「武士の情け」という言葉をご存知でしょうか。
 
「武士の情け」とは、「武士が自分より弱い者に与える恩恵、強い者が弱い者に向ける哀れみや、思いやりの気持ち。」というのが、一般的によくいわれる意味です。
 
日本人の優しさというものを考えてみると、どうやら相手を「根絶やしにしない」という姿勢が根底に流れていることに気づきます。
 
たとえば日本の剣士、宮本武蔵。
武蔵は、どんな相手に戦いを挑まれようとも決してとどめを刺すことはしませんでした。
 
吉岡英治が描いた歴史小説「宮本武蔵」では、巌流島の戦いにて、佐々木小次郎との試合で武蔵が勝ったあとのシーンを、次のように書いています。
 
「波にまかせて、泳ぎ上手に、雑魚は歌い雑魚は踊る。けれど、誰が知ろう、百尺下の水の心を。水の深さを。」
 
そして、そんな宮本武蔵の精神的な師匠として、沢庵和尚という人がいました。
 
沢庵和尚は、
「自分はたくさんの敵を打ち負かし、ずいぶん強くなった。」という宮本武蔵に対し、
「そうか。それほど強くなったのなら、腕を見せてくれ。」と言って、木の枝と枝の間に糸をダラリと乗せて、切って見せろと言いました。
 
武蔵は、何回も何十回も振り下ろしましたが、糸を切ることは出来ませんでした。
 
沢庵和尚は、
「本当の強さというものがわかったか。本当の強さとは、戦わないことである。」と、武蔵に教えるのです。
 
戦い続けて、次々に相手を打ち負かしていく、叩きのめすことが「強い」ことだと思われていますが、本当の強さというのは、目に見えて戦ったり争ったりしないことなのです。
 
私達は、相手に対して自分の強さを主張するのではなく、どれだけ優しくなれるのかを見せて生きるのことのほうが、自分にとっての幸福感を感じることが出来ます。
 
本当に強い人というのは、いつも笑顔で優しく、常に肩の力を抜いてリラックスしている人なのではないかと私は思います。
 

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