藻谷浩介氏の著作やコラムはとても勉強になるものが多いのですが、時々、苛烈なイデオロギーがかいま見え、ゲンナリさせられます。
(お兄さんの方も同じです)

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/teiron/article/104150

「事実を確認せずに先入観だけで突っ走る議論ほど、始末が悪いものはない。
 たとえば中国との経済競争。日本対中国(香港を含む)の貿易収支は、昨年12年ぶりに日本の赤字となってしまった。震災の2011年にも2兆円近くあった対中貿易黒字が、1兆円の赤字に反転したのだが、貿易の黒字化を狙った円安誘導で逆に赤字を拡大させた安倍政権の関係者は、このことをどう思っているのだろう。」

《貿易の黒字化を狙った円安誘導》という議論のスタートが、事実に基づいておらず、先入観だけで突っ走っているのは、事実よりも理屈よりも前に安倍政権嫌いが先にあるからなのでしょう。

金融緩和が経済にプラス効果をもたらすルートは円安だけ? あるいは円安がメイン?

借りに円安がメインだとして、円安誘導で目指しているのは、貿易の黒字化?

実際のところ、金融緩和による経済への好影響のルートは、通貨安だけでなはいし、通貨安による輸出促進ルートについてもそのゴールは「貿易の黒字化」ではありません。
目指すのは(設備投資を促す)輸出の拡大であり、実は輸入がそれ以上に拡大して貿易赤字になろうとも、それはあまり大きな問題ではないのです。
(輸出総額が伸びていないではないか、との指摘であれば、まだ議論ができるのですが。今回の金融緩和が輸出拡大施策として機能したか否かについては、実は様々な分析・検証が行われています。ニュースで単純に語られる「円安なのに輸出は増えていない」論のウソを指摘するものも多数存在します)

金融緩和の効果とゴールを、二重に歪めて話を進め、上から目線で一方的に叩く。

印象操作が少々悪質です。

※ 地方都市消滅の記事を探していたら、藻谷氏のコラムに行き着きました。氏の得意とするテーマだけに期待して読み始めたのですが、「事実を確認せずに先入観だけで突っ走る議論ほど、始末が悪いものはない」と語る氏自身が、事実に基づかない先入観先行の議論を展開していることに唖然として、こんなエントリを書いてしまいました。