昔お世話になった元和道流の師範代が、欧州に旅立つ前にドサッと残していった武術関連のムックをパラパラめくっています。

もらった当時はあまり興味が無かったのですが、今読み直すと、「それそれ、それが知りたかった!」と言いたくなるような記事があり、勉強になります。こういうものは、その時が来るまでは、全く価値が分からないもんですね。

タイトルの内容は、2004年発行のムック「動きの達人」(ベースボールマガジン社)に掲載されていた三枝誠先生の合気道の身体操作解説です。今は養神館に戻られたそうですが、当時は養神館から独立していたようです。それもあってか、自由な立ち場から、養神館の基本動作や塩田剛三の身体体操の解説を行っています。

興味深かったのは、仙骨にポイントをおいた構えの姿勢の説明。

$はみ唐さんの空手、コンサル、親バカ日記-仙骨
(仙骨)

↓の動画にあるような養神館の基本動作(動画の井上先生は現在組織としては養神館の方ではないとのことですが、技術的には養神館ということで・・・)の構えを作るにあたり、三枝先生はまず両足の踵を付けてつま先を思い切り外に開いた立位姿勢を取り、この状態で仙骨を立てます(サンチンで言う下腹部の巻き上げと同じ動き)。逆に言うと、仙骨を立てないと立位が保てない立ち方とも言えます。

そして状態の姿勢を維持したまま両足を開き、中心軸を崩さないようにして重心を移動させ、体軸が前傾した基本動作の構えに入っていく、という説明です。



この構えを仙骨から解説している方は他にいなかったので、発見!という気分です。
吉田始史先生の「仙骨姿勢講座」から仙骨マニア(?)になった私の場合、仙骨を題材に説明してくれる解説が一番分かりやすいんです。

↑の動画の井上強一先生は、「呼吸力の鍛錬」という本の中で基本動作の前傾姿勢を、後ろ足から首までを一直線にする、と語っていますが、この“一直線”という表現も三枝先生の仙骨視点の解説と通じるものを感じます。

ちなみに、この基本動作の前傾姿勢は、昔は長時間同じ姿勢を取らせてしごいたとのことですが、仙骨の向きを工夫すれば、長時間維持してもそれなりに耐えられそうな気がします。敢えて長時間この姿勢を取らせるのは、楽に立ち続けられる仙骨の位置を自得させるためなのかも。

などと、合気道経験ゼロの癖にいろいろ妄想してしまいました。

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また、三枝先生は、塩田剛三がよく見せた相手の足の甲に足の親指を立てて崩す技についても、「仙骨の引き寄せと中臀筋の緊張」がポイントであると解説しています。この辺りは、吉田始史先生の解説とも一致しています。
新垣清先生が言う「武術の達人や名人が、足の指一つで相手の足の指や甲を踏みつけ動けなくした。あるいは動こうとした相手の足の指の肉が削げたなどの逸話は、達人と呼ばれる人間が体幹部の筋肉で脊髄をまっすぐにして、位置エネルギーを最大にして使うことが可能になった結果である」(沖縄武道空手の極意その参、p.75)もこれだと思います。

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