モンパルナス駅は近代的な造り。パリにはサンラザール駅、北駅、東駅、リヨン駅、オーストリッツ駅とたくさんの駅がある。ボルドーへ向かう列車はモンパルナス駅から出る。この駅はとても広いけど比較的わかりやすい。出発ホームで待ち合わせだ。何番ホームから出発なのか見てくるからとみんなを柱の近くに待たせて離れた。
20歩ほど離れたところで「片瀬サァーン」と呼び止められる。振り返ると5人の真ん中にギリシャ彫刻みたいな体型のフランス人の男性がいる。にやにやと笑顔で、片瀬、どこいってんのって顔してる。アランが先に見つけてくれたのだ。彼は昔から私をからかう癖がある。去年の夏、博多で数年ぶりに会った。その時の彼は、Tシャツに短パン、友達から借りた古い自転車で現れた。今回は冬ということと前日まで他の旅行者を案内していたこともあり、なんか、ちゃんとした格好。そうなると体格が良い分、様になる。フランスで彼を見れば、フランス人っぽく感じるかともと想像していたけれど、やっぱり馴染んだ雰囲気は変わらない。ただ、異国で皆を危険な目に合わせないようにという緊張から瞬間で解き放たれた私は、飛びつきたいくらい嬉しかった。心から安心できた。
優雅な食事の時間を楽しんで、暗いボルドーの街中を歩く。帰りは川岸まで出た。とても美しい橋がある。透き通る群青の風景の中に山吹き色の街灯が星たちよりも規則正しく並んで輝いている。人気のないバスケットコートの脇を通り、派手な装飾の小さな劇場を通り過ぎて、ホテルに戻る。
7人で列車に乗り込む。切符はアランが手配してくれていた。指定された座席に座りる。しばらくして、列車は静かに動き出した。パリの中心から離れるに従い、だんだんと一軒家が増えてくる。もっと離れると、なだらかな地平線が重なる穏やかな風景へと移り変わる。濃い緑や柔らかい黄緑が帯状に配置され、ところどころに何百年も変わらずそこにあるかのような家々が小さく寄り添っている。車内ではたわいもないお喋りをしていた。アランは初めて会う人でも、昔からの知り合いのように話しかける。そのおかげで、ごつい見た目とは裏腹に話しやすい。
ボルドーまでの3時間半は長くは感じない。途中の風景を眺めていた誰かが、「湖が多いね。」と言った。「あれは湖じゃないよ。昨日まで大雨で洪水だったんだよ。多分、これ、ぶどう畑。」えー?そうだったの。じゃ、昨日まで雨降っていたの?とびっくり。よく見ればあちらこちらに湖ができてる。その中で、両手を空に向けて広げている小人のような形に剪定されたぶどうの木がたたずんでいる。今朝、バトームーシュがサンルイ島まで回らなかったのも、セーヌ川の増水が原因だったらしい。「書いてあったじゃない。片瀬、わかんなかったの?」と急に先生っぽいこという。いけず。あなたが教えてくれたフランス語は私の頭の中の奥の引き出しに大切にしまいこんでいます。
ボルドーに着いた頃にはすっかり日は落ちていた。駅前のホテルを予約していた。ところが、駅が幅広い分、駅前も広い。アランですら、右往左往。通りの名前で探すんだけど、アドレスのにある番地がない。道がなくなっているよ、とアランも困惑ぎみ。しばらくして、その名前の道の途中になんかできちゃってて、離れたところから通りの続きがあるのがわかった。駅も工事中でテントに覆われていたため、駅の中心すらわかりにくくなっていたのだが、結局は駅の中心の真ん前だった。
夏生ちゃん、厚子ちゃん、西川さんで一部屋、美智子さん、美代ちゃん、私で一部屋。私たちの部屋は駅が窓がから見える。アランは一階下だった。荷物をおいたらすぐホールに降り、食事に出かけた。また、お腹が空いていた。今夜は少し良いレストランに行きたいと思っていた。アランが一緒なので、メニューも完璧に理解できる。ふふふ~楽しみ。アランは何の解説もせず長い足でたった、たったと歩く。暗くて人通りが少ない。古くて大きな建物のそばでおお~と感激していたら、アランが、「嘘やろぉ~~」と叫ぶ。どうやら、お気に入りのレストランが店休日だったようだ。ウロウロして近くにレストランを見つけて入った。古臭い感じが良い感じ。炭の香りが漂う。後ろにいる紳士が、マダーム、と声をかけてくれるのさえ、何だかワクワク。井戸のように、重い鎖を上げたり下げたりして、網を炭火まで下げたりあげたり。雰囲気がよく、テンションは上がる。大きな丸いテーブルに座った。私の正面にはアランと夏生ちゃんが座っている。美味しいものを食べるためにフランスにやってきた夏生ちゃん。アランも食べ物には相当うるさい。ふたりはきりりとした顔つきで、メニューを見ながら話し合いを重ねている。重要な会議みたい。牛の喉仏?は、アランが絶対食べるといっていただけあって、とても、食べやすくて美味しかった。添え物のポテトは最高。鴨肉や牛の腎臓、ミミガー(?)も。イカのガーリックソテーみたいなのは、日本酒にも合うと好評。ワインは4本。カボチャのプティング。幸せな私たち。今回の旅行の中でこの食事が1番贅沢で楽しめた食事のような気がする。後でわかったことだけど、この時のメニュー表、厚子ちゃんのには値段の表記がなかったらしい。何でみんな、値段を言い当ててるんだろうと思ったと言う。美代ちゃんが「女性ようメニューには入ってないのよ。厚子ちゃんだけがレディーって思われたのよ。」と大人のフォロー。
優雅な食事の時間を楽しんで、暗いボルドーの街中を歩く。帰りは川岸まで出た。とても美しい橋がある。透き通る群青の風景の中に山吹き色の街灯が星たちよりも規則正しく並んで輝いている。人気のないバスケットコートの脇を通り、派手な装飾の小さな劇場を通り過ぎて、ホテルに戻る。
明日はいよいよボルドーのワイナリー巡り。夏生ちゃんと厚子ちゃんと西川さん、お酒が好きな三人は部屋で盛り上がってるだろう。
贅沢な夜だった。
贅沢な夜だった。
