ある新刊本の紹介で、「日本は衰退期に入った」という一文を目にしました。

その通りだと思います。

ただし、その後に続く文章には、やや「?」が。

「だが、多くの人々はその現実から目をそらし、妄想的な『富国強兵』路線にしがみついている」

うーん・・・

違うんじゃないかな・・・

この『富国強兵』路線が指しているのは、おそらく、現政権の安全保障政策と経済政策(特に金融政策)。

これらは、日本が衰退期に入ったからこそ、絶頂期にはさほど気にしなくてよかったことにも、被害を最小化するために打たれている対策。

私はそう捉えています。

日本の絶頂期から連続して行われているものではなく、日本の衰退傾向が顕在化し始めてからの政策ですから。

これを、「妄想的な『富国強兵』路線」と呼ぶのは、どうでしょうね。

特に、金融政策。

人口減少社会では、総需要が減り続けることになり、自動的に経済はデフレ圧に晒されることになります。

デフレは、年金生活者にはありがたい環境ですが、若い世代には「仕事がない」という地獄、現役世代には「仕事がなくなる」という地獄をもたらします。

デフレは、老人の平穏を守る代わりに、未来を奪うのです。

その、若い世代の未来を奪う状況を、回避し、驚くレベルで雇用を改善させている政策が、この数年の金融緩和。

これを、「金融緩和は、日本が再び『富国強兵』を果たすための政策」としてしか捉えていない“知識人”が多いのが、情けないやら、悲しいやら。
日本の悲劇です。


確かに、人口減少でデフレ圧が掛かっている状況ですから、金融緩和をしても簡単にはインフレにはなりません。
しかし、デフレにならないようにする効果は出ています。

これを、「大規模金融緩和でもインフレにするのは無理だったのだから、やめてしまえ」となったら、どうなるか?

日本はデフレに転がり落ちることになります。

どうか、お願いだから、
「日本は衰退期に入ったのだから、金融緩和で無理やり高度経済成長のリバイバルを目指すのは止めよう、無理がある」
等と主張しないでほしいと思います。

日本が衰退期に入ったからこそ、金融緩和が必要なのです。

日本が衰退期に入り、人口減少によって経済に自動的にデフレ圧が掛かる国になったからこそ、金融緩和によるデフレ阻止は不可欠なのです。

他の話題なら、感覚論とレトリックを駆使して、自分達の理想郷を語ってもいいけど、金融政策だけはマクロ経済を勉強してない人は語らないでほしい・・・