「世界征服」感想 | self-complacency

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ライトノベルの感想を書いてました。

世界征服
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「世界征服。私、世界を統べる王になるの!」
“人類史上最高の知能指数”を持つ絶世の美女・水ノ瀬凛。零細企業の青年社長・朝倉陣の会社に加わった凛は革命的なビジネスプランを立案し、会社を前代未聞の速度で成長させていく。だがそれは凛の“目的”を達するためのほんの序章に過ぎなかった……。「世界征服をたった一冊にまとめることは可能か?」というテーマに挑戦した至道流星の衝撃デビュー作・『雷撃☆SSガール』が改題の上、待望の文庫化。

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ダイレクトメール代行事業を請け負う零細企業の社長、朝倉陣。今まで付き合っていた彼女、由美から別れを切り出されてしまった彼は、日頃の疲れももあいまって、憂さ晴らしのための話し相手を求めていた。そして陣は六本木通りへと向かい、客引きの強い押しと興味深い言葉に惹かれキャバクラへ。
店内に通された彼の前に姿を現したのは傲岸不遜、超上から目線の美少女、水ノ瀬凛だった。「この私が特別に来てあげたわ。光栄に思いなさい!」
「まさか、この世界が真っ当だなんて思ってるの?」
彼女は自身の目的を世界征服、そして「私が世界を統べる王になるの」と語り……?

あぁ、これだよこれ…! 僕が望んでいたのは間違いなくこの作品だ、と確信した。と同時に何故もっと早く読んでいなかったんだ……と後悔も。世界征服はやっぱロマンがあって良いなあ。
デビュー作でこれとか至道先生すげえ。

キャバクラでさんざん飲まされた翌日、頭痛を引きずりながら出社した陣の前に姿を現したのは、なんと凛であった。「なんでお前がここにいる!?」と驚きを隠せない陣。凛は今日からここの社員になる言うのだ。そして、私のプランでアルセアマーケティングの売上を100倍、300億にしてあげる、と宣言する。

この一冊を通して何より印象に残ったのはやはり、水ノ瀬凛という人物と彼女の凄さだろう。いきなり世界を統べるなんて突拍子もないことを言うなんて、それこそ頭がおかしい奴なのか?と当初の陣のように思ってしまうかもしれない。相手が初対面の人物だろうが構わず偉そうな態度で接するくらいだし。
しかし、その才能がとても努力だけで辿り着ける領域でないことは本編を通して嫌でも伝わってくる。まさしく天才と呼ぶに相応しい人物、それが水ノ瀬凛だと思う。
卓越した頭脳(理解力)と凡人では到底思いつかないような発想でアルセアマーケティングを初め、数々の事業を成功させていく。
大手カーチスソフトウェアの山県社長から5億を借りたり、売上の低迷していた東都出版を生まれ変わらせ大幅な利益を出したり。イーストライン急便と話をつけてDMのサービスを丸々そちらに移したり。
ともすれば自分と敵対関係にもなり得る公安調査庁とも手を組んじゃうとか半端ない。やることなすことが想像の範囲を大きく超えていて、見ていてとても楽しい。

SSファンドが始まってからの資金の増え方が特にすごかった。レーザー衛星もあっさり作っちゃうし。
力をつければ上に立っているものが黙っていないのがこの世の常。裏で世界を操っていると噂されるほどの組織、ブランフォート財団と凛は敵対する。ラストにかけての怒涛の展開は手に汗を握るものがありました。凛のただではやられないところにまた痺れた……!

「一冊で世界征服を描く」というコンセプトが何より明瞭で分かりやすく、且つ壮大で素晴らしい。経営から社会の裏、本質まで、清濁併せ呑んだ内容は至道先生にしか書けない。だからこそ、それが武器であり至道流星作品の魅力であると言える。
400ページ超えでも苦にならないどころかもっと続きが読みたい、そう思えるくらいめちゃくちゃ面白かった! 誰も敵わないレベルの天才である凛が陣の会社を立て直すところから始まり、資金を増やしていく様はまさに圧巻の一言。終始ワクワクしっぱなしでした。

2巻はスタンフォード側に迫る形で展開されていくのね。コンセプトに反するけどやっぱあの続きが読みたいなあと思ってしまう…… 別の時間軸でも絶対面白いだろうからそこは心配してないけど。
次巻も買ってあるから読むのが楽しみ。