ブログネタ:カレーライス? ハヤシライス? 参加中
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 人類が、その活動領域を一個の惑星から宇宙空間へと広げてから既に900年。巨大な星間国家「銀河帝国」を創り上げた人類は、銀河系の四分の一までを支配圏に治めながら、新たな脅威にさらされることなった。宇宙暦884年、辺境では大規模にあたる軍事基地を備えた惑星オカカウメ星が異星人による強襲にて壊滅。人類以外の知的生命体とのファーストコンタクトは、人類初の星間戦争へと発展した。当初、銀河帝国宇宙軍は領域内のパトロールや宇宙海賊の取り締まりなど、対人類の組織であった。主な戦闘力は宇宙戦闘母艦と、それに搭載された宇宙戦闘機である。高速からの一撃離脱戦法を主眼においたこれらの戦闘兵器は、異星人の攻撃に対して全くの無力であった。異星人の戦闘兵器は、速度において帝国の戦闘機に劣るものの、その柔軟な機動力は全ての攻撃をかわし、帝国の主力戦闘母艦は次々と撃沈されていった。地球上の生物に類似したその姿から「イカ」と名づけられた敵戦闘兵器の分析、対策は早急に進められ、宇宙暦893年には早くも試作型の対イカ戦闘兵器・通称ライスが製作された。パイロットの精神に感応し敵に反応するシステムを取り入れたライスは、パイロットの手足となるべく、人型に設計された。制式採用第一号であるタマゴカケはイカの柔軟な動きに見事に反応し、帝国は異星人と互角にわたり合える兵器を手にしたのだった。星間戦争開始より数十年。戦争は一進一退の攻防を続けていたが、ライスの誕生は停滞していた帝国の経済に新たな活気を与えた。各軍需メーカーは次々と新型ライスの開発を進め、実戦からのデータのフィードバックを受け、さらにライスは進歩していった。宇宙暦941年。前線とは逆方向にある、辺境の惑星アジノヒラキ星のツクダニ基地では、次期主力ライスの採用コンペティション、「キョウノリョウリ計画」が行われていた。競合メーカー2社によるテストは既に速やかに進められ、本日は初の模擬戦闘が行われる事となった。

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 テストパイロット、ゴニン中尉は口元に笑みを浮かべていた。これは彼が緊張した時のクセである。もっとも本人は否定するであろうが。彼はハウス社の新型ライス、「ハヤシ」のコクピットにて索敵システムに目を光らせていた。相手のライス、S&B社の「カレー」はハヤシ同様のルー・システムを採用し、互いに相手の索敵システムから目を眩ましている。もっともゴニン中尉は、相手のスペックやパイロットの情報などは殆ど知らされていない。噂ではカレーはハヤシと違って戦闘状況に合わせた様々なオプションを備えると言う事だが…。索敵システムが警告音と共に赤い光を放った。
「おいでなすったな。」
戦闘中の独り言はライス・パイロットの共通した癖であるかもしれない。ゴニンは素早くハヤシを左方向に旋回させつつ、主装備であるタマネギライフルの引き金を弾いた。こちらの曳光弾と相手の曳光弾との軌跡が交わる。カレーのそれは、数秒前までハヤシが居た場所に吸い込まれてゆく。どうやらカレーもタマネギライフルを利用している模様であった。ジグザグに機体を動かしつつ、索敵システムの示す方向へタマネギを打ち込む。軽い衝撃を左足に受けた。機体の状況チェックを行うも、大きな損傷は無い。どうやら相手のタマネギは良く炒めたものであるらしい。タマネギは用途に応じて炒め方を変える。ハヤシのタマネギが食感を重視して、さっと炒めているのに対し、カレーのタマネギは甘みを引き出すために飴色になるまで炒めているようだった。命中率は上がるが、ハヤシの装甲を貫くには至らない。
「やるじゃないか!」
機体は無傷であったが、ゴニンのプライドは傷つけられた。タマネギを撃ちつつ、ハヤシを加速させる。肉眼でもカレーの機体を確認、照準システムをロックさせる。
「こ・れ・で・も・く・ら・え!」
一音ずつ発声しながら、ゴニンはギュウニクミサイルを発射した。独特の臭みはあるものの、ハヤシはこのギュウニクミサイルを活かすよ設計されており、タマネギとの相性も高い。無数の軌跡が相手の機影に吸い込まれていった。しかし、相手も迎撃ミサイルの弾幕を張ったようであった。
「トリニクか!」
相手のミサイルのあっさりと、そして柔らかい食感はトリニクを用いているらしい。今回、ハヤシに搭載したギュウニクミサイルは、特に威力の高いヨネザワであった。それに対応出来ていると言う事は、相手のトリニクもジドリを用いているらしい。しかし、いかにトリニクミサイルと言えど、ここまで柔らかいものなのか?ゴニンは舌鼓を打ちつつ困惑した。ゴニンには気付くことは出来なかったが、カレーのトリニクは酢で煮てあったのだ。酢で煮込むことで口の中でとろけるような食感を生む事が出来る。さらに今回はトリニクの弾頭にトマトを用いていた。トリニクとトマトの相性は言うまでもない。ゴニンの一瞬のスキを突いてカレーが急接近してきた。カレーが接近戦用装備フクシンヅケを展開する。
「ちいっ!」
毒づく暇も無く、ゴニンもハヤシの接近戦用装備グリーンピースを発射する。しかし、カレーのスパイス装甲を破ることは出来ない。ハヤシのドミグラス装甲も赤ワインを用いて良く煮込んであり、ライスの良さを充分に引き出しているが、カレーのスパイス装甲もまた、互角であった。グリーンピースを無視し、カレーの機体はなおも接近を続ける。どうやらカレーのパイロットは勝利を確信しているらしい。だが、ゴニンには季節限定の切り札があった。ハヤシの機体を急速後退させ、ゴニンは切り札を発射する。それはタケノコだった。細切りにしたタケノコをハヤシに装備するのはゴニン独自のアイディアであったが、ハヤシに新たな食感を生み出す事でハヤシの持ち味をさらに引き出していたのだった。カレーの攻撃が止まり、初めて相手からの通信が入った。
「フフフ…、今回はこちらの負けのようだな。だが、カレーの奥はまだ深いぞ。」
そう言い残し、カレーは去って行った。相手に負けを認めさせたものの、ゴニンには互角の勝負としか思えなかった。そして、相手のパイロットが言い残したセリフは負け惜しみではなく、事実であることもゴニンにはわかっていた。妙な満足感を得つつ、ゴニンもハヤシの機体を帰路ルートに着かせる。テストはまだ続く。模擬戦もこれが始まりであり、帰還後はさらに創意工夫をこらさねばならない。ハヤシに絶対的な自信を持っているゴニンであったが、機体の損傷チェックを行いつつ、一言つぶやいた。
「カレーも悪くない、か…」

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イエイ。