「例えばさぁ、電車の中で座ってるとするじゃん? んで、お年寄りが乗ってくるとするじゃん?」
「なぁ」
「でもさ、そこで席譲るのってなんか恥ずかしくない?」
「なぁ陸」
「だから俺は目の前にお年寄りが立ったときにだけ、何も言わずに立ち上がるんだけどさ。そもそも……」
「おいこら!」
「おぶっ!?」
突如放たれた盟のボディブローによって、俺の言葉は強制的に遮られた。
「い、いきなり何をする……」
「それはこっちのセリフだ。突如電話で呼び出したと思ったら、いきなり何の話を始めてるんだお前は」
「だから、日本人ってなんか親切=恥ずかしいっていう感覚持ってる気がするけどそれってなんでなんだろうねって話だよ!」
「そ、そうか。それはすまんかった」
俺の熱弁に気圧されたのか、盟は半歩下がる。
俺も熱くなりすぎたことを反省し、一つ深呼吸。
「で、なんでだと思う?」
改めて盟に尋ねてみる。
「あ? あー、そうだなぁ……偽善とか、なんかそういう言葉があるせいじゃないか? 『あいつ、いいことして自分かっこいいと思ってるんじゃね? プゲラwww』って思われるのが嫌だとか」
「なるほど、それはかなりいい線いってる気がするな。けど俺は前々から思ってたんだが、一般的に『偽善』って言われてることって基本的にただの善行であることの方が多くね? 特に自己満足のために善行を行うことまで偽善って言われちゃ、それこそ聖人君子しか善行行えない計算にならないか?」
「まぁなー。なんていうかアレだ、『真面目ってカッコワルイ』みたいな風潮あるだろ? それの延長上なのかもな」
「つまり中坊の頃、先生に「なんで掃除とかしなくちゃいけないんですかーwww」とか言ってた奴の延長ってことか」
「まぁ実際、そっち側の人間の方が多いからそれが社会全体の風潮になるんじゃねーの?」
「なるほど、それは嘆かわしいな」
「あぁ、嘆かわしいな」
「………………」
「………………」
どちらからともなく押し黙り、しば沈黙が流れた。
「ところで、ふと思ったんだけどさ」
沈黙を破った俺を、盟が視線だけで促す。
「……この話、すごくどうでもよくね?」
「知ってたよわかってたよ最初から! お前まさかホントにこんな話するためだけに呼んだんじゃないだろうな!」
「そんなわけあるか。さしもの俺もそこまで暇人じゃない」
まぁ、基本的に暇人であることは否定しませんけどね?
「カラオケ行こうぜー。最近放出してない新曲が増えてきてさ」
「あぁ、そりゃちょうどいいわ。俺も最近アンティックにハマり始めててさー」
「マジでー? 今日そういう空気? プレパレードとか歌っちゃダメ?」
「いやいつも通りお互い適当でいいだろ。他の人がいるわけじゃないし」
「じゃあそんな感じで」
というわけで俺たちは、何事もなかったかのようにカラオケ屋に向かったのだった。