ソウル市カンナム区ノヒョン洞にあるエンターテイメント企画会社planC(プランシー)の
粱(ヤン)社長に初めて会ったのは、2010年夏、時事日本語学院のフリートーキングクラスでだった。
気さくで明るく、一見遊び人風の外見に、どちらかと言うと真面目な印象の多い他の生徒達と
上手くやれるのだろうかと、一瞬不安になったが、それは杞憂に過ぎなかった。
社長本人の飾らない人柄やエピソード、芸能界の裏話が面白いのは勿論のこと
他の生徒の話にも耳を傾け、人生の少し先輩なので、時には有意義なアドバイスまで戴いた。
授業の後に、クラス全員がご馳走して下さったりと心が広く、自然と人望を集めていった。
そんな粱社長が、それ以前から温めていて、具体化した企画の1つに
韓国を代表するベテラン歌手南進(ナムジン)と五木ひろしのジョイントコンサートがある。
南進氏とは以前から懇意だったようだが、このコンサートが五木ひろしとのジョイントになるまでには
大変なご苦労があったと推察する。
昨年末くらいだったろうか、五木夫妻と末娘を韓国に招待し、社長自ら空港の出迎えに始まって
ホテルや観光地やルート、各地点でのBGMまで選択するというきめ細やかさで
極めつけは、「この橋を渡ったカップルは別れない」というロマンチックな橋を通過しながら
ちょうど五木ひろし本人の曲を流すという徹底ぶりで、夫妻を大いに感動させたという。
そうした地道な努力は、大企業の心をも動かした。韓国三大放送局の1つである
MBCの全面的サポートを始め、韓国日産とも高額出資の契約書を取り交わすに至った。
6月18日のコンサートを控え、いよいよ本格的に動き出そうとした矢先だった。
誰もが想像だにしなかった規模で日本に大地震が起こってしまった。
韓国日産の契約発動は3月13日の予定だったが、上層部から待ったが掛かった。
私が聞いているのは、ここまでだ。粱社長の心労は察するに余りある。
社長は大地震直後に、日本の関係各社に対して個人的なお見舞いや、安否を尋ねる電話を入れた。
仕事の話は抜きにして、日本で会った人達を純粋に心配してのことだった。そして、誰よりも速く
義援金を送ってもくれている。
一方、同時進行中だった企画も心配だ。planC では3月7日迄に、近々日本で活動予定の
JYJ・東方神起・ビッグバン・2PM等と正式な契約を結んだばかりだった。更に新大久保の
コリアタウンで、これら韓流タレント御用達が売りのコーヒーショップやレストラン等を
展開する契約も交わしたばかりだったが、地震を理由にプロジェクトの進行に支障が出た。
東京芸大出身の粱社長は、日本に特別な愛着を持っており、アメリカの次に大きい
日本の音楽市場で韓国芸能界を発展させることを願うと共に、厳しい競争を勝ち抜いた
韓国の若者達が、目の肥えた日本人ファンを喜ばせたり、元気を与えることが出来ると信じている。
日本がこんな時だからこそ、そんな社長の真摯な願いが必ず叶うと信じたい。