http://mobile.nytimes.com/blogs/krugman/2014/11/04/japan-on-the-brink/

クルーグマンblogから。

クルーグマンが、日本の消費税論争に対して、自分の意見を述べています。

増税賛成派は、このまま政府債務が膨らめば、日本の財政の健全性は失われ、やがて日本国債は暴落(金利が暴騰)するとして、増税を主張します。
一方で、増税反対派は、いま増税すれば日本経済はデフレから脱却できず致命的な打撃を受けると論じます。

クルーグマンはこの対立を、「信頼性」に関する論争だと整理します。
前者は、財政に対する信頼性が失われるリスクを論じ、後者は脱デフレに対する信頼性が失われるリスクを論じていると。

クルーグマン自身がどちらを支持するかは、以前から一貫しています。

But it’s all about weighing the risks. Right now, the risk of losing anti-deflation credibility looks much worse than the risk of losing fiscal credibility.

財政への信頼性が失われるリスクよりも、脱デフレへの信頼性が失われるリスクの方がずっと恐ろしい、と。

クルーグマンの理屈はこうです。

when a country borrows in its own currency and doesn’t face inflationary pressure (quite the contrary), it’s very hard to see how a Greek-style crisis is even possible.

政府が自国通過で債務をしているなら、そしてその国の経済がインフレ圧にさらされていないなら、ギリシア式の財政危機が起こるとは、到底思えない。

Short-term interest rates are controlled by the Bank of Japan; long-term rates mainly reflect expected short rates.

国債の短期金利は日銀がコントロールしているし、長期金利は期待短期金利が反映されるもの。

Yes, investors could push the yen down, but that would be a good thing from Japan’s point of view.

もちろん、投資家達が円を暴落させることは可能だが、それは日本経済にはむしろ良いことだ。

Posen says stocks could crash, but I guess I don’t see why if interest rates stay low and corporate Japan becomes more competitive thanks to a weaker yen.

ポーゼンは、(国債が暴落すれば)日本の株価が暴落すると言うが、私からすれば、金利が低く押さえられ、しかも円安によって日本株式会社が競争力を増す中で、そんなことが起こるとは到底考えられない・・・


クルーグマンは、最近日本国内で騒がれている「円安の害」については論じていません。
しかし、総合的には円安が日本のGDPを押し上げる状態にあることは、マクロ経済モデルが示しているところ。クルーグマンも、それを基本とする立場でしょう。

私も、クルーグマンの意見に賛成です。

若者の未来を奪うのは、将来に繰り越される政府債務ではなく、デフレ脱却の失敗の方です。

デフレ脱却が果たされ、モノに対する円の価値が相対的に下がっていけば、円建ての政府債務の重さは自然と軽くなります。
カネが世間を巡り、これから就職する若者に職をもたらし、そして将来の債務を減らすのがデフレ脱却です。

デフレ脱却に失敗すれば、カネは世間を巡らなくなり、若者の職は減り、政府債務は重いままで、税収も落ちていきます。

そんな未来はまっぴらゴメンです。

日本は、そんな暗い未来に突入してしまう瀬戸際にいます。

クルーグマンのエントリのタイトルは、「Japan on the Brink」。

この瀬戸際で、若者から未来を奪う側に舵を切らせるわけにはいきません。

※ ※ ※

一つ前の「Why Don’t We See More Macroeconomic Populism?」というエントリも、興味深いです。

↓の一節は、クルーグマンらしい皮肉が効いています。

The funny thing is that when you ask for justifications for pursuing hard money and tight budgets in a depressed, low-inflation economy, the answers you get often start from the presumption that money-printing and deficit finance are immensely tempting to politicians, so that you don’t dare let them get even a slight taste of these addictive drugs. This is often said in a tone of great wisdom, and presented as the lesson history teaches us.