先日久しぶりに立ち木打ちをやりましした。その際のメニューが肘当てモノばかりだったこともあり、あれから肘当てのことをモヤモヤ考えています。

肘打ちではなく、肘当て。
ムエタイ式の回す肘打ちではなく、身体の並進に合わせて肘を突き出し、相手の腹部に深く突き刺す技です。

イメージで言うと、漫画「拳児」に出てくる八極拳に近い肘の当て方が、(特に那覇手系でしょうか)空手の型には頻繁に出てきます。

この肘当て、立ち木のような止まった相手に重く強烈な衝撃を与えるには実によい技ですが、現在の空手競技では、ルールを問わずほぼ捨て去られた状態です。

打撃の攻防に特化したルールでは、肘当て遅すぎて相手に当てること自体が至難。自由組手をやった後で、型の肘当てを行うと、「なんたる机上の空論!」と言いたい気分になります。(最近、自由組手なんて全くしていないので、正確には「なりました」「なったものです」)

しかし、そんな肘当てを立ち木に当ててしまうのは、この技術に一定の実戦性があると、感じるためです。

打撃の当て合い、効かせ合いの中では使い道の無い肘当てですが、掴みが出てくると出番が出てきます。
もっとも、すぐにテイクダウンに向かってしまう総合格闘技のルールではやはり出番はありません。肘当ての出番が出てくるのは、立ったまま相手を投げようとするルールでの攻防です。

一年半ほど所属した合気道会派の自由組手がまさにそれでした。
打撃はフルコンタクト空手、投げは合気道全般に見られる“立ち関節”ものと、首投げ。

このルールでは、はじめは打撃から駆引きが始まりますが、途中からは首の取り合い、肘・手首の取り合いが攻防の主体となります。

このルールでの打撃攻防→首取り攻防への変化の“際”では、歩み足逆突のような踏み込み打撃がよく決まりました。
打撃専門ルールならば遅くて入らない打撃が、組みもありとなると、打→組移行の瞬間にその打撃が入る場面が出てくるのです。
(決めやすくするには、受動でなく能動。即ち、打→組の移行を自ら起こして相手に対応を促すのが肝要)

当時はそこで打撃を止めてしまっていました。
しかし、そこから更に歩み足をもう一歩進めれば、相手との距離は完全に詰まり、本稿の主題である肘当ての距離になります。
相手が逆突きへの反撃としてこちらの首(中段を突いているので首が比較的低い位置にあります)を取ろうとすれば、肘当ては更に当てやすくなります。

在籍期間が短く、あまりに自己流なコンビネーションを自由組手で十分試すことはできませんでした。また、歩み足逆突きが入ると相手が驚いてすぐに後退してしまったので、追い打ちには肘当てでは遅く、使えない場面も多々ありました。

しかし、アドレナリンが放出された状況であれば、ルールある試合だからこそ出るあのバックステップは無いでしょう(戦略的撤退はルールでは守りていないと中々できるものではありません)。

そこに肘当ての出番があるはずです。
次の打撃に備えて、バックステップではなくその場で体を固くする相手。あるいは、 状況を打開するために、相手を掴んで崩そうと、足から地面に根を生やし手を伸ばしてくる相手。
これらの相手に、肘当ては有効なはず。

・・・書いている内に、例によって妄想成分が多いことに気がつきました(笑)。


言いたかったことは、
肘当て(肘打ちではなく)は、打撃ルール(打撃の当て合い・効かせ合い)や総合ルール(掴んだらグラウンドに移行)で使いにくいものの、捨てては勿体ない技術だ、
ということ。

安易にグラウンドに移行できない状況で、打撃あり組みありの攻防に巻き込まれた際に、大いに力を発揮するのが、肘当てでは無いかと思うのです。