【目的】
本提言は、犯罪、交通事故、民法上の不法行為などにより損害を被った被害者が迅速かつ確実に救済され、加害者に対しては「逃げ得」を許さず適切な責任を負わせる社会制度を構築することを目的とする。
【制度の基本構造】
1. 被害者は、加害者が特定されていなくても、国に対して損害賠償の請求訴訟を起こすことができる。
2. 裁判所は被害者の訴えに基づき、当該被害を回復させるために要する費用や遺失利益を基準に損害賠償額を仮確定する。
加害者の情状や過失割合などはこの時点では考慮されない。
被害者の過失があれば、その分は減額される。
3. 国は、仮確定額の範囲内で一定の上限を設けた配当金を被害者に支払う(迅速な仮救済)。
4. 加害者が特定された後、国が求償権を行使し、賠償金を加害者に請求する。
この時点で賠償金額を本確定させる。
加害者の情状や過失の度合いにより本確定額が減額された場合でも、被害者への配当済額は減額されず、差額は基金が負担する。
逆に加害者に対し、懲罰的賠償金の上乗せが適用される場合もある。
【徴収機関の再編】
・損害賠償金の徴収および懲罰的賠償金の徴収は、新設の機関ではなく、以下のような組織再編により対応する:
現在、国税庁(財務省所管)および社会保険庁(厚労省廃止済)の機能を統合し、両庁をそれぞれの省から切り離して独立機関とする。
新組織は国の歳入を一元管理する機関として、国税徴収、社会保険料徴収、損害賠償金および懲罰的賠償金の徴収を担う。
徴収には国税徴収法の規定を準用し、強制執行も可能とする。
【基金と懲罰的賠償金制度】
・国家が立替える損害賠償金の財源として「被害者救済基金」を設置。
原資には、加害者からの求償による回収金、罰金刑の一部、懲罰的賠償金などを充てる。
・懲罰的賠償金制度の導入:
加害者が不法・違法行為で金銭的・心理的利益を得た場合には、通常の賠償額に加えてその利益に見合った懲罰的賠償金を科す。
この賠償金は被害者には配当されず、すべて基金に充当される。
目的は「不法行為で儲ける」あるいは「加害で満足する」行為への抑止。
例として週刊誌報道による名誉毀損、ネット上の誹謗中傷による利益獲得行為、繰り返される侮辱・攻撃的言論などを含む。
【虚偽請求への対応】 ・制度の悪用を防ぐため、被害が存在しないにもかかわらず虚偽の訴訟を起こし賠償金を詐取しようとした者には以下の措置:
・刑事罰を科す(詐欺罪相当)
・支払い済みの配当金はすべて没収し、国税徴収法に準じて強制徴収。
現在でも見られる嫌がらせ目的訴訟(例:日本保守党支持者等によるもの)への対策にもなる。
【制度の理念】
本制度の根幹は、
・被害者の迅速な救済
・被害者と加害者の間に政府機関が介在することで心理的・実務的負担を軽減
・加害者の逃げ得を許さず、徴収手段を国家が責任を持って行う点にある。
・被害者にとって、加害者の情状や支払い能力などは本質的に関係がない。
被害者救済は社会全体の責任として扱われるべきである。
【今後の展望】
・法制度の整備として、民法・刑法の改正、懲罰的賠償金に関する立法、徴収機関設置のための行政機構改革を要する。
・パイロット的に重大犯罪や明白な過失による交通事故から導入し、順次対象範囲を拡大していく案も併せて検討。