「さあみんな、おやつの時間ですよ」
「わーい」「わーい」
「今日のガムちゃんは、よく噛んで食べるのよ」
「えー?おやつにガム?」「それに、ガムにちゃん付けなんておかしいよ」
「まあまあ、冗談に決まってるでしょ。今日はみんなにカン・ガムチャンを紹介したいのよ」「それ誰?」「誰だー?」「お前知ってるか?」
「高麗時代の英雄よ」
「何した人?」
「今から約千年前の1018年に高麗に侵入した契丹軍を打ち負かした人よ」
「どんな風にして勝ったの?」
「牛の皮を利用して水攻めにしたのよ」
「へえー、頭いいなあ」
「そうね、カン・ガムチャンは科挙にトップ合格したくらい頭が良かったのよ」
「ふーん。その人かっこよかった?」
「それが、背が低くて不細工だったらしいわ」
「えー!がっかり。ヒーローはイケメンって決まってるのに」
「元々はハンサムだったらしいんだけど、天然痘の神様を呼んで醜男にしたんですって」「へえー、変わってるなあ」「何でそんなことしたの?」
「その頃、ハンサムは出世しないと言われていたのよ」
「カン・ガムチャン将軍は何処で生まれたの?」
「落星岱(ナクソンデ)よ。生まれた時、星が家に入ったから、そう呼ぶようになったのよ」「えー?そんなの信じられない」
「他にもいろいろ伝説があるわ」
「どんな伝説?」
「高麗時代、漢陽(ハニャン)に虎がたくさん居て人々を脅かしていたの」
「それで、どうしたの?」
「僧に化けていた虎を叱り付けて仲間と一緒に去らせたのよ」
「他にはどんな話があるの?」
「婚礼に招待された時、人間離れしたハンサムな新郎を怪しいと思ったの」
「それで、それで」
「夜、花嫁と二人っきりになるのを待って襲ったのよ」
「えー!それでどうなったの?」
「新郎が猪の正体を現したのでカン・ガムチャンが矢で射殺したのよ」
「何で、猪だと分かったの?」
「新郎が婚礼で出された肉料理に眉をしかめたり、影に尻尾が見えたからよ」
「その場で殺せばよかったのに」
「そうね。婚礼の席だと人々が大勢いたからじゃないかしら」
「ふーん」
「とにかく、韓国の三大英雄の一人だから覚えておいてね」
「はーい!」
「ところで、ガムちゃんは?」
「はーい!よく噛んで食べまーす!」
と、幼稚園で教えているとは思えないが
名門の家柄にして頭脳明晰
武勇に長けている上に清廉潔白となれば
英雄の資質を殆んど兼ね備えていると言ってもいい。
外見的に難があったこで
より民衆から慕われたのかも知れない。