流行りの歌しか歌えなくてダサいはずのこの俺〜

お前と離れ一年が過ぎいい男になっ


「も、やで、も。」

「しか、でいいんだ、しか。」

「も、やん。流行りの歌も」

「流行りの歌しか、だ」

「なんでやねん」

「じゃあ、じゃあだよ。キャメちゃん」

「なによ」

「流行りの歌が歌えるけど、流行りの歌しか歌えないの。どっちがダサいのよ」

「えっ、なになに」

「流行りの歌しか歌えない方がダサいだろうよ。流行りシカ知らないんだから。だから、あれだ。も、じゃなくて、しか、だ」

「面倒くさい男来たで」


今日は合コンだ

ブラウが手配した

秋葉原にあるハミカラだった

毎月5日に指定した練習も兼ねるため一軒目からカラオケに入った

テーブルには唐揚げやピザ、ポテトにサラダ、たこ焼き。ジョッキが2つにドリンクバーグラスが1つ。一人男が仕事で遅れるという。

七時半だった

キャメとオトコが席を隣にして話していた

その向かいに






「はい、はい、私私」

ビールで頬を赤めたブラウがマイクを取った

二人は唐揚げとたこ焼きを突き合っていた

「じゃあ、じゃあ。キャメちゃんがアイドルになったら、俺親衛隊1番だな。ダハハ」

「あかん。もう既にファンいるんやで。一桁やけどな。そうやな。7番」







「終わったで。2人!聴いてないやん!ほら、そこ!お前7番!」

「7番って。ブラウちゃん。俺にも名前あるし」

「ええやん。お前は7番や」

「どうしたん。ブラウ」

「知らん」

ケタケタ語る2人と、遅れる男に苛立った

何故アイツは、あの影のような男は時間さえ守らない

掴みどころのないあんな男のどこがいいのだ

カゲ


「私、はいはい」

「キャメちゃん、ファイト」





「Oasisか」

「せやで」

「女が歌うオアシスもいいな、キャメちゃん」

「ありがとう、7番」

「ああ!キャメちゃんまで」

「アハ、冗談や」

「でもあれだな。キャメちゃん。カラオケで洋楽は危険文化が日本にはあるじゃない」

「なんやそれ、そうかな」

「いや、あるんだよ。まあ、1曲はいいよね。おーいいねえ。でも同じ人間が2曲続けて洋楽入れるとアレアレみたいになるでしょう」

「なんやそれ、アホくさ」

「3曲続けると、」

「ブラウとシカ行かないからようわからん」

「しか、、」

「しか、も」

「ダサ」

「なんでやねん!8番!!」

「下がってるし!なんで!」

「降格や!何がダサいねん」

「だから、アレだよ。キャメちゃんもいろんな人と行ったほうが幅が広がるし、っていう。人によっていろんな趣味嗜好がさ」

「説教やん。まあ、でもな9番。私なかなか広がらんからな。難しいやん。友達おらんから」


きた

8時を過ぎていた

「遅かったやん」

「ああ、すまない。現場の仕事が長引いて」

カゲ




キャメは慄えた

半年前、夏まで交際していた男が目の前に現れた

土木作業に従事するカゲの体躯に幾つかのメモリがフラッシュバックした

ブラウは相方を見つめている

影は何事もないようにブラウの隣に腰を降ろした

「僕の番だ」

もはや番号さえ失った





「何か飲む」

「ああ、コーヒー」

「ブラックでいいよね」

「自分で行く」

カゲがドアを開けた

「なんで」

キャメがブラウを睨む

「私の彼氏や」

「なにいって」

ブラウが返す瞳で放った

「私の彼氏や。ちゃんと紹介しようと思ってな」

「なんでやねん。私の彼氏やん」

「前やろ。それは」

「えらい女やな」

険悪に口が開いたままだった

「どうしたんですか。2人とも」

「うるさいわ!」

こんな時は合唱があう女

「ええー」

ふと番号が恋しくなった男

ドアが開いて影が入室した

薄明かりの部屋、数を増やして散乱するグラスの類、壁に掛かるハンガーに外套が三着、空になったポテトに居座る皿、恋人みたい衣を寄せ合う海老フライ


「ギター?」

「ああ、練習しててな」

「次、順番だよ」

「ああ、秋元順子さんの愛のままで...それシカできないから」

あっ、しか、ダ 男

お前は黙ってろ 女

10番

6月