよ、4本目!
最早経緯すらも明かせねぇ!
ひっそり裏で書いて、ひっそり裏でお蔵入りになったある意味問題作!
地味に人生最高速度(5日)で完成させました、『魔王、攫います』!
――勇者の剣が魔王を貫き。
――その日、人類は魔族の脅威から解放された。
「……私を、笑いにでも来たか?」
どこか胡乱な目で勇者を見、魔王は掠れる声でそう言った。
「そうして欲しかったらするけど、どうする?」
勇者はイタズラっぽく笑う。
「好きにすればいいだろう。魔界では勝者が絶対だ」
「そ? じゃ、ちょっと笑ってみるね」
コホン、と勇者は一つ咳払い。
「あはははははははは!」
魔王を指さして笑い始めた。
「ひゃははははははは!」
笑う。
「でひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
薄暗い牢内に、バカでかく響く笑い声。
「うははははははは!」
「……」
笑い続ける勇者を、魔王は視線も逸らさずじっと見ていた。
「……楽しいか?」
「いや別に」
――囚われの身になった魔王様。
「俺は、君を無理矢理にでも脱獄させる。いざとなれば、ここでやり合ってでもね」
手が差し出される。
「でも、できれば同意して来てほしいな。その方が手間が省ける」
「……ふん」
その手を見て、魔王は鼻を鳴らした。
「脱獄を強要されるとは、聞いたこともない話だ。それも、私を牢にぶち込んだ本人からとはな」
間に流れる空気は張り詰めている。
「だがまぁ」
ふっと、空気が緩む。
「先程お前が言った通り、今の私ではお前に逆らうことは出来まいよ」
不満げではある。あるが。
「脱獄でもなんでも、好きにすればいい」
魔王は勇者の手をとった。
――勇者様に、攫われました。
「……私は、謝罪するつもりはないぞ」
「ん?」
唐突な言葉に、スナフは疑問符と共にラナリスを見た。
「あぁ……いや」
その表情に、何のことかを察したのだろう。しかし、スナフの雰囲気は変わらない。
「別に、謝ってもらう必要なんてないさ。お互い自分の信じる道を進んで、その結果ぶつかった。それだけの話だから」
「戦っていた頃は、お前のことを直情タイプのパワーバカかと思っていたのだがな」
クク、とラナリスは小バカにするように笑う。
「失礼な。当時から割とトリッキーな頭脳戦をしてたでしょうが」
「そもそも、魔王軍相手に単身で戦いを挑んだりする人間が器用なタイプだなどと思うものか」
「……なるほど、それはそうかもね」
肩をすくめてから、今度はスナフがニヤリと笑った。
「でも、確かに俺も君のことを見誤ってたよ。クールになんでも完璧にこなすのかと思いきや、意外とからかいがいがある」
「放っておけ」
「とりあえず、こんだけ魔力込めた即死魔法。普通の人だったら使用者まで死ぬよ」
「……なるほど」
ラナリスはあっさり納得した。
「売り物にする魔石にも、向き不向きがあるということだな」
「厳密に言うとそういうことじゃないけど、めんどいからもうそういうことでいいよ」
スナフがやる気なさげにうなづく。
「ま、とにかく。そんなわけだから、込めるのは回復魔法や解毒魔法など、人に優しいものにするように」
「心得た」
――勇者スナフと魔王ラナリス。
――かつて正対した二人が、同じ方を向いているという奇妙な旅路。
「ねぇ、どうしてそんなに結着を急ごうとするの?」
ラナリスが構えていても、スナフは無防備に前進してくる。
「そんなもの、一刻も早く終わらせたいからに決まっている」
結果、ラナリスが下がらざるをえない。
「何を? この旅を?」
スナフはほほえんでいた。
「何のために?」
それは表面上優しい微笑であるはずなのに、ラナリスはなぜかそこに寒気を感じた。
「自由になるため? だったら、君はなぜさっさと逃げない? 例えば、今日なんて隙だらけだったろう?」
「だから終わらせてほしいのかい? もう一度俺に、今度こそ確実に」
「黙れっ!」
今度は意図した……あるいは、それ以上の声が出た。
「お前こそ何なのだ!」
スナフの方を見上げる。
「なぜ私を牢から出した! なぜ私を殺さない! なぜ……」
スナフは、微笑んでその視線を受け止めていた。
「なぜ私の心に踏み入ろうとする!」
――スナフがラナリスを連れ出したわけは。
「スナフ・コールタット、か……」
口に出してその名を呟く。様々な感情が胸に去来する。
「私の計画を終わらせた男」
恨みは、もちろんある。それは幼い頃から抱いてきたラナリスの悲願とでも言うべいものだったし、恐らくはスナフがいなければ達成できていただろうとも思う。
「終わらせて、くれた男」
だが同時に、感謝の念のようなものを感じているのも事実だ。
「そして……」
「君の顔に、迷いが見て取れたから」
ラナリスの目が、細まった。
「迷い、か……」
「うん、だから倒した。止めてほしそうに見えたから」
「そうか」
短く返事し、ラナリスは考えるように黙り込んだ。
「そうだな。確かにあの頃、私は迷っていたのかもしれない」
――ラナリスは、それをどう受け止めるのか。
「我々が侵攻した土地も、徐々に人間界に取り返されているらしいからな。勝手を承知で言うが、やはり魔族の皆には少しでもいい土地を残してやりたい。そのためには、人間に魔族を恐れてもらう必要がある。ま、最後に一花咲かせるさ」
冗談めかし、スナフを見習ってあくまで軽い調子で言う。
「なんて私が言うところまで、当然お前はお見通しなのだろう?」
「もちろん」
あっさりスナフは頷いた。
「そして、君の決意が何をしようと変わらないことも知ってる」
スナフが一歩踏み出す。
「だから、これはただのお見送り」
――世界は、それはどう受け止めて。
「なんと、いうことをする……」
周りから、うめき声のような批難が漏れる。
「お前を助けようとした少女だろう!」
「……クク」
できるだけ酷薄に、『魔王』らしく見えるよう。ラナリスは、笑う。
「だから? この状況では、最早利用価値もないだろう」
四方八方に、ラナリスは杖を振り回し魔法を放った。どうせ周りは全て敵だ、問題ない。
「クハハ、愚か愚か! どいつもこいつも、私が少し本性を隠せばすぐに騙される! だから貴様ら人間はクズなのだ!」
――そして。
「すまないな」
未だナイフに手をかけているスナフに、ラナリスは穏やかな声で言う。
「こんな役割を、させてしまって」
――二人の、決着は。
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ようやくラストだ、5本目!
校了直前、まさかの発売前にレーベル消滅!
ついに私の力もここまできたか……と厨二病的セリフを私に呟かせた象徴作!
何気に初の中編(?)でもあります、『カミサマと少女』!
――それは、カミサマが少女のために創ったセカイ。
セカイは、見渡す限りのサバクだ。
前後左右どこを見ても、砂砂砂。
ソラは青く青く、地平線の向こうまで広がる。
そんなセカイにも、一つだけ例外があった。
ポツンと佇む一軒の家。
――セカイには、たった3つだけの存在がありました。
「カミサマ~!」
全速力で駆ける少女。
走りながら、少女は肩に掛けた黄色い園児カバンを器用にまさぐる。
そうして、少女とカミサマの距離が一メートル程にまで縮まった頃。
「しねー!」
カバンから取り出した無骨なバタフライナイフを両手で握り、カミサマの胸に突き立てた。
突進の勢いを殺さず、己の体重も乗せた見事な突きだった。
「はっはっは!」
ナイフが到達する直前、カミサマは半身を捻ってその切っ先を躱した。通り過ぎるようとする少女の手を取り、そのまま回転しながら抱き上げる。
「またしななかったー!」
ケタケタ笑いながら、少女はカミサマの硬い胸に頬を摺り寄せた。
「このセカイが砂だからけなのは?」
「カミサマがぜんぶ、ぶっこわしたから!」
元気よく手を上げた少女が答えた。
「このセカイに、他に人がいないのは?」
「カミサマがぜんいん、ぶっころしたから!」
引き続き、元気よく。
「はっはっは、その通り! お前のパパもママもご近所さんも、カミサマが全て滅ぼしたのだ!」
言って、カミサマは少女を再び抱き上げた。そのまま、勢い良く上空に放り投げる。軽く十メートルは飛んだ上空で、少女はキャッキャと笑う。
落下した少女は足、膝、腰、背中、腕、と衝撃を殺しながら着地した。
「はい、しつもん!」
そのまま、クルンと回転して立ち上がる。
そして、少女は再び元気よく手を挙げた。
「パパ、ママ、ってなーに?」
「お前が一番大好きで、お前のことが一番大好きな人のことだな!」
「カミサマのことー?」
「はっはっは、愚か者め! カミサマはパパでもママでもない! なぜならば、カミサマはお前にとって憎むべき敵なのだから!」
「いいか嬢ちゃん。確かにオレぁ嬢ちゃんのトモダチとして創られたが、誰とでもすぐに慣れ合う安いトリじゃねぇ」
「こうきゅうとりにく?」
頭を押さえたまま、目の端に涙を浮かべた少女が首を傾ける。
「肉でもねぇ」
少女に背を向け、顔だけ振り向く形でトモダチは目をキラリと光らせた。
「嬢ちゃん。オレに釣り合う、いい女になりな」
「うん、わかったー!」
涙を拭って、少女は元気よく頷いた。
「てい!」
そして、トモダチに向けてナイフを突き立てる。
「うぉ!?」
間一髪、トモダチはスッテプでナイフを躱した。
「こ、殺す気か!」
「え?」
少女が、目をパチクリさせる。そして、ニコリと笑った。
「そうだよー」
「穢れ無き笑顔!」
――少女と。
――トモダチと。
――カミサマと。
――たった、3つだけ。
「ハイ!」
白いブラウスに紺色スカートの少女が、元気よく手を挙げた。おかっぱの髪が、サラリと揺れる。
「nがむげんだいの時、式は0から1のてーせきぶんに直せるので、答えはlog2です!」
「おぅ、正解だ」
黒板の前で羽ばたくトモダチが、教鞭を加えたまま器用に喋っていた。
「そんじゃ数学はここまでで、次は社会にすっか」
「えー!?」
途端、少女の表情が不満に染まる。
「もっとすーがくがいい! それか、りか!」
「相変わらず理数系が好きだな、相棒よ」
「うん! だって、カミサマをぶっ殺すちょーへーきを作るのに必要だから!」
「カッパさんだ!」
「お嬢さん、確かに僕はカッパさんですが、人様を指差すのはいただけませんね。人様っつーか、カッパさんですけど」
「はい、ごめんなさい!」
カッパの指摘に、少女は素直に手を引っ込めた。
「つーか、なんでカッパがウミにいんだよ……」
少女の足の裏に止まったトモダチが、胡乱げな目を向ける。
「はぁ!?」
ギロンと、カッパがトモダチを睨む。
「カッパがウミにいて何が悪いんですか? ウミカッパ差別ですか? そういうのは良くないと思います! ウミにいようが川にいようが、カッパはカッパです!」
「いや、カッパは普通に川にいるもんだろ。つーかなんだウミカッパって」
「そんなことは百も承知ですけど!?」
叫んだ後、カッパはブワッと目尻に涙を溜めた。
「そりゃ僕だって、川があるんなら川に出現しますよ! だってそれがカッパの在り方だもの! でもウミしかないんだから仕方ないじゃないですか! 水繋がりってことで納得するしかないじゃないですか! それをなんですか貴方は、人の傷を抉るように! そんなに哀れなカッパが滑稽ですか!?」
「お、おぅ、そうか。なんかすまんかった」
程なくして、セカイは夕暮れに包まれる。
「お嬢さんは眠ったようですね」
「あぁ」
このセカイは、少女のためだけに存在する。
だから、少女が眠ればこのセカイは夕暮れを経て夜に移るのだった。
「カミサマ、質問をしてもよろしいでしょうか?」
カミサマに問いかけるカッパの口調は、淡々として抑揚がない。カッパのくせにやけに変化していた表情も、今はすっかり鳴りを潜めている。
「君が知らないということは、君が知らなくていいということだよ」
こちらも先ほどまでは異なる全く抑揚のない声で、カミサマ。
「左様ですか」
それっきり、カッパは何も言わなかった。
そして、セカイには今日も夜が訪れた。
――少女のために作られたセカイで。
――少女は、成長していきます。
――カミサマを、コロすため。
「選ばれし者、この世に導かれし時より四三八〇の夜に魅入られし後、秘められし力に目覚める……聖典に書かれた、約束されし未来の一つだ」
「られし事多いな……ってか、聖典ってあれか?」
少女がチラリと動かした視線を追って、トモダチも本棚を見た。
「旧時代の……漫画、って言ったか? ありゃ、作者の創作だろ?」
「フッ、愚かな……斯様に表面上でしか物事を読み取れぬ者に、私の力を推し量ることは出来まい」
薄く笑って、少女は机の上に置いてあった眼帯を右目に付けた。
「ん……? なんだ、怪我でもしたのか……」
「そうではない……これは、私の力を封印する『カギ』……」
恍惚とした表情で、少女は右目の眼帯を撫でる。
「おい、マジでどうしたんだ相棒よ……」
「クク……残念ながら、私は君が知る『相棒』ではない……」
「……どういうことだ?」
動揺するトモダチに、少女は笑みを深めた。
「私の名は、深淵の闇。カミをコロすモノ。覚えておくといい」
「お、おぅ」
「貰った。十六歳の誕生日プレゼントだと」
棒を咥えたまま、少女は器用に喋る。
「おいおい、ちょっと早すぎるんじゃないか? 煙草は二十歳になってからだろ」
「そんな、とっくに滅んだ国の法律なんて関係ないだろ?」
「そういう問題じゃなくて、体に害があるって話だよ。特に成長期に煙草吸うなんざご法度だってーのに、何考えてんだよカミサマは……」
「反抗期には煙草くらい必要、なんだとさ」
興味なさげに応えながら、少女は手を止めない。粉の調合は終わったらしく、それを金属製の器に移していく。
「……ところでそれ、何作ってるんだ?」
「手榴弾」
事も無げに答える。
「じゃあそれ火薬!? 最も煙草吸いながらやっちゃダメな作業だろ!」
「なに、思春期にありがちなことだ。時間が解決してくれる」
「知った風に。オレらにゃ、そういうのは真の意味じゃわかんねーだろうが」
「これでも、それなりに長いこと人類を見てきたのだ。経験は無くとも、理解は出来る」
「ケッ、そりゃご立派なこって」
「先程言った通りだ」
トモダチの悪態を気にする風もなく、カミサマは続ける。
「終幕にはまだ少々早い。けれどあくまで、少々だ。もう、遠い先ではない」
軒先でしたのと同じように、肩をすくめた。
――少女は、成長していきます。
――より、美しく。
――より、賢く。
――より、強く。
「おはよ、カミサマ」
ただニコリと笑って、少女が迎える。
「我がガガガガガムスメヨヨヨヨヨ」
返事するカミサマの頭が、ガガガと揺れていた。
トモダチが一瞬目を細める。
「なんでカミサマ、今日はラップかい?」
しかし、すぐにいつもの面倒臭げな調子に戻って問うた。
「うむ、我はろっくゆえにな」
――そして。
セカイは静寂に包まれていた。
十数年前には当たり前だった光景。
しかし、今やそれが妙に寂しく少女の瞳に映る。
「そっかー、今日は二十歳の誕生日かー」
納得したように、少女が呟く。その呟きも、空虚に消えていった。
「トモダチは、消えないんだね」
頭の上に載るトモダチの喉を撫でる。出会った当初はそれだけで少女の頭はグラグラと揺れたものだが、今はもう何ともない。
「オレはあいつらと違って、完全に独立した存在として創られてるからな」
――セカイは、終わります。
「じゃあ、お礼を一つちょうだい?」
「なんだ、いつになく欲張りだな」
カミサマも、声に小さく笑いを混ぜる。
「最後だ、何でも言うが良い。もっとも、何を言われたところで我に用意出来るのは偽物だか作り物だかしかないがな」
「違うよ。これは正真正銘、偽物でも作り物でもない、カミサマがくれる本物」
――だから。
「善は急げって言うでしょ?」
声が震えているのは新しい世界への期待からで、鼻をグズグズいわせているのは慣れない空気がむず痒いから。
地面が濡れているのは、きっとお天気雨だ。
目が濡れているのも、同じ理由。
「それに」
痛い事があっても辛い事があっても泣かない、強い少女なのだった。
そう、カミサマに望まれたのだから。
「そにれさ」
だから、泣いてなどいないのだった。
――世界を。
「お別れじゃないもの」
――始めましょう。
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coming soon...
さて。
念のため、貼っときますね。
* *
* + うそです
n ∧_∧ n
+ (ヨ(* ´∀`)E)
Y Y *
大・リメイクお蔵出し祭り! 前夜祭!
どうも、はむばねです。
はい、というわけでね!
10年もやってると、種々の理由により「書いたはいいものの世に出なかった作品」というものが存在します!
そんな、誰の目にも触れることなくひっそりと眠り続ける作品たちが!
10年選手となった作者自身の手によってリメイクされ、今、ついに世に放たれる!
本日はその予告編として、全お蔵出し作品のなんちゃってダイジェストをお送りするよ!
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まずは1本目!
真の意味ではむばねさん初のオリジナル作品、そして初の長編作品!
後に『死と少女と口づけと』として改稿する前の作品だ!
幻の処女作、『君に幸せを』!
――不景気が続く昨今。
「あの……それって、噂のリストラってやつですか?」
「そうだな」
「……おかしくないですか?」
「……そうかもね」
男の言葉に、上司は自信なさげに頷く。
「だって、魔界ですよ!? なんでリストラとかあるんですか!」
「…………そうなんだけどね」
――(株)魔界 人間界事業部 魂回収課。
――平社員、ディル。
「う~ん……まぁ、決まったことだし」
若干適当気味に呟く。最初こそシリアスにやろうとしていたが、ぶっちゃけ飽きてきたのである。
「あ! 部長、他人事だと思って!」
「記念すベき一人目のリストラなわけだし? もっと喜べ」
実際他人事な部長は、もうそろそろ終わらせたいらしい。
「喜べるわけないでしょうが! 何の記念ですか!」
「別にリストラされたからって死ぬわけじゃなし。問題ないだろ」
「いや、確かにそうですけど……リストラされた悪魔って、何すりゃいいんですか!」
「とりあえず、リストラされた社員は人間界行くことになってるらしいから。まぁ、頑張ってくれたまえ」
やたらと爽やかな笑顔を浮かべ、部長は机に付いているスイッチを押した。瞬間、男の足下に大きな穴が開く。何らかの強制力が働いているらしく、少しも動けないまま穴に落ちていく。
「いつの間にこんな仕掛け作ったんですかぁぁぁぁぁぁぁ……」
――悪魔、クビになりました。
「天使さん……」
「……は?」
小さく少女が呟く。心なしか、その目はキラキラしているように見える。
「天使さんですね!」
「はぁ!?」
突如、少女のキラキラが大爆発。その目は、今やお星様で構成されていると言っても過言ではない。男の手をとり、ピョンピョンと飛び跳ねる。
「天使さん! やっぱりいたんですね! 私、ずっと信じてました!」
「お、おい! 何言ってんだ?」
「ようやく会えましたね! 天使さん! 天使さん! 天使さん!」
「ちょ……ちょっと待て!」
少女の手を振り解き、男はもう一度大きく溜め息をついた。
「いいか? なんか知らんが、お前は大きな勘違いをしている」
「?」
「俺は、悪魔……じゃねぇのか? リストラされた悪魔って何て名乗りゃあいいんだろ……? まぁいいや。とにかく、少なくとも天使ではない」
「…………………………」
「わかったか?」
男の言葉に、キョトンとする少女。だが、その表情は一瞬で笑顔に戻った。
「あ、自己紹介がまだでしたね」
「話聞いてなかったのかよ!」
――地上に落とされたリストラ悪魔、ディルが出会ったのは人間の少女。
「は? なんでそこで俺に振るんだよ」
「いや、匂いとかでわかんないかなぁと思いまして」
「俺は犬か!」
「あ、封筒には僕の匂いが付いてるはずだから、それを追ってもらえば……」
名案とばかりに襟木が手を打つ。円花もまた、「なるほど!」などと言っている。が、当然悪魔の嗅覚は人間並みである。
「できねぇって言ってんだろうが!」
「できないんですか?」
「できねぇよ!」
「天使さんなのに?」
「天使じゃないし! 天使でもできないし!」
「う~ん、それは困りました……」
――『アルティメット天然ボケ』を装備する人助けマニア、歩く『小さな親切命の危険』、白羽円花だった。
「いやいや、ごもっともや。本名言うわけにはいかんけど……一応、カプタインて名乗ってます。長いから、カプでえぇよ。一応、殺し屋さんとかやってます」
「……トウガラシの辛味成分か?」
「そらカプサイシンや。ホンマは、昔の微妙に偉い人の名前らしいけど。組織が勝手に付けた名前やから、詳しくは知らんわ」
ははは、と軽い調子で笑う。こんな場面でなければ、とてもじゃないが殺し屋などには見えないだろう。
「で、兄さんの名前は?」
「ディルだ。一応言っとくが、本名だ」
「あや、外人さんやったん?」
「まぁ、外人と言えば外人かな」
「へぇ~。私、神様って初めて見ましたよ」
「普通の人間はそうだろ」
「そうなんですか?」
「普通、神とか霊とか悪魔とかってのは、人間に姿見せないようにするもんなんだよ」
「……でも、ディルさんもおじいさんも、ちゃんと見えてますよ?」
確かに、ディルも老人もはっきりと姿が見えている。いきなり現れた老人はともかく、ディルなどは今日だけでかなりの人間に目撃されている。
「……俺はリストラされたから」
「ワシの姿は、かわいいお嬢ちゃんには見えるんじゃよ」
ディルが沈んだ口調で、老人が軽い口調で答える。
「オイ、何だそりゃ。神がそんなにホイホイ姿見せていいのかよ」
「リストラされた悪魔に言われたくはないわい」
「…………………………」
「僕、自殺なんてした覚えないけど?」
「あれ? もしかして、また間違えちゃいました?」
「さっき、そこから飛び降りただろうが!」
「あぁ、あれね」
今思い出したように、ポンと手を打つ。ただし、顔はボーっとした無表情のまま。
「別に自殺しようとしてたわけじゃないよ」
「いや、どう見たって自殺だろ」
「違う。実験」
「実験?」
「こんぐらいの高さのビルから飛び降りて、人は死ぬのかどうか」
淡々とした無表情だが、なぜか真が本気でそう思っていたらしいことは伝わった。やはり不思議な少年だ。
「……死んだらどうするつもりだったんだ?」
「その時は、人は死ぬとどうなるのか、を確かめようと思ってた」
「…………………………」
「あ、あの、お名前を」
「ディルだ」
質問に、素早く答える。
「名乗る程の者じゃありません」などという趣味もないし、それが解放への最短ルートだと判断したからだ。できるだけ関わり合いになりたくはなかったのだが、秋乃の質問は次々と続いていく。
「ご趣味は?」
「読書」
「お歳は?」
「忘れた」
「ご職業は?」
「(元)悪魔」
「好きな食べ物は?」
「卵料理とか」
「好きな音楽は?」
「聖歌とかは嫌いだ」
「スリーサイズは?」
「いや、知らんし」
「好みのタイプは?」
「……常識人?」
「あ、どうでしたか? 目覚ましに般若心経セットしてみたんですけど」
「いいわけねぇだろ!」
「う~ん、やっぱり天使さんには合いませんでしたか……」
「人間でも気分悪いわ!」
「でも、この本に書いてあるんですよ? 般若心経で目覚めることで、目覚めスッキリな感じで、気分も爽快っぽくて、二日酔いにも効くような効かないような、って」
ずい、と本を目の前に突き出す。タイトルは、『宗教で健康?』と書かれていた。
「なんだそりゃ……」
「結構ためになることが書いてあるんですよ。マグネシウムと一緒に摂取するとカルシウムの吸収がよくなるとか、カテキンを摂るとガンになりにくい、とか。」
「宗教関係ないし! むしろ凄い科学的!」
「宗教で健康『?』ですから」
「そんな自分を疑問視してるような本捨てちまえ!」
――殺し屋、神様、一般人。
――出会う、様々な人(?)々。
「と、いうわけで。『嬢ちゃん護衛部隊』第一回定期連絡会を始めたいと思います」
議長役を務める、そこはかとなく楽しそうなカプ。
「…………………………」
相変わらず寝ぼけ眼の(実際に寝ぼけているわけではない)真。
「先生、質問があるんですが」
そして、今挙手した秋乃。
以上三名が、この会議室にいる全員である。
「あっきー、何や?」
「何が『と、いうわけ』なのか、さっぱりわかりません」
『あっきー』とは、もちろん秋乃のことだ。ちなみに、真のことは『まこぴー』だ。
「おいおい、あっきー。仮にも神無砂希の生徒やったら、一を聞いて十がわからんなんあかんで」
「まだ一すら聞いてません!」
「ワイも詳しいことはよう知らんねんけど……なんか、嬢ちゃんには日本くらいなら滅ぼす力があるらしいわ」
「……ギャグか?」
「いや、マジで」
「アホか! あいつがそんな大それたことできるわけねぇだろ!」
「まぁ、確かにワイもそう思うけどね」
「……僕が、神様になったのはね」
宏太が、少し口調を改める。
「最後まで、見届けたかったからなんだ。姉ちゃんにもらったこの命で、姉ちゃんの全てを見届けたかった」
「……あいつの魂が砕けてないこと、知ってたのか?」
「ううん。でも、昔から姉ちゃんって丈夫だから」
「はは、そうだな」
――そして、過去の因縁。
「さよなら、です」
涙を流しながら、でも笑顔で言う。場違いにも、素直に綺麗だと思った。
「もし……もし生まれ変わることができたら、今度はもっと長く一緒にいたいですね」
――果たして、今度も。
「ありがとうございます。私、とっても楽しかったです。とっても……幸せでしたよ」
それは、とても美しくて。
カプも、同性である秋乃も、襟木でさえも見とれていた。光がどんどん強くなっていく。白く染まる世界の中で、なぜか円花の笑顔だけがはっきりと見えた。
「幸せでしたよ」
――あるいは、今度こそ。
(お前にゃシリアスは似合わねぇんだよ。だから……ずっと笑っとけ)
――彼女を、救うことはできるのか。
----------------------------------------------------------------------------
続いて2本目!
雪魔氏との悪ふざけが加速し、実際一本分書いてしまった一作!
地味にスターシステム(?)を採用しており、実は全既刊(続刊もののみ)には本作への伏線が込められてたりするぞ!
悪ふざけが生み出した奇作、『チャリンコ・デッド』!
――高原茶太郎。
ご近所で。
幼馴染で。
今年は、三年ぶりに同じクラスで。
そして、たぶん。
(私は、あいつが好きだった)
ご近所で。
幼馴染で。
今年は、三年ぶりに同じクラスの。
そんなあいつの葬式で、なぜだか涙は出なかった。
周りに、沢山泣いている人はいたけれど。
その人たちよりも、あいつを大切に思っていなかったわけはないはずなのに。
なぜだか、涙は出なかった。
なぜだか?
理由は、なんとなくだけどわかる気がした。
まだ、信じられなかったから。
あいつがこの世から消えたなんて思えなかったから。
今も隣で、妙に気の抜けた顔で笑っている気がしたから。
だから、涙は出ないのだろう。
――享年、17歳。
そして、実際。
”そいつ”はそこに、いたりする。
――幽霊に、なりました。
「つーか俺、別に死亡フラグとか立ってなかったじゃん! 『俺……この仕事が終わったらあの子に告白するんだ……』とか言ってなかったじゃん! なのになんで死ぬんだよ! それともアレか、仕事終わったら食べようと思って冷凍庫にアイスしまっといたのが悪かったのか!」
「あ! の!」
「……ん?」
語調をかなり強くしたところで、ようやく男性の目が茶太郎の方を向いた。
「おや、君は? って、なんで浮いて……なんか透けてるし……?」
茶太郎の姿を認識して、男性の顔が強張っていく。
「出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 幽霊!?」
「いや、あなたも今はそうですよ」
「あぁそういえばそうだった」
「いやぁ、ありがとう。君のおかげでこれからの幽霊ライフに希望が見えだよ」
「はぁ。幽霊ライフにそんなポジティブさはいるんでしょうか」
「いやいや、人間たとえ死んだとしてもポジティブさは忘れちゃいけないよね。なんていうか、第二の人生的な気分で」
「逆に、そんなネガティブな第二の人生も嫌な気もしますが……それはともかく。あなたは、まだ正確には死んではいないんじゃ?」
「? どゆこと?」
――幽霊になった茶太郎が出会ったのは、自転車で事故って幽体離脱した雪間さん。
「両親は既に他界してましたんで、そういう意味では不幸中の幸いだったってところですかね」
「ほぇー、幽霊二日目にして悟ってんねー」
雪間氏は感心したように数度頷いた後、ふと。
「あぁ、けどさ。そんだったら、なんで幽霊になってんの?」
「……え?」
言っている意味を理解できず……いや、半ば理解したからこそか。
茶太郎は答えに窮した。
雪間氏は、そんな茶太郎の様子には気付かない。
「いやだってさー、よくわかんないけど幽霊ってこの世に未練とかがあるからなるんしょ? 茶ーちんも何かそういうのあるんじゃないの?」
「あー……うん、えと……何、だろう……?」
顎に指を当て、茶太郎は考え込む。
「うん? なんだ、自分でもわかってないの?」
茶太郎の様子に、雪間氏は不思議そうな顔。
「そう……ですね」
――未練がないはずの自分が、幽霊になったのはなぜなのか?
――その答えを探すため。
「茶ーちん、もしかして……」
「すみません、戻り方がわからなくなったみたいです」
「やっぱり!?」
「もしかして怒ってます? じゃあ、ちょっと可愛く謝ってみますんでそれで許してくださいね」
「いや別に怒ってないけど可愛くって何!? それ心からいらないよ!?」
「えーっと」と、何かを思い出すように少し上の方に目を向けてから、茶太郎(体は雪間氏)は。
「すみません、戻り方がわからなくなったみたいです。テヘッ☆」
ウインクと共に少し舌を出し、軽く自分のこめかみを小突いた。
「ちょっと、人の体で何してくれちゃってんの!?」
「どうです? 僕なんかは、倫子がこれをやるとバカバカしくなってすぐ許しちゃったりしたもんですけど」
「いやそれは知らないけど! 自分の体でそんなことやられてもキモいだけだから! むしろ今のちょっとイラッときたよ!」
――幽体離脱な誰かさんを、戻すため奔走してみたり。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ! ブーストォォォォォォォォォォォ!」
説明しよう、ブーストとは!
雪間氏が持つ三十二のチャリンコ技の一つである!
ペダル漕ぐ力を最大限に、最大回転数を叩き出すことにより、最大速力を出すことができるようになるのだ!
つまりはただの全力疾走だ!
「ちょぉぉぉぉぉ! あんま揺らすなや! データが吹っ飛ぶじゃろがい!」
「いや、元々データを消すのが目的なんだからいいんじゃない?」
「ばっきゃろい! このデータは……いや、この子らはな……儂が、一〇年に渡って大切に大切に育て上げたもんや……消すにしても、ちゃんと供養してやらな可哀想じゃろがい!」
「エロ画像データだけどね」
「なんか後ろですっごいやる気削がれる会話が流れてる気がするぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
――組の裏切り者に殺された、若頭のエロ画像消去に奔走してみたり。
「あらあら、せっかく最後に神の一手が見えたと思ったのにねぇ……」
「マジっすか! 先生、是非最後にその一手だけは打って逝きましょう!」
「でもね、死んじゃったショックなのか、どんな手だったのか忘れちゃったのよねぇ……」
「もっかい頭打ったら思い出したりしませんかね!?」
「いや、まず今の身体にもう一発打撃与えたら今後こそ致命傷じゃない?」
「だったら俺の身体に入って俺の身体で頭を打つがいい!」
――女流棋士の、最後の一手を打つため奔走してみたり。
「誰か……頼む……この、ディスクを……」
震える手で、廣島氏ディスクを見えない誰かに向かって差し出す。
「……わかった、僕が必ず」
聞こえたはずはないだろうに。
しかし、茶太郎がそう言うと廣島氏はどこか安心したように笑って意識を手放した。
「んじゃ俺、身体に戻ってディスク受け取るねっと」
「……雪間さん」
「ん?」
少し硬い茶太郎の声に、雪間氏が振り返る。
「これは……もしかすると、本当に危険な事かもしれません」
「はは、今まで危険じゃなかったことなんてあったっけ?」
――瀕死の雑誌記者が、命がけて託したディスクを配達してみたり。
「オゥ、アナタはナニか知っていそうデスネー」
「僕らが、見えるの?」
「イェース、オフコース! そっちのアナタは、まだ死んではないようですネー」
「まぁ、幽体離脱状態ってやつ?」
「そうデスネー。ナウ、デッド寸前デスけどネー」
「マジで!?」
「あと一分以内に戻らないと死にます」
「マジで!?」
「冗談デース」
HAHAHA、とアメリカンな感じで男性は笑う。
「一分二秒は猶予がありマース」
「ほぼ誤差の範囲だ!? ていうかさっきめっちゃ流暢に日本語で喋ってたよね!?」
「冗談デース」
HAHAHA、とアメリカンな感じで男性は笑う。
「……で」
男性が、サングラスをずらして上目遣いに茶太郎たちを見る。
「ナニを見たのか、教えてくれマスネ?」
ふざけた口調とは裏腹に、その目は剣呑な光を帯びていた。
――そんな中、漂ってくる事件の香り。
「もう……嫌だよ……どうして私の周りの人ばっかり、こんなに……」
――巻き込まれる幼なじみを救うため、奔走し。
「あぁ……わかったよ、雪間さん。僕の未練。とても簡単なことだったんだ」
――そして。
「なんだか未来が明るく見えるようになった……って言ったら変ですかね? あぁそうか。人間たとえ死んだとてポジティブさを忘れちゃいけないんですよね」
――やけに明るい、幽霊少年と。
「私は、あいつが好きだった」
――幼なじみの、少女と。
「任せな! いつもニコニコ指定時間通りにキッチリ配達、運送会社ハッピースカイ! 雪間、出勤します!」
――やけに幽体離脱する、青年と。
「いくぜ、耐えてくれよスーパーノーマル号! うおぉぉぉぉぉぉ! バーストォォォォォォォ!」
――チャリンコと。
「茶太郎!」
「さよなら、倫子」
――間抜けなメンツでお届けする、間抜けで……ちょっとだけ切ない、とある死後の物語。
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さぁさぁ張り切って3本目!
某サークルの何かのイベントの時に出した短編だ!
何かのイベントに出てるんだったらお蔵入りしてねぇじゃねーか! まぁ気にすんな!
そういえば地味にはむばねさん初のオリジナル短編(というかショートショート)小説、『非公式活動団体オカルト部』!
「昔から、勇者とオカルト好きには不法侵入が許されると決まっているものよ」
――傍若無人な部長と。
「はぁ。どんなのなんスか? 部長のことですし、今更単に人格やら格好やらがおかしいってわけでもないんでしょ?」
――やる気なさげな副部長。
「まさか、そんだけッスか?」
「それだけと言えばそれだけね。ただ、彼女は本当に魔女の真似事をしていたらしいの。生前に作り出された物が、今でもこの館の中にあるらしいわ」
「ちょっとちょっと、まさかそれをパクってこうって話じゃ……」
「失礼ね。私がそんなことをすると思って?」
思ってます。とは、殴られたくなかったので言わなかった。
――たった二人の部活動(非公式)、非公式活動団体オカルト部
「結城君、そんなところで寝てないでさっさと行くわよ」
「部長~、ツンだけじゃなくデレも見せてくんないとただのSっすよぉ……」
フラフラになりつつも立ち上がりながら、結城はそう言う。部長は特にそれに返事は返さず、プイと進行方向に向き直った。だが結城からは顔が見えなくなったところで、部長は少しだけ相好を崩す。
「ま、本気で言ってくれてるならそれはそれで……」
「はぇ? 部長、なんか言いました?」
小さい部長の呟きは、結城に聞こえど聞き取れない。崩した相好をさっさと無表情に戻し、部長は結城に少しだけ振り返る。
「なんでもないわ。デレの部分よ」
――今日も二人で、活動(主に不法侵入)やってます。
「この世には、やっちゃいけないことが二つある」
一歩一歩、恐怖を植えつけるように結城は踏み出していく。
「一つは、部長を傷つけること」
魔女の前に、結城が立つ。
「そしてもう一つは……」
魔女の目がいよいよ恐怖に見開かれ。
「チャーハンの上にコチュジャンを乗せることだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「そっち後者にしたらマズくない!?」
「まぁ、彼には惚れ薬なんて使う必要ないものね」
「……どういう意味かしら?」
そう答えた部長に、魔女の笑いはさらに深まる。
「まさか、本気でそう言ってるわけじゃないでしょう?」
「…………どういう意味かしら?」
再び、部長はそう回答。魔女は、クスクス笑いながら棚へと向かう。
そこから一つのビンを取り出し、部長に渡しながら。
「まぁ、ツンもほどほどにしてたまにはデレっとしなさいってことよ」
――そんな彼らの活動記録、ちょっとだけ覗いていきませんか?
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そろそろダレてきたかな? 私はダレてきたよ、4本目!
最早経緯すらも明かせねぇ!
ひっそり裏で書いて、ひっそり裏でお蔵入りになったある意味問題作!
地味に人生最高速度(5日)で完成させました、『魔王、攫います』!
――勇者の剣が魔王を貫き。
――その日、人類は魔族の脅威から解放された。
「……私を、笑いにでも来たか?」
どこか胡乱な目で勇者を見、魔王は掠れる声でそう言った。
「そうして欲しかったらするけど、どうする?」
勇者はイタズラっぽく笑う。
「好きにすればいいだろう。魔界では勝者が絶対だ」
「そ? じゃ、ちょっと笑ってみるね」
コホン、と勇者は一つ咳払い。
「あはははははははは!」
魔王を指さして笑い始めた。
「ひゃははははははは!」
笑う。
「でひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
薄暗い牢内に、バカでかく響く笑い声。
「うははははははは!」
「……」
笑い続ける勇者を、魔王は視線も逸らさずじっと見ていた。
「……楽しいか?」
「いや別に」
――囚われの身になった魔王様。
「俺は、君を無理矢理にでも脱獄させる。いざとなれば、ここでやり合ってでもね」
手が差し出される。
「でも、できれば同意して来てほしいな。その方が手間が省ける」
「……ふん」
その手を見て、魔王は鼻を鳴らした。
「脱獄を強要されるとは、聞いたこともない話だ。それも、私を牢にぶち込んだ本人からとはな」
間に流れる空気は張り詰めている。
「だがまぁ」
ふっと、空気が緩む。
「先程お前が言った通り、今の私ではお前に逆らうことは出来まいよ」
不満げではある。あるが。
「脱獄でもなんでも、好きにすればいい」
魔王は勇者の手をとった。
――勇者様に、攫われました。
「……私は、謝罪するつもりはないぞ」
「ん?」
唐突な言葉に、スナフは疑問符と共にラナリスを見た。
「あぁ……いや」
その表情に、何のことかを察したのだろう。しかし、スナフの雰囲気は変わらない。
「別に、謝ってもらう必要なんてないさ。お互い自分の信じる道を進んで、その結果ぶつかった。それだけの話だから」
「戦っていた頃は、お前のことを直情タイプのパワーバカかと思っていたのだがな」
クク、とラナリスは小バカにするように笑う。
「失礼な。当時から割とトリッキーな頭脳戦をしてたでしょうが」
「そもそも、魔王軍相手に単身で戦いを挑んだりする人間が器用なタイプだなどと思うものか」
「……なるほど、それはそうかもね」
肩をすくめてから、今度はスナフがニヤリと笑った。
「でも、確かに俺も君のことを見誤ってたよ。クールになんでも完璧にこなすのかと思いきや、意外とからかいがいがある」
「放っておけ」
「とりあえず、こんだけ魔力込めた即死魔法。普通の人だったら使用者まで死ぬよ」
「……なるほど」
ラナリスはあっさり納得した。
「売り物にする魔石にも、向き不向きがあるということだな」
「厳密に言うとそういうことじゃないけど、めんどいからもうそういうことでいいよ」
スナフがやる気なさげにうなづく。
「ま、とにかく。そんなわけだから、込めるのは回復魔法や解毒魔法など、人に優しいものにするように」
「心得た」
――勇者スナフと魔王ラナリス。
――かつて正対した二人が、同じ方を向いているという奇妙な旅路。
「ねぇ、どうしてそんなに結着を急ごうとするの?」
ラナリスが構えていても、スナフは無防備に前進してくる。
「そんなもの、一刻も早く終わらせたいからに決まっている」
結果、ラナリスが下がらざるをえない。
「何を? この旅を?」
スナフはほほえんでいた。
「何のために?」
それは表面上優しい微笑であるはずなのに、ラナリスはなぜかそこに寒気を感じた。
「自由になるため? だったら、君はなぜさっさと逃げない? 例えば、今日なんて隙だらけだったろう?」
「だから終わらせてほしいのかい? もう一度俺に、今度こそ確実に」
「黙れっ!」
今度は意図した……あるいは、それ以上の声が出た。
「お前こそ何なのだ!」
スナフの方を見上げる。
「なぜ私を牢から出した! なぜ私を殺さない! なぜ……」
スナフは、微笑んでその視線を受け止めていた。
「なぜ私の心に踏み入ろうとする!」
――スナフがラナリスを連れ出したわけは。
「スナフ・コールタット、か……」
口に出してその名を呟く。様々な感情が胸に去来する。
「私の計画を終わらせた男」
恨みは、もちろんある。それは幼い頃から抱いてきたラナリスの悲願とでも言うべいものだったし、恐らくはスナフがいなければ達成できていただろうとも思う。
「終わらせて、くれた男」
だが同時に、感謝の念のようなものを感じているのも事実だ。
「そして……」
「君の顔に、迷いが見て取れたから」
ラナリスの目が、細まった。
「迷い、か……」
「うん、だから倒した。止めてほしそうに見えたから」
「そうか」
短く返事し、ラナリスは考えるように黙り込んだ。
「そうだな。確かにあの頃、私は迷っていたのかもしれない」
――ラナリスは、それをどう受け止めるのか。
「我々が侵攻した土地も、徐々に人間界に取り返されているらしいからな。勝手を承知で言うが、やはり魔族の皆には少しでもいい土地を残してやりたい。そのためには、人間に魔族を恐れてもらう必要がある。ま、最後に一花咲かせるさ」
冗談めかし、スナフを見習ってあくまで軽い調子で言う。
「なんて私が言うところまで、当然お前はお見通しなのだろう?」
「もちろん」
あっさりスナフは頷いた。
「そして、君の決意が何をしようと変わらないことも知ってる」
スナフが一歩踏み出す。
「だから、これはただのお見送り」
――世界は、それはどう受け止めて。
「なんと、いうことをする……」
周りから、うめき声のような批難が漏れる。
「お前を助けようとした少女だろう!」
「……クク」
できるだけ酷薄に、『魔王』らしく見えるよう。ラナリスは、笑う。
「だから? この状況では、最早利用価値もないだろう」
四方八方に、ラナリスは杖を振り回し魔法を放った。どうせ周りは全て敵だ、問題ない。
「クハハ、愚か愚か! どいつもこいつも、私が少し本性を隠せばすぐに騙される! だから貴様ら人間はクズなのだ!」
――そして。
「すまないな」
未だナイフに手をかけているスナフに、ラナリスは穏やかな声で言う。
「こんな役割を、させてしまって」
――二人の、決着は。
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ようやくラストだ、5本目!
校了直前、まさかの発売前にレーベル消滅!
ついに私の力もここまできたか……と厨二病的セリフを私に呟かせた象徴作!
何気に初の中編(?)でもあります、『カミサマと少女』!
――それは、カミサマが少女のために創ったセカイ。
セカイは、見渡す限りのサバクだ。
前後左右どこを見ても、砂砂砂。
ソラは青く青く、地平線の向こうまで広がる。
そんなセカイにも、一つだけ例外があった。
ポツンと佇む一軒の家。
――セカイには、たった3つだけの存在がありました。
「カミサマ~!」
全速力で駆ける少女。
走りながら、少女は肩に掛けた黄色い園児カバンを器用にまさぐる。
そうして、少女とカミサマの距離が一メートル程にまで縮まった頃。
「しねー!」
カバンから取り出した無骨なバタフライナイフを両手で握り、カミサマの胸に突き立てた。
突進の勢いを殺さず、己の体重も乗せた見事な突きだった。
「はっはっは!」
ナイフが到達する直前、カミサマは半身を捻ってその切っ先を躱した。通り過ぎるようとする少女の手を取り、そのまま回転しながら抱き上げる。
「またしななかったー!」
ケタケタ笑いながら、少女はカミサマの硬い胸に頬を摺り寄せた。
「このセカイが砂だからけなのは?」
「カミサマがぜんぶ、ぶっこわしたから!」
元気よく手を上げた少女が答えた。
「このセカイに、他に人がいないのは?」
「カミサマがぜんいん、ぶっころしたから!」
引き続き、元気よく。
「はっはっは、その通り! お前のパパもママもご近所さんも、カミサマが全て滅ぼしたのだ!」
言って、カミサマは少女を再び抱き上げた。そのまま、勢い良く上空に放り投げる。軽く十メートルは飛んだ上空で、少女はキャッキャと笑う。
落下した少女は足、膝、腰、背中、腕、と衝撃を殺しながら着地した。
「はい、しつもん!」
そのまま、クルンと回転して立ち上がる。
そして、少女は再び元気よく手を挙げた。
「パパ、ママ、ってなーに?」
「お前が一番大好きで、お前のことが一番大好きな人のことだな!」
「カミサマのことー?」
「はっはっは、愚か者め! カミサマはパパでもママでもない! なぜならば、カミサマはお前にとって憎むべき敵なのだから!」
「いいか嬢ちゃん。確かにオレぁ嬢ちゃんのトモダチとして創られたが、誰とでもすぐに慣れ合う安いトリじゃねぇ」
「こうきゅうとりにく?」
頭を押さえたまま、目の端に涙を浮かべた少女が首を傾ける。
「肉でもねぇ」
少女に背を向け、顔だけ振り向く形でトモダチは目をキラリと光らせた。
「嬢ちゃん。オレに釣り合う、いい女になりな」
「うん、わかったー!」
涙を拭って、少女は元気よく頷いた。
「てい!」
そして、トモダチに向けてナイフを突き立てる。
「うぉ!?」
間一髪、トモダチはスッテプでナイフを躱した。
「こ、殺す気か!」
「え?」
少女が、目をパチクリさせる。そして、ニコリと笑った。
「そうだよー」
「穢れ無き笑顔!」
――少女と。
――トモダチと。
――カミサマと。
――たった、3つだけ。
「ハイ!」
白いブラウスに紺色スカートの少女が、元気よく手を挙げた。おかっぱの髪が、サラリと揺れる。
「nがむげんだいの時、式は0から1のてーせきぶんに直せるので、答えはlog2です!」
「おぅ、正解だ」
黒板の前で羽ばたくトモダチが、教鞭を加えたまま器用に喋っていた。
「そんじゃ数学はここまでで、次は社会にすっか」
「えー!?」
途端、少女の表情が不満に染まる。
「もっとすーがくがいい! それか、りか!」
「相変わらず理数系が好きだな、相棒よ」
「うん! だって、カミサマをぶっ殺すちょーへーきを作るのに必要だから!」
「カッパさんだ!」
「お嬢さん、確かに僕はカッパさんですが、人様を指差すのはいただけませんね。人様っつーか、カッパさんですけど」
「はい、ごめんなさい!」
カッパの指摘に、少女は素直に手を引っ込めた。
「つーか、なんでカッパがウミにいんだよ……」
少女の足の裏に止まったトモダチが、胡乱げな目を向ける。
「はぁ!?」
ギロンと、カッパがトモダチを睨む。
「カッパがウミにいて何が悪いんですか? ウミカッパ差別ですか? そういうのは良くないと思います! ウミにいようが川にいようが、カッパはカッパです!」
「いや、カッパは普通に川にいるもんだろ。つーかなんだウミカッパって」
「そんなことは百も承知ですけど!?」
叫んだ後、カッパはブワッと目尻に涙を溜めた。
「そりゃ僕だって、川があるんなら川に出現しますよ! だってそれがカッパの在り方だもの! でもウミしかないんだから仕方ないじゃないですか! 水繋がりってことで納得するしかないじゃないですか! それをなんですか貴方は、人の傷を抉るように! そんなに哀れなカッパが滑稽ですか!?」
「お、おぅ、そうか。なんかすまんかった」
程なくして、セカイは夕暮れに包まれる。
「お嬢さんは眠ったようですね」
「あぁ」
このセカイは、少女のためだけに存在する。
だから、少女が眠ればこのセカイは夕暮れを経て夜に移るのだった。
「カミサマ、質問をしてもよろしいでしょうか?」
カミサマに問いかけるカッパの口調は、淡々として抑揚がない。カッパのくせにやけに変化していた表情も、今はすっかり鳴りを潜めている。
「君が知らないということは、君が知らなくていいということだよ」
こちらも先ほどまでは異なる全く抑揚のない声で、カミサマ。
「左様ですか」
それっきり、カッパは何も言わなかった。
そして、セカイには今日も夜が訪れた。
――少女のために作られたセカイで。
――少女は、成長していきます。
――カミサマを、コロすため。
「選ばれし者、この世に導かれし時より四三八〇の夜に魅入られし後、秘められし力に目覚める……聖典に書かれた、約束されし未来の一つだ」
「られし事多いな……ってか、聖典ってあれか?」
少女がチラリと動かした視線を追って、トモダチも本棚を見た。
「旧時代の……漫画、って言ったか? ありゃ、作者の創作だろ?」
「フッ、愚かな……斯様に表面上でしか物事を読み取れぬ者に、私の力を推し量ることは出来まい」
薄く笑って、少女は机の上に置いてあった眼帯を右目に付けた。
「ん……? なんだ、怪我でもしたのか……」
「そうではない……これは、私の力を封印する『カギ』……」
恍惚とした表情で、少女は右目の眼帯を撫でる。
「おい、マジでどうしたんだ相棒よ……」
「クク……残念ながら、私は君が知る『相棒』ではない……」
「……どういうことだ?」
動揺するトモダチに、少女は笑みを深めた。
「私の名は、深淵の闇。カミをコロすモノ。覚えておくといい」
「お、おぅ」
「貰った。十六歳の誕生日プレゼントだと」
棒を咥えたまま、少女は器用に喋る。
「おいおい、ちょっと早すぎるんじゃないか? 煙草は二十歳になってからだろ」
「そんな、とっくに滅んだ国の法律なんて関係ないだろ?」
「そういう問題じゃなくて、体に害があるって話だよ。特に成長期に煙草吸うなんざご法度だってーのに、何考えてんだよカミサマは……」
「反抗期には煙草くらい必要、なんだとさ」
興味なさげに応えながら、少女は手を止めない。粉の調合は終わったらしく、それを金属製の器に移していく。
「……ところでそれ、何作ってるんだ?」
「手榴弾」
事も無げに答える。
「じゃあそれ火薬!? 最も煙草吸いながらやっちゃダメな作業だろ!」
「なに、思春期にありがちなことだ。時間が解決してくれる」
「知った風に。オレらにゃ、そういうのは真の意味じゃわかんねーだろうが」
「これでも、それなりに長いこと人類を見てきたのだ。経験は無くとも、理解は出来る」
「ケッ、そりゃご立派なこって」
「先程言った通りだ」
トモダチの悪態を気にする風もなく、カミサマは続ける。
「終幕にはまだ少々早い。けれどあくまで、少々だ。もう、遠い先ではない」
軒先でしたのと同じように、肩をすくめた。
――少女は、成長していきます。
――より、美しく。
――より、賢く。
――より、強く。
「おはよ、カミサマ」
ただニコリと笑って、少女が迎える。
「我がガガガガガムスメヨヨヨヨヨ」
返事するカミサマの頭が、ガガガと揺れていた。
トモダチが一瞬目を細める。
「なんでカミサマ、今日はラップかい?」
しかし、すぐにいつもの面倒臭げな調子に戻って問うた。
「うむ、我はろっくゆえにな」
――そして。
セカイは静寂に包まれていた。
十数年前には当たり前だった光景。
しかし、今やそれが妙に寂しく少女の瞳に映る。
「そっかー、今日は二十歳の誕生日かー」
納得したように、少女が呟く。その呟きも、空虚に消えていった。
「トモダチは、消えないんだね」
頭の上に載るトモダチの喉を撫でる。出会った当初はそれだけで少女の頭はグラグラと揺れたものだが、今はもう何ともない。
「オレはあいつらと違って、完全に独立した存在として創られてるからな」
――セカイは、終わります。
「じゃあ、お礼を一つちょうだい?」
「なんだ、いつになく欲張りだな」
カミサマも、声に小さく笑いを混ぜる。
「最後だ、何でも言うが良い。もっとも、何を言われたところで我に用意出来るのは偽物だか作り物だかしかないがな」
「違うよ。これは正真正銘、偽物でも作り物でもない、カミサマがくれる本物」
――だから。
「善は急げって言うでしょ?」
声が震えているのは新しい世界への期待からで、鼻をグズグズいわせているのは慣れない空気がむず痒いから。
地面が濡れているのは、きっとお天気雨だ。
目が濡れているのも、同じ理由。
「それに」
痛い事があっても辛い事があっても泣かない、強い少女なのだった。
そう、カミサマに望まれたのだから。
「そにれさ」
だから、泣いてなどいないのだった。
――世界を。
「お別れじゃないもの」
――始めましょう。
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coming soon...
さて。
念のため、貼っときますね。
* *
* + うそです
n ∧_∧ n
+ (ヨ(* ´∀`)E)
Y Y *