カルガモの親子のようにアランについて細い路地を歩き出す。いい香りがしてきた。カヌレのお店だ。顔色一つ変えずしこたまワインも飲む見事なフランス人のアランだが、甘いものもしこたま食べる。子供の頃は5リットル入りのアイスクリームを抱えてスプーンで食べていたらしい。美代ちゃんと私は甘いもの好き。アランにくっついて大喜びで中に入る。大量のカヌレが次々と焼かれていた。小さなカヌレと大きなカヌレ、たっくさぁ~~ん並んでいる。試食に小さなカヌレをいただく。とても美味しい。外はパリッと、中はしっとり。美代ちゃんはウィンドーに並んだ色とりどりのマカロンにも興奮している。アランが焼きたてカヌレを注文して外に出た。私も後で買おう。路地を進むと少し開けたところに出る。遠くからこの街を眺めるとこの塔を中心に街が広がっている。この眺めがガイドブックにはよく載っている。ところどころにとても小さなぶどう畑がある。とても澄んだ空気。ひんやりとしている。
このひんやりが私の体に影響し始めた。広場の近くには土産物などを並べる観光案内所があったのでみんなで入る。なんか、やばい。外に出て街をそぞろ歩き。石垣や小さな家たち。壁の間から見える、古い町並み。シンボルの塔。路地からは猫が覗いている。この上なく私好みの風景なのに、心に響かなくなりつつある。
お腹が痛い。お腹が痛い。
カヌレの店に戻る頃には、もう、風景は目に入らない。注文していたカヌレを受け取ったアランはご機嫌。私はもう、カヌレどころではなくなっていた。店を出てきたアランに「トイレ行きたい‥」と小さな声で訴えた。フランス、いや、ヨーロッパでのトイレ事情は難しい。旅立つ前にみんなに「行ける時に入っとかなきゃダメよ」なんて、偉そうに言ってた私が、今、地獄に落ちてる。アランは、「上にあるでしょ」と軽く答えた。そうっとそうっと石畳を登る。難しい。やっと車に戻った。だけど、アランは車に乗り込む。トイレまで連れて行くのだと信じて、これまた、そうっと乗り込む。車は動き出し、街を出る。この男、忘れてる。私のお腹は爆発寸前。
再び田舎道を走る。幸いなことに、近くのワイナリーに見学予約しているみたいで、アランはナビとお喋りしてる。到着。車を降りてすぐ、「ねぇ、トイレ‼️」といったら、「あ、忘れてた。」
許せない。

