戦争はいかがわしい商売だ。
これまで、いつもそうだった。
戦争は、おそらくもっとも古く、何にもましてもっとも金になり、はっきり言ってもっとも悪質な行為だ。
 
そして、儲けをドルで、損失を命で勘定する唯一のものだ。
 
いかがわしい商売とは、大半の人々にとってはそうは見えないもの、と言ってよいだろう。その実体を知っているのは内部の少数グループだけだ。
 
それは、大勢の人が犠牲を払って、ごくわずかな人々の利益のために行われる。ものすごく少数の人だけが戦争から膨大な利益を得るのだ。
 
第一次世界大戦では、一握りの人が戦いの儲けに浴した。この戦争〔第一次大戦〕で、少なくとも二万一〇〇〇人の百万長者や億万長者が新たに誕生した。それだけの人が、所得税申告で多額の利益を報告したというわけだ。
ほかに申告をごまかした戦争成金がどのくらいいたかは、誰も知らない。
 
ところで、これら百万長者のうち何人がライフルを担いだだろうか。
何人が塹壕を掘っただろうか。ねずみが走り回る地下壕でひもじい思いをするのがどういうものか、何人が知っていようか。
銃弾や散弾や機関銃弾をよけながら、恐ろしい、寝られぬ夜を、何人が過ごしただろうか。
敵が突く銃剣を何人がかわしただろうか。何人が戦闘で負傷し、あるいは殺されただろうか。
 
国々は、戦争に勝てば、それによって新たな領土を獲得する。単に奪い取るだけだ。この新しい領土は、戦血から金儲けをした同じ少数の連中が利用する。ツケを払うのは一般大衆だ。
 
ツケって?
それは恐ろしい計算になる。
新しく建てられる墓石。めちゃくちゃになった遺体。粉々にされた心。失われた望みと家庭。経済的な不安定。憂うつと、それに伴う苦痛。何世代にわたって人々を悩ませ続ける税金。
 
長い間、兵士として、戦争はいかがわしい商売だ、と私は疑ってはいた。しかし、退役して民間人になるまで、そのことをきちんと認識していなかった。世界的に戦雲が近づいている今〔一九三三年〕、私はそのことに向きあい、声を上げなければならない...