新垣清先生の身体操作論の中で、意味不明度ナンバーワンだったのがタイトルの「大腰筋を正中線に激突させよ」でした。

沖縄武道空手の極意〈その3〉/新垣 清

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そもそも大腰筋は意識することも難しい筋肉です。その上、筋肉がその収縮で付着する骨を動かすのは理解できても、筋肉を動かして何かに激突させると言われても「その動力は何よ?」と疑問符が浮かびます。

そんなわけで分かりにくいにも程があると、この表現を見るたびに半ばキレておりました。

しかし、最近ようやく新垣先生が言わんとしたことが分かったような気がします。

おそらくは、野球などのスポーツで独自の上達理論を展開している手塚一志氏の“骨盤力”と同じことを言われていたのでしょう。

骨盤力 アスリートボディの取扱い説明書/手塚 一志

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手塚氏の骨盤力は、骨盤を仙骨と腸骨に分け、2つの腸骨が作る“軸受け”の中で軸としての仙骨を小気味よく回すことでムチのように体を振ることで得られるスピード、キレ、パワーのこと。

言い換えれば、仙骨関節を使うことで、下半身が運動量をロスなく上半身のしなりに伝える身体操作、となるでしょうか。

手塚氏は、仙骨と腸骨を分割した後に、腸骨をハンドルだと思ってこれを小気味よく切り返す動きを行い、仙骨をブラッシングさせる、なんて言い方をされています。

この表現が分かりやすいかは人それぞれですが、大腰筋でなく腸骨を使った表現をすることで、新垣理論のような「大腰筋は動かす対象なわけ?それともそれ自身が動力源なの?」という混乱を招きません。

おそらくは、大腰筋で腸骨を振り、正中線にぶつけるようにすることが、結果として腸骨に乗っている大腰筋が正中線に向かう感覚になるので、新垣先生の表現もおかしくはないと思うのですが・・・

手塚氏の著作を補助線にしないと、皆目理解できませんでした。

さて、ウダウダ語った「大腰筋を正中線に激突させよ」ですが、総体的に見たその姿は、桧垣先生のダブルツイストそのものだと感じます。

コンパクトで小気味よいダブルツイストは、腸骨の軸受けの中で軸としての仙骨をブラッシングさせる手塚理論の骨盤力に繋がるのではないでしょうか。