出張からとんぼ返り、なんとか稽古に間に合いました。

得した気分♪


さてさて、はみ唐さんが今通っている空手の稽古は、主にダンススタジオを借りてやっています。

「なんでダンススタジオ?」

と当初は思ったもんですが、実は鏡が多くてどの角度でも自分のフォームをチェックできてとても稽古しやすい! いいもんですわ。


しかし、欠点も。

常設ではないからサンドバックが利用できない。

大きなビッグミットなんかも置かせてもらえない。

毎回、先生がキックミットを車にわんさと積んでやってくるわけです。


キックミットも悪くないのですが、やはり、攻め手が自由にコンビネーションを組み立てられないのが少し窮屈。特定の技を磨くにはいいけれど、攻撃の組み立てを作るのには向かない。

ビッグミット使いたいなあ・・・



・・・と思っていたら、今日はスタジオにど~んと巨大な黒い物体が!


はみ唐:「おお、ビッグミットじゃないすか!どうしたんですか?」

先生:「買いました。無理やり車に積んで持ってきましたよ♪」


聞けば、この道場初の昇段審査のメニューにビッグミット打ち込み1分×10ラウンドを入れるとのこと。

来月に昇段審査を受けるA先輩(日本人、アゴひげがセクシーと外人女性道場生に評判)に、ビッグミットに慣れてもらおうということらしい。

(他の道場生のミット打ちはいつもどおりキックミット)


先生:「はみ唐さん、持ち手になってください。ガンガン前に出てプレッシャーかけてくださいね」


懐かしい・・・。

フルコンタクト空手は顔面パンチが禁止のせいで、試合やスパーリングでは手はガンガン前に出てくる。“効く打撃”をぶち込むには、相手のプレッシャーを跳ね返したり、いなしたりしながら、上手にスペースを作らないといかんのですわ。


さっそく持ち手になって打ち込み開始。

A先輩はさすがにフルコン最大手のK会館で茶帯までとっただけあって、はみ唐さんのかける圧力をうまく跳ね返したり、いなしたりする。跳ね返す打撃、回り込んでの打撃の数々。お見事。

ただ、A先輩も現役バリバリ時代からは遠ざかっているから、ちとバテ気味。1分とはいえ、10ラウンドはしんどそーだなあ・・・


・・・と考えていたら・・・


先生:「はみ唐さん、やってみたいでしょ?」

はみ唐:「押忍(ばれたか・・・)」

先生:「じゃあ、はみ唐さんは1分×2ラウンドね」


よっしゃ、2ラウンドくらいなら動けるはず(ホント?)。


先生:「じゃ、はじめ!」

今度はA先輩がお返しとばかり、ビッグミットを持って前へ出る、出る。重い、重い。

この道場で空手を再開してからは、プレッシャー無しの状態で、突きと蹴りを別々に打ち込んでいたせいか、まずプレッシャーの存在にビクッとくる。


最初は左自然体からの前足での前蹴り!・・・と思ったら、ビッグミットが前に出てきて間合いが潰される。

左ジャブで止めて・・・いや、止まらない! 

全身で出てくる相手は左半身の左手一本ではそう簡単には止まらない。


忘れていたこの感覚。

間合いを潰されて、攻撃の自由を奪われていくこの感覚。

学生のとき、授業もさぼって空手ばかりしてた時、毎日、この感覚を味わいながら闘っていたんだ。

空手の試合はカンフー映画や殺陣じゃない。相手はこちらの攻撃がしにくいように、しにくいように動いてくる。

その圧迫感。不快感。

力で押し返せば押し返される・・・果てしない地上戦・・・いや、むしろ、泥沼


打撃のスペースを作るには頭を使わにゃ

思い出せ、こういう時は・・・バックステップして奥足での後ろ蹴り!

入った。・・・また左自然体に戻って左ジャブ。ビッグミットは止まらない。でもそれは想定の範囲内

すかさず右ストレート!・・・に隠してスイッチ

奥足になった左足のつま先でジャンプして、体全身でぶつかる左ヒザ!

ビッグミットの前進も止まる。

右の下突きを打って、ビッグミットが押し返してきた時に左にサイドステップ・・・で右中段回し蹴り!


つながった。

思ったより動ける。昔の動きがよみがえる。

ドイツ語の授業をサボってトレーニング体育館でスパーリングやミット打ちをしていた情景も。

勉強もせず、強くなることだけ考えていた。

危うくドイツ語落として留年しそうになった・・・

初めて下段回し蹴りを思い切り蹴れた瞬間の感動。

レバーを蹴られて悶絶した時の痛み。

そして湿布のにおい・・・

そうそう、いつも湿布してたっけ。


3年生になって専門課程に入ったとき、なぜやめてしまったんだろう。

本当にやりきったのか? 満足してやめたのか? 専門の勉強のためって言い訳じゃなかったのか?

このビッグミットのかけるようなプレッシャーから逃げたかったのか?

自分がどうあがいても勝てない相手の存在に萎えたのか?

自分に負けてたんじゃないのか?



打ち込みは続く。2ラウンド目。

まだ動ける。

今後は、蹴りを少なめにして突きを連打!

単調にならないように・・・右の下突きをダブル。2発目の時にスイッチして左ストレート&下突き!

できた。


この動きは学生のときはできなかった・・・。

4年生の時に、やめずに4年間やった昔の仲間たちが見せてくれたテクニック。

あのプレッシャーから逃げなかったあいつらは、プレッシャーを撥ね退ける技を身に着けていた。

正直言って、負けたと思った・・・


もしかして、10年たって、俺はあのとき逃げたものにもう一度挑もうとしてるのか?

バカバカしい。セルフカウンセリングか?

でもいいか。

空手は楽しい。


 ・・・


最後に蹴りをと思い、。前蹴りを入れたところで、2ラウンド終了。

バテた。たった2分間だったけれど全部出しつくした感じ。

でも・・・すっげー気持ちよかった


 ・・・


稽古後、Tさん(イギリス人、日本語うまい)とMさん(日本人女性、技きれい)がよってきた。

Tさん:「はみ唐さん、楽しそうでしたね。キツそうだったけど、いい顔してました。今度は私とやりましょう。」

はみ唐:「押忍」

Tさんには、何か見えたのか・・・。


Mさん:「はみ唐さん、ビッグミット蹴りながら、笑ってたよ」

はみ唐:「うそ?」

Mさん:「ホント。ニヤニヤ~って」

はみ唐:「え?」

Mさん:「ちょっとキモかった


帰って寝ろ!(うそ)


なーんか、吹っ切れた気持ちになったいい稽古でしたわ。