放浪大工のニッキ


正直、現場に「学歴」というものは役に立たないと思う。
それは「監督」という業種においても例外では無いと思う。

ただ、彼に出会って少しだけものの見方は変わった事がある。
常々アクシデントが起こる現場に必要な「応用力」というのは
お世辞にも合格点!!とは言えなかった。
ただ、「暗記力」に関しては感服するところがあった、
それは今でも忘れられないぐらいだ。
材料の搬入の日づけ、外壁工事の段取りの工程等、
彼は手帳を見なくても頭に入れていた、
数多くの現場を抱えていたにも関わらずだ。
受験勉強で培われただけであって、
あの時は流石に「あっぱれ」と思った。

そう、彼は「立命館大学院卒業」というヘマをしなければ
出世コースを約束されていた人間だったのだ。

同じ現場にいるとはいえ現場監督もなんだかんだ言って
「サラリーマン」という事に変わりは無い。
すでに崩壊しつつある学歴社会とはいえ、
未だにこびり付いている会社は多いらしい。
もっとも我々職人には関係の無い話なのだが、
今回の主人公の望月君には「出世」という意味では
大いに影響する要素になってくるのだ。


さて そんな望月君だが、彼の場合は学歴に驕る事無く
仕事に取り組んでいたように思える。
そう思ったのは私が「これだけは覚えておくように」
といった事はすかさずメモを取った事だ。
前回述べた通り私は「職人の心構え」みたいな事ばかり
話していたのだから、おそらく会社側からすれば
「そんな事メモする必要は無い」
と言われておかしくない事ばかりだったし、
彼の記憶力ならその場で覚えれただろうだからだ。


あの時、私は「この子は将来、現場から重宝される人材になる」
そう思っていた。


放浪大工のニッキ