今日の日経新聞三面に「外食 人手確保難しい8割」という記事が出ています。
タリーズは時給を上乗せし、スターバックスは契約社員を正社員化し。

金融緩和による総需要の拡大、それによる雇用の増大が労働市場を売り手市場に変え、賃金が上がろうとしています。金融緩和の効果として知られるデマンドプルインフレに典型的な現象です。

雇用が無い中で、確実に一定数の労働者を雇用してきた外食産業は、労働市場に貢献してきましたが、その反面で買い手市場の強みを嵩に労働者を安く使い倒してきた面もありました。
いわゆるブラック企業論です。

デフレ経済において、常に無理な価格競争にさらされていた外食産業にとって、人件費の抑制は最重要の経営課題だったことは間違いありません。

競争は行き過ぎを生み、ブラック企業の登場に繋がりました。

しかし、ブラック企業を生み落とした環境そのものが、いま変わろうとしています。

脱デフレ政策のよい面の一つです。

「成長の時代は終わったのだから、デフレからは脱却できない。むしろデフレでいい」と、名目ベースか実質ベースかも明らかにせずデフレを容認する水野和夫氏は、デフレ下で若い世代が奴隷のような雇用に甘んじなければならなかった状況をどう見ているのか。

水野和夫氏は、アベノミクスで非正規雇用の人口が増えた、と最新刊で批判をしていましたが、とんでもないミスリードです。

失業者が非正規雇用者として吸収され、
失業者人口が減少したことを、覆い隠し、正規雇用が減って非正規雇用が増えたように論じているのですから。

「派遣社員」の雇用の現場にいれば、時給をかなり上乗せしなければ、欲しい人材が取れなくなっている昨今の状況は体感できるものです。

我々の業界でも、優秀な人材を安く買い叩く実態がありましたが、日に日にそれはできなくなっています。

企業の“ブラック”性は、総需要の喚起によって終わろうとしています。

日本では、金持ち優遇・弱者いじめと談じられることの多い金融緩和ですが、実は社会的弱者に復活の機会を与える政策だということが、日本においても実証されてようとしています。

クルーグマンのような弱者側に立つ超リベラル派が、やれ!と強く訴える政策なのですから、当たり前と言えば当たり前なのですが。

いずれにせよ、ブラック企業の終わりは、社会にとってよいことです。

非正規雇用者の賃金があがれば物価もあがり、すぐには賃金の上がらない正規雇用者はしばらくは割りを喰うことになりますが、それはつまりは痛みの分け合いです。

なぜかその部分だけフォーカスし、「アベノミクスで損をするのは庶民ばかり」と論陣を張る人々の欺瞞を、私は許しません。