朝食にカフェでモーニングサービスのトーストを齧りながら、一等軍曹殿から本日の行程についてのレクチャーを受けた。

 そう今回の旅は鬼軍曹プレゼンツで予定が組まれているのだ。

 なんだかとても歩きの行程が多いように思うのは気のせいだろうか? きっとそうだろう⋯。

 移動の車中は助手席で軍曹の解説を聞きながら、美しい海岸沿いの風景を楽しむ。

 走る車から海にほど近い山をふと見上げると山上に建物らしきものが、ちらりと見えた。


 あんな所に何か建物がありますよ、とハンドルを握る軍曹に伝えると「あそこへ行くんだよ」とのお返事⋯。

 イヤな予感⋯、登るの?⋯だろうなぁ。

 駐車場に車を駐めて、イザ出陣じゃ!



 しかし駐車場といい、参道といい、人がいないのは、どうしてなんだろう?何故なんだろう?(この時の私は知る由もなかった)



 アスファルト舗装が石畳に変わるのは、参道として実に風情があるとは思うものの、足を踏み出すと凹凸が激しく実に歩き難いのだ。


  参道の斜面はやがて石段へと変わるが、やはり凹凸があり「十七曲がり」「1159段」「標高差百数十メートル」のワードと共に肉体的、精神的ダメージを与えてくる。


 これは「試練」だ。過去に打ち勝てという「試練」と私は受けとった。



 とは言うもののディアボロに変化できるはずもなく、登りの時間を消し飛ばして、登頂した結果だけが残るなんてこともない⋯。


 1番目の曲がりで既にグロッキーな私を尻目に、軍曹はサクサク、スタスタと石段をクリアしてゆく。


 日頃の運動不足に我が身を呪い、汗まみれになって軍曹を追いかける。


 時折私が追いつくの待ってくれている軍曹には感謝しかないが、あんた元気すぎるだろ。


 樹木の間からの美しい景色を眺めながら幾度かの休憩。











 しかし私たち以外に登って来る人をほとんど見ないし、降りて来る人もほとんどいない。


 私たちを抜いたりすれ違ったりする人は、トレイルランニングよろしく走っているのがほとんどだ。


 この参道を走るとかアタオカ(失礼)かよ、などと悪態を吐きながら、軍曹の後を追っていると漸く石段が消え坂道となる。


 そして見えてきた建物、あれは売店ではないか!何か冷たい飲み物をと売店に入ると、今や珍しい瓶の飲料水の自販機があるではないか。



 ジンジャエールを買いベンチに腰掛け飲みながら、ふと横を見ると目に入ったのがロープウェイ乗り場の文字⋯。


 えっ、私たち以外のここにいる人たちは、つまりロープウェイでやって来たと言うことなのか?


 呆気に取られている私を見て軍曹は、登るから意味があるんだよと笑っている。



 確かにそうかもしれないが、私はそれほど信心深い人間ではないので楽をするほうがいいのだ。


 しかし今回はお任せの旅だ、文句は言うまい。何よりジンジャエールが美味いのは登ったおかげだ。


 さて気を取り直して参詣するといたしますか。



To Be Continued