新宿オペラシティの3階にある小さな音楽ホール、近江楽堂。

昨日はそこで、バロック時代の楽器による、バロック音楽演奏会「Cipango consort (チパンゴ・コンソート) 」を聞いてきました。

きっかけは思わぬところから。
この日の首席奏者の方 が、嫁が通っていたイタリア語学校のクラスメイトだったのです。
「同じクラスにバイオリン弾いてる人がいる」とは聞いていましたが、今回お誘いメールをもらい驚きました。勝手に、自分のように趣味でバイオリンを弾いてるイメージを持っていたのですが、さにあらず。国内の有名な芸術大学を卒業し、ウィーンに留学し、国際コンクールで優勝したこともある、本物のプロバイオリニストだったのです。

驚きましたが、これもいいご縁と機会。
喜んで聞きにいくことにしました。

 * * *

ところが当日、残念なことに仕事の切り上げがうまくいきませんでした。
近江楽堂に着いたのは、既に演奏会の前半プログラムが終わった時。仕事では上手く行かない局面がいくつか続き、加えてせっかくの演奏会にも遅れてしまったこともあり、気分はねじれ状態。
楽しめるかな、そんな不安を感じながら鑑賞することになりました。

しかし、後半のプログラムが始まると、そんな不安は溶け去りました。

この日の演奏は、バロック時代の楽器によるもの。
リュートやチェンバロといったバロック時代ならではの楽器、今とは響きの異なる当時のバイオリン、ヴィオラ、チェロが登場し、耳目を奪われました。コントラバスにそっくりな楽器もあり、そうと信じて聞いていたのですが、あれはヴィオローネという別の楽器だそうです。
これらの楽器たちは、音の質感や響きの浸透力では現代の楽器に及びません。けれど逆に、少し枯れ奥ゆかしいその音色が心地よく、バロック音楽の重なり合う響きによく合うのです。
いや、逆かもしれませんね。バロック音楽があんなにも音と音を重ねて層にしていくのは、こうした楽器たちに合わせてのことなのかもしれないと思いました。
音も少し小さいのですが、狭い楽堂で聞くのにもちょうど良いと感じました。大ホールではなく、教会や貴族の屋敷で演奏することが多かっただろうバロック音楽。本来の楽器で、本来に近い聞き方ができたように思います。

私にとっては、3曲目、コレッリの「ラ・ノッテ・ディ・ナターレ」が最高でした。
チェンバロの厳かな響きと異国情緒溢れたリュートの音色、それらを取りまとめて腹に響くチェロとヴィオラ、そして華やかに飛び跳ねるバイオリン。それらの音が重なり合って層になり、調和しつつも融合はせず、時にほぐれ、また重なる・・・華麗さと荘厳さが同居する不思議な魅力と迫力。
心に迫ってくるものがありました。

心の中の彦麻呂も思わず叫びます。
「これぞ、音と音のミルフィーユや!」
(演奏者の皆さんごめんなさい)

本当に気持ちよく音に酔った30分でした。

演奏会終了後、招待してくださった首席奏者の方とも話をしました。
演奏を聞きながら、こんな凄い人がうちの嫁の友達? うっそ~?とちょっと疑ってしまいましたが、「また、お茶飲もうね~」と言い合っている姿を見ると、どうやら本当に友達のようです。
イタリア語学校繋がり恐るべしですね。

その後は、同じく演奏を聞きにきていた他のクラスメイトの方々と夕食を食べてから帰りました。
(初老のご夫婦で、旦那さんは医療コンサルタントをされている方でした。この時のおしゃべりも楽しかったのですが、それはまた別の機会に。)

豊かな気持ちになれた素敵な夜でした。